偶数 プロローグ
①→③→⑤→・・・・奇数編
②→④→⑥・・・・・偶数編
『――――きろ・・・・』
世の中には不思議な事がある。
見た事の無い世界を想像する事は、自分の知識や経験の範囲でしかありえない
事だと俺は思う。
それは夢の世界だって例外ではないのではないだろうか。
その世界は、不思議で満ちていた。
人が乗っているのだから恐らく馬車の類だろうか、馬を必要としないそれは
とてつもなく早く、その世界では必要不可欠な物に思えた。
何で作られているのかわからない建物がビッシリと並び、夜になると
それらは輝きを見せてくれる。
人が通ろうとしようとすれば勝手に開く扉や、常に動き続ける階段。
大小様々な額縁のような物の中で目まぐるしく動く人々を見た時には、
どうやって入るのものかと関心した。
『―――っきろ・・・』
その世界は、平和な日常が何処までも続いていた。
争う事が殆ど無く、同じ年頃であろう”彼”は、級友に囲まれ楽しそうな日々を
送っていた。
道を歩くだけで特定の誰かに対して膝をついたり、頭をさげる事など
一切無かった。
まるで皆が対等であるかのようなその世界は、最初はとても信じられなかった。
『お・!・・かげん・・・・に・・』
幾度となく見させられるその夢は、いつだか当たり前になっていた。
眠るのが楽しみになっていた。
武器など無く、偉そうに踏ん反りかえる貴族もいない。
この世界はどんなにか・・・・・・、
「いい加減に起きろこの馬鹿野郎!!!!」
鈍い衝撃と共に、冷たい床の感触。
敷き布団ごと引っぺがされたであろう、この現状と共に
あぁ、やっぱり夢だよな。
なんて溜息の一つもつきたくなるのはしょうがない事だと、俺は思うのだ。
② 本編 22日投稿