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アンデッド─undead─ 二部  作者: 秋暁秋季
第一体 黄昏の集い
18/89

9

 頭に再来するのはインペラトルの『ヴォルは人狼』……。そしてもう一つは『所詮汝に私は殺せない』……。

 息を呑んだ私に向かって、柔和な瞳を投げ掛けてくる。

「要智が其れを知って付けたかは定かではないが、彼奴にこの上無い程の似合いの名だ」

 そうして所長に顔を向け、問い掛ける。


「聖。ヴォルが居ない間、紅葉を少々の茶番に付き合わせても構わないだろうか?」

「紅葉に聞いて下さい」

 嫌悪の瞳をインペラトルに与えた後、すっと私の表情を見る。意志の強い目をしている。『どうするかは自分で決めなさい』と声が聞こえて来そうだ。

 其れに対して無言で頷くと、インペラトルの顔を見る。

「して、何が聞きたい? やはりさっきのヴォルと硝級鎌の争いか? それとも呼び出した理由か?」

 まるで見抜いたように問い掛けて来た。『茶番に付き合わせる』と言っておきながら、私に主導権を委ねている。でも、こういう人……なのだろう。

 相手に主導権を渡しつつ、なんだかんだで誘導されている気がする。まるで策士か、小説の黒幕だ。所長が狸呼ばわりしているのが分かる気がする……。


「ヴォルとの関係で」

 ヴォルは席を外している。聞くなら今しかない。 

 彼は私の問いに満足したように頷くと、口を開いた。

「彼奴は昔、相当に荒れていてなぁ……。保護した時には既に剥き出しの刃のようだったよ」

「保護した……?」

「んっ? あぁ。盗まれたんだ。彼奴等にね──」

 『彼奴等』と言葉を発した瞬間、日溜まりのような雰囲気が一変。一瞬にして暗く、どろどろした物へと変化する。

 憎しみ、憎悪……所長がインペラトルに発する“嫌悪”なんて生易しいものでなく、徹底的な恨みつらみ。まさか彼から見ることにはなるとは思わなかった。


「私にとって、ヴォルも硝級鎌も孫のようなものだよ。だから──許さない……」

「…………」

 二杯目のティーカップの持ち手に力が籠もる。粉砕を防ぐため、早々に置いたのが吉だった。なんせ置いた途端にぽろりと持ち手が取れてしまったのだから。

「おや」

 それを見てもさして驚いた様子もなく、ゆったりと息を吐いた。

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