表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/26

第19話 さっきのは見間違いに決まってるわ

十月二十五日。王都シェーンハイト。

ルイーズ・ファルネリアはユリウス王子主催のパーティーに参加する。



ここで王子に見初められるため、特別なドレスをあれから三着見繕った。

最後の一着は海外から特別に生地を取り寄せた。

一着一千万クラムしたが、王族には小銭同然。ユリウス王子に見初められれば簡単に支払ってもらえるはずだ。


それに、オークションで一億クラムは儲けられるだろう。

ルイーズは父から相続したダイヤのイヤリングをオークションにかける。

”ファルネリア家”に代々伝わる"ダイヤモンド"だ。付加価値は高い。



ルイーズはサファイアが施されたネックレス、ルビーのイヤリング、ダイヤモンドの指輪を身に付ける。

この国で宝石を身につけられるのはごく一部の特権階級だけ。

お前たち下級貴族とはレベルが違うのだというアピールだ。


この私が”宝石”をオークションに出してやるのだから、それなりの金額を提示してもらわないとねーーーと、鏡の前でにやりと笑う。


今はパーティー開始前。

オークション出品者は会場に、各自控え室を用意されている。


ユリウス王子は珍しいものに目がない。

オークションに出る他の連中は、所詮金や銀のアクセサリーしか身に付けられない。自ずと自分に目が行くはずだ。

ーーー楽勝よ。


オークションもパーティーも、主役は私なのだと。

ルイーズはほくそ笑んでいた。







「エレーナ様! 待ってください~」


ふと、部屋の外から若い女の声が聞こえた。

品性のない声ね、と舌打ちをする。田舎から来たメイドかしら。

ここは格式高い王都でしてよ、と怒鳴りつけようと立ち上がった。




そして、扉を開けて、息を呑む。

飛び出るはずの怒声が、一気に止まった。


少し遠く、廊下の奥には、エレーナがいた。

父の死をきっかけに家から出た下賤の娘。

あいつは名前も聞いたことないくらいの辺境に嫁いだと聞いていたのに。


エレーナは芋臭いメイドを連れていた。さっきの声はあの女か。

いや、それくらいなら、まだ、いい。





ーーーなぜエレーナが、ダイヤモンドを身につけているのよ。





ルイーズは、全身が真っ赤になるほどの怒りが込み上げてきた。

エレーナのドレスは派手ではないが、ところどころに細かなダイヤモンドがあしらわれている。

ランプの光に照らされるときらりと輝く。不思議と目を奪われた。


胸元にはダイヤモンドのネックレス。

隣の芋臭いメイドも、よく見るとアクセサリーを身に付けている。髪留めはルビーが施されているし、ネックレスもイヤリングも、小ぶりだがどれもダイヤモンドだ。




ーーーーなんでなんでなんで。


この国で宝石を身につけられるのは”私たち”だけなのに、なんで格下の”あんたたち”が。








「ルイーズ様、あの」


背後から従者が声を掛ける。

ルイーズは「なによ!」と勢いよく振り返った。

従者は震えている。申し訳なさそうに頭を下げ、何度も謝った。


「すみません、オークションの準備をしなければならなくて」

「勝手にやっといて! 私は忙しいのよ!」

「申し訳ございません。出品するアクセサリーはこちらでよろしいでしょうか」


従者はおずおずと箱に入ったダイヤモンドのイヤリングを見せた。

黒い箱に入ってきらりと輝いている。


「そうよ! 他に何があるって言うのよ」

「いえ、すみません。ではこちらで出品させていただきます」

「いちいち確認しないでくれる? 気が利かないわね。クビにするわよ!」


どいつもこいつも使えないヤツばかりだ。

ルイーズは神経がささくれ立つのを感じる。


いや、それよりもエレーナだ。

なんであの女が。しかも、宝石を身につけて?

何をするつもりなの。


もしかして、屋敷から盗んでいたんじゃないの。

父の死のタイミングで家を出るなんて怪しいと思ったのよ。

私が相続する分の宝石をくすねていて、これみよがしに自慢しに来たんじゃないかしらーーーー




許せない。

ルイーズは頭を掻きむしる。

ぎり、と爪が皮膚に食い込んで、髪が乱れた。


問い詰めてやろうと廊下に駆け出すも、もうエレーナの姿は見えなかった。

舌打ちをする。

ハイヒールを踏みならして、廊下をガツガツと歩く。







「ルイーズ様……?」


はっと背後から声を掛けられる。

振り向くと、どこかで会ったような令嬢がいた。

誰だったかしら、ここのところパーティーを開きすぎていた。

背景に埋もれるようなモブ女なんかいちいち覚えてない。


「あ、ああ。お久しぶりね」

「い、いえ! あの、気が立っていたようですが……」

「ああ! な、なんでもないのよ」


ルイーズは咄嗟に笑う。

苛立ってあたりが見えていなかった。


このパーティーは格式高い貴族しか参加できないのに、足を踏みならして歩くなんて。

みっともない姿を見られて恥ずかしいわ。



「今日はルイーズ様もオークションに参加されるのですよね」

「ええ。特別なダイヤモンドよ。父から譲り受けた、とても貴重な物なの」

「楽しみです! きっと高値がつくのでしょうね」


モブ女は眉を下げて、羨ましいです、と呟いた。


ええ、そうでしょうね。あんなみたいな低レベルのヤツには一生かかっても買えないくらいの品物ですもの。

と、声には出さないでルイーズは微笑んだ。

ささくれ立っていた神経が次第に収まってくる。



そうよ、そう。私は格の高い人間なの。

こうしてみんなに羨ましがられる人間なのよ。


さっき見たエレーナは見間違いに決まってる。

光の加減で宝石に見えただけで、きっと金糸とか、そういう絵柄とか……

ーーーそうに決まってる。




ルイーズは手にしていた扇子でパタパタと頬を扇いだ。

ほっと息を吐く。気持ちが落ち着いてきた。




「では、パーティー会場で」


ルイーズは余裕を浮かべて、会場に向かった。

もうすぐオークションが始まる。

第二十話は明日の12時30分頃投稿予定。

ブクマ&☆5評価、ぜひぜひよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ