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眞匏祗  作者: ノノギ
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第二十三話 ギソウ

 それからというもの、ちょくちょく穂琥は藍飛とあって話をするようになった。そうして藍飛との話を薪に打ち明けるのも日課になってきていた。

「でね、藍飛も私のこと好きだって言ってくれたんだ!」

楽しそうに話をする穂琥に対して、ほとんど反応を示さない薪。穂琥はそれを突っ込むが、薪はただ、うるさいといって終いには部屋を移動してしまう。薪にしては珍しい行動に戸惑う穂琥。今まで手塩に掛けて?育ててきた妹を捕られたくないのだろうか。最近、穂琥はそんなことを思うことが多くなってきた。しかし、薪に限ってそんなことは無いような気がしてならない。一体どうしてなのか、全くわからない。

 そんなに日常を過ごしている中、藍飛からお願いがあると切り出された。その藍飛はとても言い難そうにしている。

「魂石、のこと聞いている?」

「ううん。ちゃんとは聞いていないんだ」

穂琥の返答に藍飛は説明をするよといって魂石の説明をしだした。

 魂石にはさまざまな力を有しており、中には治癒能力も存在していた。何らかの影響で魂石に傷が入ってしまった場合、その眞匏祗は徐々に弱り、最終的には魂石が砕け、命を落す。それを防ぐには療蔚が治すというのが一般的だが、ものによっては治すことが難しいものもある。そう言った場合、その傷ついた魂石よりもはるかに上のランクを有している魂石を体内に入れることでその強いほうの魂石が傷ついた魂石の修復を手伝ってくれる。そのおかげで命を取り留めることもある。そして同種族のもの同士の魂石がベストだ。つまり療蔚なら療蔚の魂石。戦鎖なら戦鎖の魂石と、それぞれが効果的だった。

 そして藍飛が頼んだのは、戦鎖である母が特殊な病に倒れ、今魂石が割れかけているらしい。そこで極力強固な魂石が欲しいと藍飛が頼んできたのだ。

「出来うる限り強い魂石!それがあれば母上様も元気になるかもしれない・・・。少しの間で良いんだ。誰か、いい魂石を持っている眞匏祗がいたら、貸してもらえないか、頼んでもらえるかな・・・?」

「うん。わかった・・・。探してみるよ」

穂琥がそういうと藍飛は本当に安堵した表情をして礼を述べながら穂琥に抱きついた。

「きゃあ!藍飛!?」

「ありがとう!本当にありがとう! 誰でも良いからさ。明日持ってきて。あ、もちろん、貸してもらえなくても良いよ。穂琥が悪いと思う必要は無いからね」

「うん」

藍飛はもう一度穂琥をぎゅっと抱きしめると穂琥から離れて手を振って去っていった。

 触れられたところが熱い。穂琥は身震いしながら部屋に戻ることにした。とぼとぼと歩きながらどうしたものか悩んでいた。強い戦鎖など、穂琥にとっては一人、いや、一祇しか思い浮かばない。

「薪・・・強いけど。でも藍飛のことあまりいい風に思ってないっぽいからなぁ・・・。子供だな、案外。全く。自分が恋をしたこと無いからってなんだよ、チクショー」

ぶつぶつ小さな声で言っていると後ろから薪に声を掛けられて驚いて飛び上がった。

「何してんだ、アホか」

「うるさいなぁ!」

さっさと部屋に入ってしまった薪の背を追って穂琥はどう切り出そうか悩んでいた。色々悩んで悩む。

「ねぇ、薪。魂石って簡単に借りられるの?」

直球過ぎる!自分、何を考えていたんだ!アホか!いや、アホだってよく言われているけど、本当にアホか!そんなことを自分で突っ込んでいると、薪は妙な表情をしながら何でか尋ねてくる。

「い、いや・・・。なんとなく。貸して欲しくて・・・」

少し考えた風にしてから薪は良いよと答えた。

「え?いいの?」

「あぁ。いつ渡す?」

「あ、明日の・・・朝、貸して欲しい」

「わかった」

そんなに簡単なものなのだろうか。穂琥はちょっと考えながらそれでも薪の魂石を貸してもらえるとなったので嬉しくなってそのまま布団にもぐりこんだ。

 朝、薪は魂石を渡してくれた。痲臨とは少し違ったものだが、似たようなガラスの玉のようだが、なんだか魂石のほうが心が和む感じがした。そして痲臨よりもはるかに大きさが小さかった。こんなに小さなものが眞匏祗の命そのものだと思うと何だか不思議な気がしてならないものだった。

薪から魂石を受け取ってそれを大事に抱えながら藍飛と約束した場所へ急いだ。約束の場所にすでに藍飛がいたので、持ってきた魂石を藍飛に差し出す。

「はい、これ!いいかな?」

「ん・・・?な、何これ!?凄・・・・。誰の・・・コレ」

「凄いってわかるんだ?」

「当たり前でしょ!?こんなの!見たことないよ!」

「愨夸の、なんだ」

「こ!?いいの!?」

「うん」

藍飛は酷く嬉しそうな顔をしていた。それを見て穂琥も嬉しくなった。そして藍飛は国家の魂石となっては大事にしなくてはならないし、愨夸の魂石を持って表から出れば問題になるといって裏から出るといい、その場を離れた。

「お母様、よくなるといいね!」

「うん!ありがとう!」

手を振って去っていく藍飛を見詰めて、穂琥は薪の元に戻った。部屋に戻ると、忙しくしているかと思ったらそうではなく落ち着いて飲み物を飲んでいる薪がいた。そして声を掛けようとした、その刹那―。

 激しい轟音が鳴り響く。どこかで何か巨大なものが爆発した音だ。その爆発と共に流れ込んでくる巨大な眞稀。それを感知して薪は慌てて立ち上がって部屋を飛び出していった。穂琥も慌ててその後追った。爆発したのはどうやら表門らしく、そこへ急ぐ。

「穂琥! 穂琥!?」

後ろにいると思った穂琥がいないことに気付き、足を止める。

「あの馬鹿!」

薪は急いで穂琥のいる場所を探し始めた。

 穂琥は薪たちとは反対の方向へ走っていた。いやな予感がしてならなかった。穂琥は急ぐ。裏門へ。

「藍飛!」

裏門に藍飛がいるのを確認した。穂琥は胸が高鳴るのを感じた。この高鳴りは今までのものとは違い嫌なものだった。

「あぁ、穂琥」

穂琥に気付いた藍飛が声を発する。しかしその声の雰囲気の違いに戸惑う。

「よくこっちだって気付いたね。まぁ、当然か。これ、ありがとうね」

手のひらに乗る魂石。美しかった、透き通るような青が、今はくすんだ色をしているのを見て穂琥は絶望した気分になった。

「愨夸の魂石を持ってくるってわかっていたよ」

笑う藍飛。いつものあの、和む笑じゃない。まるで嘲るような気味の悪い笑み。穂琥はここで初めて自分の犯した罪の重大さに気付いた。この藍飛に薪の魂石を渡してはいけなかった。

「利用させてもらったよ。愨夸の魂石って凄い力を有しているんだ。凄まじい兵器になるんだ。知っていた? あぁ、そうだ。証拠を隠滅しないとね」

藍飛は薪の魂石を強く握って、その反対の手に眞稀で巨大な弾を生成した。そしてそれを勢いよくこちらに投げてくる。愕然としていた穂琥にそれを防ぐ術は無く、気付いたときにはすでに目のまで穂琥は強く目をつぶり身体を萎縮させた。


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