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振り返ると一人の青年が盆を持って立っていた。肩の辺りでばっさりと切り落とされた髪に、賢そうな瞳、一目で秀才だと判断されるだろう。年は私達とさして変わらない気がする。
でも何故だろう……こんな子が身近にいた気が……。
彼は急いで盆を置くと、物凄い速度で此方に突っ込んで来た。
「貴様……良くのうのうと現れる事が出来たな……」
青年の鋭い眼孔はぶれる事無く硝級鎌に注がれている。硝級鎌はと言うと、ゴミでも見るような目で相手を見下す。
あぁ……どうしよう。面倒だが止めないと……!!
「引っ込んでろ、犬っころ。所詮汝に私は殺せない。でしゃばった真似をするな」
「何だと……!!」
青年はぎちぎちと歯軋りをし、硝級鎌に掴み掛かろうとする。硝級鎌も硝級鎌で、何処からともなく十時を出して応戦しようとする。が、すぐに其れは未然に終わる事となった。
「こらこら喧嘩をするな。硝級鎌、悪かったな。久々にお前の顔を見ると弄りたくて仕方が無い。ヴォル、客人の前だ。少しは大人しくしなさい」
この言葉で辺りは水を打ったように静まり返る。リーチを賭けた試合よりも、遥かに緊迫した空気が駆け巡る。
一番に口を開いたのは硝級鎌だった。苦々しく、どんなに頑張った所で報われない、哀れな人の子のように吐き捨てた。
「だから狸なのだろう」
その言葉に青年はまた口を開こうとするが、其れをぐっと堪えて、インペラトルに謝罪の意を示した。
「……申し訳御座いません」
……硝級鎌よ…………精神年齢では負けているぞ……。本当に困った奴だ。
内心溜息を漏らしていると、彼の冷たい手が頬にぴったりと擦り寄った。正にインペラトルが触れようとしてきた部位を、上書きするように何度も、何度も。独占欲の強い子供か……。
「では、また」
消える直前に私を一瞥して彼は姿を消した。
「申し訳……御座いません……」
ヴォルと呼ばれた青年は振り返ると、私達全員に見えるように深く御辞儀した。双眸には恥辱と謝罪が見え隠れしている。双眸だけでない、口にもしっかりと現れている。詫びを入れた後に、真珠色の歯が唇を強く噛み締めていた。血が滲む程に……強く……。
その空気を破壊するように、閏日さんは声を上げる。
「ヴォル、久し振り~」
「お久し振りです。閏日様」




