干支達の夢 その四b 【街のうさぎ】娘編
干支に関するショートショート、今回はうさぎ編 その2 娘バージョンです。その1の12年後になります。
アンタさぁ、ホントに大丈夫なんだろうね? 確かにここんトコ
の不景気でさ、潰れそうな店の打開策に新しいコ入れようって事に
なったよ。まあ、色んな処に声も掛けたしさ。ほら、資金の問題も
あるからね。
そりゃ、流行の店のナンバーワンを引き抜けりゃ、それが一番だ
って事は分ってるさ。でもそんなの無理に決まってんだろ? だか
ら古い知り合いからアンタの話を聞いた時、ピンときたんだ。うち
だって手頃な経費で人が雇えりゃ万々歳。おまけにアンタ雰囲気あ
るしさ。うん、決して美人じゃない。でもアンタこの商売向いてる
かも知んないよ。写真見て一目で気に入ったからさ、こうして面接
に来てもらったって訳。
で? アンタ口を開けば『大丈夫』ばっかだけど、ホントの処、
歳は幾つだい?
ん? 馬鹿言うんじゃないよ。ナメてもらっちゃ困るよ! アタ
イだってこの道うん年さ。人を見る目はあるつもりだよ。え? 十
七? まだ高校生だって?
ちょっと未知世の奴、そんな事は一言も…え? 名前も嘘ついて
ましただって? ん? 『月野うさぎ』が本名?嘘だろ! え?戸籍
抄本? あ! ホントだ!
ちょっと、マリちゃん、このコ月野うさぎって言うんだって!
あのアニメ、月に代わってお仕置きよとおんなじ、親は何を考え
て…月野? あっ! アンタまさか、お母さんもこの商売やってな
かった?
そうか…アンタ、バニコ姉さんの娘さんだったのか。今となっち
ゃ伝説のお姉さんだったね。もう一昔前にもなるけど、アタイも一
時一緒に働いたコトがあったっけ。豪快なお姉さんでさ、四十もと
うに過ぎてもバニーちゃん一筋でさ。あ、そう言えば、小さな女の
子がいるって…それがアンタか!
そうそう、深夜保育に預けてるって、バニコ姉さん言ってたっけ。
アンタの写真見てアタイが惹かれたのも、当然かもね。
で? お母さん元気? え?まだ現役でやってんの? どこで?
へぇ~、介護施設でやってんの? そりゃ、スゴイわ。でも、イイ
とこ目を付けたかもしんないね。
流石現役一筋って…そうか、確かバニコ姉さん、娘が高校出るま
では頑張るって言ってたっけ。
うん分った! 採用決定! でもね、ちゃんと高校出てから来な
ね。そうでなけりゃバニコ姉さんに顔向けできないもんね。うん、
分ったから…
ここでいっぱい稼いで母さんに家を買ってやるって? もう、泣
かせないでよ。
いくらバニーちゃんでも目が赤過ぎるのは野暮ってもんだからさ…
親子仲良く…