第2話
《CMジングル♪ ~明るいカフェBGM~》
RICO
「さて、改めてゲストは五井物産の一ノ瀬直也さんです。
ここからは少しお話を伺っていきたいと思います」
直也
「よろしくお願いします」
RICO
「さあ直也さん。今日は“GAIALINQって何?”ってリスナーさんからもたくさん質問が届いています。簡単に教えていただけますか?」
直也
「はい。ただ、その前に、RICOさんはAIって使ってみた事ありますか?」
RICO
「はい。チャッピーとか、シロウト、ジミーとか、いろいろ使う場面増えましたね」
直也
「はい。リスナーの皆さんも、『もう使っているよ』という方、いっぱいいると思うんですよね。……でも、そうすると地球の環境に優しくない事になってしまう可能性があるんです」
RICO
「え?どうしてですか?」
直也
「一言で言うと、AIを動かすには、膨大な電力が必要だから、ですね。ところが電力は、石炭、石油、天然ガス等の、温室効果ガスを排出してしまうものが多いです。原子力は事故があってから稼働させる事が難しくなってしまっています。水力はもうコレ以上増やすのは難しいですね」
RICO
「エコエネルギーって聞いた事ありますけれど?」
直也
「そうですね。でも、例えば太陽光は天気に左右されますし、太陽光パネルは定期的に清掃しないと発電効率が下がってしまいます。風力も安定的とは言い難い。もちろん改善させようと関係者の皆さんは頑張っています。ただ、課題も多いって事なんですよ」
RICO
「そっか! だから地熱発電って事なんですね?」
直也
「そうです。地熱発電は、クリーンでエコで安定的です。そして日本は火山大国でもある。この自然の恵みを最大限活用して、AIを更に使いやすくしましょうというのが、このGAIALINQの目的なんですよ」
RICO
「なんかすごく分かった気がします。でも……なんかズルいなぁ」
直也
「いや、別にズルくないですよ。地熱発電は素晴らしい方法ですから」
RICO
「そうじゃなくてね。……なんか直也さんが、そうやって、こういう難しい事を上手に分かりやすく説明していると、絶対、女性から誤解を生みそうですね」
直也
「い、いや、そんな事ないですよ」
RICO
「絶対なんか言葉巧みにいろんな女性を上手くだましていそうですね」
直也
「そ、そんな事ないですよ。一生懸命理解してもらえるように説明しているだけですよ。そんな女性をだますなんで事は絶対しませんから」
RICO
「はい。それでは直也さんが、頭の良さをウリにする『悪い男』疑惑が生じたところで、次の曲に行きたいと思います。本当は冬に発売予定のアルバムでリリースする予定だったのですが、シングル・カットして欲しいというご要望を頂きましたので、急遽ブルーダイヤモンドと同じ来月5日にリリースする事になりました。聞いて下さい。『打ち上げ花火―RICO×NAOYA』です」
《♪楽曲イントロ~フェードアウト》
※※※
《――スタジオ外・控室スペース》
亜紀(腕組み凍結ジト目)
「……もう本当にそれね。でもこんなやり取りだと、リスナーに残る印象が、直也は『悪い男』になってしまいそう」
玲奈(更に冷ややか&ジト目)
「もう、何であんなに上手く説明しちゃうかな。これでまたファンを増やすつもり?しかも今のRICOのコメントのせいで、絶対『悪い男』が好きとかいう、クソビッチが大量に寄ってきますよ、コレ」
麻里(ため息まじりにジト目)
「これではリスナーは絶対RICOとの仲を、いろいろ想像しそう……。これ、この後のリスナーとのやり取りで、更にツッコミが殺到しますよ」
※※※
《――自宅・リビング(ラジオを聴いている保奈美)》
保奈美(リビングのテーブルで勉強中)
「……交流会のイベントの時もそうだけど、直也さん説明上手すぎるんだよな。でもその結果、説明の内容よりも直也さんの印象が残るという。……本当になんかイヤだな」