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二年生時代

初投稿です。下手くそですががんばります。

小学三年生の三香子は、産まれてからずっと、道北のとある町に住んでいた。しかし父の仕事の都合で、道南某市内へ引っ越すことになった。その年のゴールデンウィークは、借家に荷物を搬入するだけで終わってしまった。せいぜい隣近所に挨拶するぐらいで、ろくにその土地に慣れる時間もなかった。



休み明け、三香子は米川小学校・一年二組の教室前に立っていた。扉の向こうはギャーギャー騒がしい。前に三香子がいたクラスもそうだった。担任が来るまでうるさいのはどこも同じだようだ。

「先生がついてるから、大丈夫よ」横に並ぶ坂田先生が微笑んだ。それに対して、引きつった笑顔でうなづく事しかできない。パンツスーツの先生は、母親と同じ、三十代後半ぐらいに見えた。しかし、がさつで早口な母とは違い、おっとりして優しい感じがした。

「したら、入るからね」扉の取っ手に手をかける先生に向け、うなづく。ドアが開かれると、騒がしかった室内がしんと静まりかえった。前列の子達が、首を伸ばしてこちらを見ている。三香子は恥ずかしくなってうつむいた。そのまま先生の後に続いて中に入り、教壇に登る。まだ先生の足元しか見ていない。痛いほどの視線を感じ、顔を上げられない。二人が教壇の真ん中に立つと、「きりーつ」日直が声をあげる。すると、皆が一斉に椅子を引く音がした。

「おはようございます」生徒と先生が交互に挨拶するが、三香子はまだうつむいていた。(来たばかりなのに挨拶するなんて、偉そうだと思われたらいやだ)そんな恐怖心を抱いていたからだ。ガシャガシャと音がして、皆が着席したとわかる。それから一呼吸おいて、先生が口を開いた。

「昨日少し話したから知ってると思うけど、今日は皆の新しいお友達がやってきました。」そう言うと、くるりと黒板に向きあった。水をうったような静けさの中、字を書きつける音だけが響く。しかしまだまだ三香子は顔を上げない。数十秒で音は止み、再び先生が横に立った、気配がした。

「今日からこのクラスで勉強することになった、浜谷三香子さんです。浜谷さん、一言どうぞ」そう促され、三香子はようやく顔をあげた。そこには、男女ペアの机が、縦三列に並んでいた。一列はペアが五組で構成されている。「浜谷さん?」ぼーっと前を見ていた三香子は、再び先生に促されてハッとした。覚悟を決め、乾いた口を開く。

「美開小学校からやって来ました、浜谷三香子です。よろしくお願いします」そう言って深々と頭を下げた。さっき職員室で先生と練習したので、戸惑うことなく話せた。先生の拍手につられ、皆も手を叩き歓迎してくれた。音がまばらになり、(そろそろ着席できるかな)と思っていた、その時。


ありがとうございました。

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