第8話 テムズ川
どこかお店に入ってお茶でもしようかと思ったが、一人でどこに入ったらよいか分からず、やめる。そのまま、ビッグ・ベンの方向に向かって歩き出す。一日券を持っているのだからバスに乗れば良いのだが、どれに乗れば良いか分からず、調べるのが面倒なので、歩くことにした。
テムズ川近くのお店で水を買って、対岸で12時の鐘を聴いた。テムズ川を渡っている途中に、子供を自分にひもで括りつけたおばさんと遭遇。突然僕の胸ポケットに造花を入れてきて、Moneyと言い出す。僕は、Noといって返しておいた。
インフォメーションに行って、市内地図とバスの路線図をもらう。これでバスも利用できるようになるはずだ。トラファルガー広場に程近いここは、ロンドン近郊の情報も扱っているようだ。明日、出かける場所の情報が無いかちょっと見てみたが、見つからないのであきらめる。こんなところで時間を使ってしまうのは、勿体ないような気がするから。それならば、街の中をさまよっていた方が面白い。
お店でホットサンドとオレンジを買って、バスを待ちながら食べた。人の集まるところには大抵、果物屋が屋台を出しているし、電車に乗っている紳士も、りんごを丸かじりしていたりする。イギリス人は、ビタミン不足に対する恐怖が、遺伝子に染み付いているのだろうか。
なかなかバスが来ないので、歩いてロンドン塔に向かうことにする。テムズ川沿いでは、美術学校でもあるのか、人形のようなものを製作している男女がいた。ちょっと楽しそう。