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プロローグ
「相変わらずだな、ラウラ」
冷たい声だった。
ラウラ・リンドグレイは静かに目を伏せる。
目の前にいるのは婚約者、セドリック・ハーヴェル。
王都でも名高い公爵家の三男でありながら王宮近衛騎士。
そして——
私ではない他の人を好きな人。
胸がきゅっと痛む。
けれどラウラは慣れていた。
幼い頃から、彼はいつもこうだったから。
どうして婚約しているのか、わからない。
どうして彼は私を好きではないのに、婚約を解消しないのかも。
だからラウラは決めた。
もう、これ以上迷惑はかけない。
「セドリック様」
顔を上げる。
「婚約を——」
その瞬間、セドリックの顔色が変わった。
まるで。
一番聞きたくない言葉を聞いたかのように。




