第11話 バースへ遠出
今日は出立の日なので、朝食開始時間に食堂に向かうが、まだ準備ができていない。いすをテーブルから下ろして、準備が済むのを待つ。そんなことをしていたら、職員だと間違えられたのか、トイレの場所を聞かれる。うろ覚えで答えたが、ちゃんと見つかったのだろうか。
地下鉄の1ゾーン片道£2.00は高すぎると思う。ゾーン制は、乗換えが多い場合にはお得感があるが、わずかな距離しか乗らないときは、すごく損をした気分になる。ともかく地下鉄でPaddingtonへ。そこから電車でBathへ向かう。
バースはイングランド中部の街。温泉があって、ローマ帝国時代は巡礼地になっていたらしい。しかし、電車の旅は良い。ゆったりとした気持ちになる。1時間ちょっとで目的地へ。
バースはあいにくの曇り空。時々雨もぱらつく。宿泊するYHは、坂を上った奥まったところにあった。静かで良い感じ。玄関の前には桜のような花が咲いていた。
街の中の教会を見学する。バース・アビー。中はひんやりとしていて、外からステンドグラスを通して差し込む光が美しい。日本語のパンフレットまで置いてあるのには驚いた。よほど観光客が来るのだろう。
ローマンバスを見学する。これは、石を積み上げてつくったローマ式のサウナのことでもあり、遺跡の名前でもある。(今後旅する各地で見かけることになる。)ローマ帝国がブリテン島まで支配していたことをこの目で実感する。すさまじいまでの大帝国だな、ローマは。当時は温泉が神聖視されていたのか、神殿のような扱いを受けていたらしい。
坂を上って街の奥の方に進む。ロイヤルクレセントと言う、円弧状の建物を見に行く。石畳の坂道を歩くのは、結構つらい。昨日も思ったが、イングランドの建物は、直線的なものが多い。きっちり正確に建てた、と言うか。あまり凹凸が無く、面白みが無いのが面白い。この街では、その中に黄色っぽい石を用いた曲線的な建物が混じっていて、独特の雰囲気をかもし出している。このようなイングランドの田舎の景色が見れただけでも、来てよかったと思う。
しかし、期待していたロイヤルクレセントは大したことは無いと感じた。普通のマンションが丸まっている程度にしか見えない。高級ホテルも入っているようだが、わざわざここに泊まる意味は何なのだろうか。
もっとも、本当は前にある草原の中から見るのが良いのだろうが、私有地らしく、入れなかった。ここでは、コンチキツアー(現地集合解散のツアー)らしい集団に遭遇した。楽しそうだなあ。僕も英語が話せれば、参加することを考慮するのに。
宿に帰る。ここでは、ランドリーを利用してきちんと洗濯。シャワーも広くて使いやすい。難点は、セキュリティーが厳しく、ドミトリーに通ずる扉が、レセプションで管理されていること。人がいないときには通りにくく、不便だ。
洗濯終了後、ご飯を食べようと外に出かける。しかし、週末のせいか、閉まっていたり、人がいっぱいだったりして、なかなか入れるところが見つからない。歩いているうちに、若者の酔っ払いや子供の集団に絡まれる。週末で陽気になっているせいだろうか。それとも、僕の格好がおかしいのか。広場のようなところで、小さな子供たちが駆け回り、その周辺でお母さん達が井戸端会議をしていた。どこの国でも、やることは同じだなあ。多少住む国が違ったとしても、本質的には、人間が生活しているという意味で、日本と大して変わらないのかもしれない。
結局、どこのお店にも入れず、持っていた食料を食べてごまかす。屈辱的だ。