復讐を誓う
選考リレーの予選会が終わったその夜。三香子は夕食後に、一人ネットをしていた。リビングの隣にある和室の隅、カチカチと音をたてながら目当ての情報を探す。ふとリビングを盗み見る。バラエティ番組にあーだこーだと文句をつける、三人(父は夕食後一時間して帰宅した)の後ろ姿しか見えない。三香子はホッとし、再び画面に向き直った。検索サイトでキーワードを「願い」「叶う」「方法」と打ち込むと、画面が切り替わった。紹介文から良さそうなものを探し、何件かまわる。しかし、めぼしい情報は見当たらなかった。(仕方ない、奥の手を使うか)ため息を吐くと、再び検索サイトに戻る。そして今度は「呪い」「相手」「病気」と打ってみた。結果を見るが、前よりも怪しい単語が並んでいる。スクロールしていると、四ページ目であるサイトを見つけた。クリックすると、さっきの白い背景から黒に変わった。おどろおどろしいフォントで、「呪いの館」という文字がでかでかと載っている。その下には、古びた洋館の画像が広がる。しげしげと眺めていると、突然長髪の、白い服の女がドアから出てきた。
「うわっ」思わず声をあげると、リビングから「どうしたの」という母の声が響いた。
「なんでもない」慌ててリビングに首だけ出して否定する。再びゆっくりパソコンに向くと、もうその姿はなかった。もしやと思い、数秒館を凝視していると、またさっきの女が出てきた。そして錆付いた、鉄製の門前で止まって消えた。再び出てきて消え、出てきては消えを繰り返す。どうやらそういう仕様らしい。よくよく見ると、最大でも三香子の人差し指ほどにしかならない。三香子は自分の肝の小ささにうんざりした。洋館にポインタをあてたが、それ以外に仕掛けはないようだ。(なんだ、大したことないな)自己暗示をかけながら、おっかなびっくりスクロールしていく。すると箇条書きが表れた。その両端は日本人形やらゾンビやら能面やら、怖そうなものでそれぞれ飾られていた。
『じわじわと苦めて殺す方法』
『一気に葬り去る方法』などの物騒な文面が並ぶなか、ある一項に目を留めた。
『相手を病に冒し、再起不能にする方法』それを見た瞬間、三香子はポンと膝をうった。早速ペンと紙を用意してメモをとる。三香子は漢字の読み書きに自信がなかった。しかしその説明文に関しては、難なく読むことができた。(よし、これでなんとか出場できる)三香子は不吉なページを閉じながら、幸せな気持ちに包まれていた。