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「すまないな。話が逸れてしまった。悪気はなかったのだが、その時発した心許ない言葉で彼奴の傷口に触れてしまってね」
──首を切り落とされたんだよ──
息を呑むような事を、こうもあっさりと、まるで昨日の他愛もない話でもするように言い放った。言葉の出ない私は只呆然と、彼の行動を見守る。
彼は手袋越しに首を撫でると、持ち手の取れたティーカップを湯飲みでも掴むように持ち、一気に飲み干した。其れを一つ目と同じように端に置き、溜息を着く。
「で、居合わせたヴォルの逆鱗に触れたと言うわけさ。ヴォルも見境なく殺そうとしたから、その時ばかりは全力で止めたがね」
「……………………っ」
悲鳴すらまともに上げられなかった。双眸を丸くして、彼の言葉を受け入れるしかなかった。だが彼はその様子を見て、ゆったりと微笑んだ。
「嫌いになったか?」
「……嫌いには…………なりません…………。でも、同様しているのは確かです…………」
何をし出すのか分からなかった。悲鳴を上げるのかと思った。激情するのかと思った。でも実際はただその言葉を耳に響かせる事しか出来なかった。
私は慌てて立ち上がると、急いでドアの前まで行く。後ろから所長の声が聞こえた気がしたが、それどころでは無かった。
「少し……席を外します…………」
泣きそうなのを堪え、出来るだけ平静を装って外へと飛び出した。




