2
眼前に広がる道となるべき所に、鈍色の煉瓦がぎっしりと敷き詰められている。左右に広がるのはだだっ広い荒野。本当に何も無い。枯れ果てた草木が肩身を狭くして生えているぐらい……。
だが……。門を潜って新たな発見をした。進行方向左手に、墓場と思われるコンクリの十時が二つ、仲良く並んでいた。誰のだろう……? 御丁寧に花まで添えてあるのに……。
まっ、所詮聞いたところで分かる筈もないか。
長い通りを抜け、内部に入る。外と比較して、内側はそれ程までに酷くはなかった。細部まで丁寧に施された木の彫刻が、年代の古さを讃えている。まるで手入れの行き届いた屋敷のような感じである。床には緋色の絨毯が敷き詰めてあり、踏み締める度に足を優しく包み込む。……結構綺麗かも…………。
そう見とれていると、女が振り返って笑顔を浮かべた。
「何時も、有り難う御座います。ひ……」
「あぁ言わないで。その名前、本当に好きじゃないから」
所長が手で制し、片方の手で前髪をかき上げる。感謝されているのにも関わらず、表情は浮かない……。名前の拒否感が感謝に勝っているということか……。
次に女は閏日さんを見ると、天女の微笑みのままに口を開く。
「貴方は来なくても宜しかったのですよ。いっそ黙って土でも還ってくださいな」
「全く、いけずー」
閏日さんの頬が緩み、締まりのない表情になる。熱中に置いたアイスクリームのようにでろでろである。
凄い……。閏日さんの扱いを心得ている。罵倒するときは善意が働き、少しは戸惑うのだが、彼女にはそれが一切なかった。プロだ……。
次に私達をそれぞれ見て、軽く会釈をした。
「お話はよく存じ上げております」
「その割に、俺達は君達について知らないのだけどね。今日だって、使い魔だって言う“ファミュレス”から粗方話を聞いた程度」
塊が僅かに口角を上げて、ニヒルな笑みを浮かべる。もしかしたら馬鹿にされていると感じるかも知れない。無論、彼にそんな気持ちは一切無いのだが。
女は僅かに顎を上げると、頷くように首を縦に振った。
「なる程。では長から直々にお聞きになると宜しいでしょう。常に暇を持て余しているような方ですから」
「でも──居なくては困る」
急に上がった声に視線が集中する。氷室が何時になく思案した表情で、目蓋を伏せていた。しかし皆からの目に気付いたのか、慌てて弁解を始めた。
「すっ……すす……すみません!! 独り言です!!」
「構いませんよ。実際その通りですから」




