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孤立への過程その2

四月の中頃、いつものように舞美の家に行った時だった。勉強机と、人形の家だけがある簡素な部屋の壁に、人気バンド「Creepy」のポスターが貼ってあった。四人の中性的な男性達が、それぞれナルシスティックポーズをきめている。

「好きなの?」それを初めて見た三香子は、びっくりして尋ねた。

「おとといの“ミュージックテレビ”に出てたんだけど、超かっこよくてさ。昨日お店でCDと雑誌買って、付録のポスターも貼っちゃった」顔を赤らめて話す舞美を見て、少し寂しさを感じた。しかしそれ以外は変わりなく、いつもと同じように遊んだ。


関係が変化したのはその三日後、四月下旬のことだった。三香子が登校すると、梶原芽衣と舞美が話し込んでいる。芽衣は以前から「creepy」が好きな、少しませた印象の子だった。芽衣と並ぶと舞美も大人びて見え、気圧されてしまいそうだ。しかし三香子は授業前の準備を終えると、めげずに話しかけた。

「おはよう。ねぇ、何話してるの」話題は予想できていたが、素知らぬ風で問い掛ける。だが、今まで登校したことすら気づかなかったようで、いつの間にだの失礼なことを言われた。少しイラッとしたが、突っ掛かっても仕方ないので見逃した。

「なんかごめんね、おはよう。あのね、“creepy”の話してたの」舞美が何故か気まずそうに答える。その顔に違和感を感じつつ、「一緒に話してもいい?」悪びれることなく聞いた。三香子は(舞美ちゃんが喜ぶなら、三人で仲良くしてもいいな)などと考えるくらい、まだまだ“子ども”で無邪気だった。数秒の沈黙の後、「いいよ」おずおずと舞美が答え、芽衣も頷いた。三香子は異変に気づかず、二人の輪に入っていった。しかし、正直creepyなんか全く興味がないので、二人の会話はつまらないったらなかった。まずメンバーの名前と顔が一致しない。だから「タツヤの髪型は前のほうがよかった」などと言われても、さっぱりなのだった。三香子は適当に相づちをうっていたが、徐々に飽きてきた。そこで話が途切れた一瞬の隙をねらい、話題転換を試みる。

「いやぁ、また国語の漢字小テスト、間違えちゃった。(夏)の(目)みたいなとこに、横線一本忘れた」努めて明るく、自虐ネタを放った。いつもだったら、「また?三香子って本当におっちょこちょいだよねぇ」と舞美が笑ってくれるからだ。しかしその日は二人顔を見合せた後、「そうなんだ」投げやりに返事され、すぐに前の話題に戻ってしまった。三香子は仕方なく、よくわからない話にうなづき続けた。

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