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ダルさから始まる物語  作者: TDW
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眩しさと、何かが焼ける匂いで目が覚めた。

焚き火の方向に目を向けると、人陰が見える。



「起きたわね、今日も蛇の肉だけど我慢して頂戴」



どうやら既に起きていた銀髪は朝からせっせと蛇を焼いていたようだ。

焼き立ての蛇肉を俺に手渡してきた。



「あぁ、これ結構ウマかったからな、ありがとう」



お互いにムシャムシャと肉を食べる。

起きたばかりだというのによく俺も食べられるなと感心し・・・・・、



「「あれ?」」



綺麗にハモっていた。

互いに顔を見合わせていた。



「あなた言葉が・・・」



「通じてる!!」



自分で叫んだのにも関わらず、こう感じた。


んな馬鹿な。







蛇肉をほおばりながら、色々な事を話す事にし・・・・てはいなかった。


何を話せばいいというのだ。

こことは間違いなく違う世界から来た。

そう説明したとしよう。


俺がもし、見ず知らずの人間にそう話された場合、間違いなく遠ざかる。

それは俺じゃなくても同じではないだろうか。

今ここで彼女に避けられでもすれば、間違いなく路頭に迷う事となるだろう。

あんなデカい蛇がいるような場所に放り出される。

考えるだけでもぞっとする。



苦しい事は百も承知で、


ワタシハダレココハドコ


という呪文に頼ってみたところ、



「記憶が・・・それはここまで大変だったわね・・・」



銀髪は悲しそうな顔を浮かべ、気づかうような声かけをしてくれていた。

こいつ良い子すぎる・・・。



極度の空腹からくる一時的な理性の低下で言語にも支障をきたしていた。

と、説明も付け加える。

蛇肉をさらに渡され、なにやら昨夜の晩にはでなかったジャガイモらしき食感

の食べ物まで追加された。

なにからなにまで非常に申し訳なく思う。



「最後まで付き合う事はできないのだけど、一番近くの町まで送ってあげる」



と、銀髪は言ってくれた。

重ね重ね、申し訳なかった。

が、背に腹は代えられない。

せっかく言葉が通じたのだ、できるだけの情報を引き出すべきだろう。



日はまだ昇ったばかりであったが、片付けと支度が終わり次第移動するようだ。

ここから先、一番近くの街まで2日3日程「歩く」らしい、正直引いたが、

きっとこれがこの世界の普通なのだろう。



「丸腰みたいだからこれを渡しておくわ」


と、

蛇を解体した時の剣を渡された。

あの時と同じように、リアルな重さが手にずしりと感じた。

腰に下げたり、背負ったりするホルダーが無いらしく常に持っておきなさいらしい。

こんな事なら、教科書のつまった役立たず(カバン)置いてくるんじゃ無かった。

あれならやや飛び出るかもしれないが、刺して背負えたというのに・・・・。







「そういえば、記憶が無いと言う話だからこそ、浮かんだ案なのだけれど、

 貴方、アドミッターだったりはしないわよね?」



「アドミッター・・・?なにそれ」



「アドミッターはアドミッターよ。まさかとは思うけど、そんな事まで忘れている

 というの?」



忘れてるも何も・・・知らん!!

なんて言えるはずもなく、


「ああ、どうやらそうみたいだ。自分でも恐ろしいよ・・・俺は一体何者なんだ

 ってね」


と、やや臭くはあったが、迫真の演技でニヒルに決めてみた。



「そんな・・・あぁっ・・・ミッフィーの加護の元、彼に幸があらん事を・・・」



もはや何も言うまい。銀髪はきっと疑うという事を知らないのだろう。

しかし、なんだミッフィーって。

なんかよくわからないが、祈りをささげられている。



「私と出会ったのは何らかの導きなのかもしれないわね」

 



と、笑顔を向けられ、銀髪からの丁寧かつ素敵な、説明が始まった。



この世界にはエレメントとアドミットと呼ばれる力がある。

エレメントとは、この世界を構成している元である。

アドミットとは、全てのモノに宿っている力である。

アドミットは”許容する”性質を持った力だ。

それは限界を”許容してくれる力”であり、

人々にも与えられたミッフィーの恩恵なのだという。



「ん?・・・・ミッフィーって神様の名前だったのか!?」


なんかそんな名前のウ○ギがいた気が・・・。



「ミッフィー様はこの世界の唯一神よ。貴方も是非協会に足を運ぶといいわ。

貴方に慈悲を与えて下さるかもしれない・・・・・続けるわね、」



ミッフィーはさらに、2人の使徒を創造する。

2人には大きな力がそれぞれに宿っていた。



一人はエレメンターと呼ばれた。

世界の元と言われている【火・水・地・風・氷・雷・光・闇】のエレメント。

それを体内に駆け巡るアドミットを用いて、本来扱えるはずの無いエレメントを神

と世界に”許容させ”自在に操る力を持っていたという。



そしてもう一人は、アドミッターと呼ばれた。

体内に膨大な量のアドミットを有し、身体能力を最大限まで"許容させた”

その使途は、様々な武芸や、技術をこの世に産み出したという。



ミッフィーは2人の使徒にこの世界をまかせた。

2人はそれぞれ別々に自らの分身である「人」を作り出し、世界を治める事となる。



「これが世界の創世と人の始まりの話よ」



「物凄く・・・壮大なお話です・・・・・・な」



なんだろう。

目の前にいるお人よしで、疑う事の知らない銀髪がとてつもなく

胡散臭く見えてきてしまっていた。


というのも昔、親戚が宗教にハマってしまい、めちゃくちゃな勧誘を

受けた事があったのだ。

正直、あれは酷いものだった。



宗教を否定する気はない。

ないのだが、それを他者にも強要するのは何か違う

それではまるで、悪質なセールスのような物ではないか。

信者と書いて儲かるとなる。

そんなヒネた考えだってしてしまう程には、俺自身不信感があるのだ。


そしてなにより、とあるウ○ギと同じ名前である。

力もなんか抜けてしまいそうだった。



ちょっと引き気味の俺の表情に気づく様子も無く、銀髪はさらにこう告げた。



「だからその使徒の分身である私達にも、その力が引き継がれているのよ」



と、

力が引き継がれている・・・・・ん?・・・・つまりな所それは・・・・・、



「この世界の全ての人間が、なにかしら使えるって事か!?」


そりゃ凄い。

人間が、火を扱ったり水を扱ったりできるのだ。

まるで”あの夢”と同じような世界だな。


がすぐに、


「それは違うわ」



と、否定された。

なんでも、エレメンターと呼ばれる人間は、誰でもなれるというわけではなく、

親から引き継ぐ先天性のものと、急に発現する後天性の2つがあるという。

扱えるエレメントも1つが限界らしく、例外は無いらしい。


そしてアドミッターの方は、全て親から引き継ぐ先天性の者しかおらず、

一族皆、その高い身体能力や頭能力を活かして、何かしらの武芸修め、兵士や

技術者として活躍しているという。



エレメンターには女が多く、アドミッターには男が多いらしい。

だから銀髪は俺に聞いたのだ。



『貴方はアドミッターなのかしら?』


と、

もし仮にアドミッターであれば、武芸か何かで一族を特定するのも訳はない。

そういう事だったのだ。



だが、根っからの帰宅部だった俺にそんな芸があるはずも無く。

というより、この世界の人間でないのだから特定すらできないだろう。

当然、身体から満ち溢れてくるような感覚も全く無い。



おっかしいな・・・銀髪の話では、とりあえず人にも平等にアドミットはあるはず

という事なのに・・・俺がここの世界の住人ではないからだろうか。



結果的に、その路線で絞り出すという案は彼女の中で消えたのだろう。

道中で銀髪は記憶云々の話はせず、その他の色々な話をしてくれていた。



この先にある町の事。

そこよりももっと大きい街があるという事。

女の一人旅という事もあって、色々な意味で危険だったという事。

あまり得意で無かった料理が上達したという事。

ナイフ投げがとても得意だという事。

自分の髪の色に自身を持っているという事




見た事が無い服装の男が、目の前で大蛇に襲われているのを助けた事



最後まで面倒を見てあげる事ができなく本当に申し訳ないと思うという事。

とても悲しそうな顔をしてくれた事。

そしてなにより、


『でも安心しなさい。私が責任を持って、街に連れて行ってあげる』



そう言ってくれた事がなにより嬉しかった。



だから勘違いに陥ってたのかもしれない。


人と話せるという事で安心していたのかもしれない。


何処かでなんとかなると思っていたのだ。









倒れている





倒れている

銀髪が倒れている

いつも深くフードをかぶる彼女のそれがめくれ自慢の髪が乱れに乱れている

手にぬめりとした感触がある

血だ

俺の血ではない

だれのだ?

きまっている



いきなりだったのだ。

夕方にすましておくはずのトイレに行き忘れただけなのだ。

不用意に三角の魔除けから抜け出したりするから。

いきなり・・・・襲われたのだ。

俺は悪くない。

俺は悪くない!!!

だって、トイレだ。

そんなの普通だろう!?生理現象だろう!?




見ている。


地から低い呻り声



「うぁ・・・・う・・・・・ぁぁ・・あ・あ・あ・・あ・あああああ!!!」



剣をかまえろ・・・武器をかまえろ・・・!!

武器だ・・・武器だ・・どこだ・・・・無い・・・無い・・無い!無い無い無い!



なんだこれはなんなんだこれは



あんなのは知らない!こんなのは知らない!!知らない!!!!


なんであんなのがいるんだ


なんであんなでかい犬がいるんだ


犬がいる犬がいる犬がいる犬がいる犬がいるばけものだ

あれはばけものだ


人をくらうばけものひとをおそうばけものだあの目はまずいまずいまずい

それがこっちをまっすぐ俺を・・・・こっちを・・・・こっちを・・・




見ている見ている見ている見ている見ている見ている見ている見ている

見ている見ている見ている見ている見ている見ている見ている見ている






『何故こうなるまで私を呼び出さなかったのですか!?おまぬけさんなんですか?

 武装換装を行って下さい!マスター聞いてますか!?マスター!!!!』



どこか、聞いた事のあった機会音声



爆発したような閃光



俺が覚えているのはここまでだった。

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