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7 動き出す縁

数日後。


リンドグレイ伯爵家の屋敷に、一通の手紙が届いた。


差出人は——


ハーヴェル公爵家。


それを見た伯爵は、しばらく黙っていた。


封を切り、ゆっくりと中身を読む。


やがて小さく息を吐いた。


「……なるほど」


その頃、庭ではラウラが花を見ていた。


まだ十歳の少女にとって、数日前の茶会は「少し不思議な出来事」くらいのものだった。


神獣。


綺麗な庭園。


そして。


少し感じの悪い少年。


(セドリックって言ったかしら)


ラウラは思い出す。


「不細工」


と言われたことも。


思い出して、むっとした。


「失礼な人」


小さく呟く。


そのとき、後ろから声がした。


「ラウラ」


父だった。


振り向く。


「お父様?」


伯爵は少しだけ真面目な顔をしていた。


「少し話がある」


ラウラは首をかしげる。


「なあに?」


伯爵は少し迷ったようだったが、やがて言った。


「先日の茶会のことだ」


「ハーヴェル公爵から連絡があった」


ラウラはきょとんとする。


「え?」


伯爵はゆっくり続けた。


「お前と、セドリック殿」


「婚約の話が出ている」


沈黙。


ラウラの目が丸くなる。


「……え?」


数秒、理解が追いつかない。


「え?」


もう一度言った。


伯爵は苦笑する。


「まだ決まったわけではない」


「だが、向こうは前向きだ」


ラウラは完全に混乱していた。


「どうして?」


伯爵は少し言葉を選ぶ。


神獣のことは、まだ説明するつもりはなかった。


「……気に入られたらしい」


「公爵に」


ラウラはさらに混乱する。


「え?」


「私?」


「なんで?」


伯爵は肩をすくめる。


「それは私にも分からん」


ラウラはしばらく黙った。


そして。


ぽつりと言う。


「でも」


「セドリック、私のこと嫌いそうだった」


伯爵は少し笑った。


「子供同士のことだ」


「気にするな」


ラウラは納得していない顔だった。


その頃。


ハーヴェル公爵家の屋敷では。


セドリックが机を叩いていた。


「勝手に話を進めるな!」


向かいに座る父は、実に楽しそうだった。


「まだ話をしただけだ」


「同じだ!」


セドリックは立ち上がる。


「嫌だ」


公爵は眉を上げる。


「理由は?」


セドリックは言葉に詰まる。


理由。


うまく言えない。


ただ。


気に入らない。


あの少女が。


シーフの隣にいたことが。


エリオットが「綺麗だ」と言ったことが。


全部。


なんとなく腹が立つ。


「……とにかく嫌だ」


公爵は笑った。


「そうか」


「では、会ってみるといい」


セドリックが睨む。


「は?」


公爵はさらりと言う。


「今度、リンドグレイ家を招く」


「顔を合わせて決めればいい」


セドリックは言葉を失った。


その横で。


エリオットが、にこにこしていた。


(これは面白いことになりそうだ)


そして。


数日後。


再び、二人は会うことになる。


——今度は


婚約者候補として。


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