第6話 目覚めと確認
第2章
最初に感じたのは、足元の感触だった。
固い。土だ。舗装されていない地面に、靴底が直接触れている。
ムラカミ・コーイチは、すぐに立ち上がろうとはしなかった。視線だけを動かし、周囲を確認する。木々がまばらに生え、陽光が斑に落ちている。森――というほど密ではないが、人の手が入っているとも言い難い場所だった。
次に、自分自身を見る。
服が違う。
見慣れたTシャツやジーンズではない。粗めの布で作られた上着と、動きやすさを優先したズボン。色合いも地味で、装飾はほとんどない。サイズは合っているが、明らかに日本で日常的に着るものではなかった。
腰に違和感があり、視線を落とす。
帯状の留め具。そこに、短い刃物が差し込まれている。
ナイフより少し短く、刃渡りも最低限。飾り気はなく、刃も研ぎ上げられているというより「使われてきた」印象だ。護身用としては自然な位置にあり、無理に主張しない形で収まっている。
さらに、腰の反対側に巾着のような袋があった。口を絞り、中を覗く。
硬貨。数枚。色や大きさが揃っていない。日本円ではないことは、触った瞬間にわかった。
ここまで確認して、ようやく一つの結論に達する。
――少なくとも、日本ではない。
夢だと片付けるには、感触が多すぎた。風の匂い、地面の冷たさ、布の擦れる音。身体そのものに違和感はなく、頭も冴えている。
コーイチは、深く息を吸い、ゆっくり吐いた。
慌てる理由はない。だが、油断する理由もなかった。
物音がすれば、自然と首が動く。背後、左右、足元。視界の端に動く影があれば、立ち止まる。初めての場所で警戒するのは、当たり前の反応だった。
立ち上がり、周囲を見渡すと、少し離れたところに踏み固められた道があった。獣道ではない。幅があり、草が押し倒されている。
――人が通っている。
それだけで、進む理由としては十分だった。




