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9月10日のEdinburgh  作者: edinburgh0910
灰燼のケルン編——融かされた『氷』

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9/21

第七話 『12使徒』オダストロ

 誤算。あまりにも大きな誤算だった。

 レーにもパトリックもこの事態は予想できてはいなかった。

 ———まさか、至聖教(しせいきょう)幹部『12使徒』の一人、オダストロがケルン大聖堂内ではなく、その外から現れるとは。

 レーは心の内でそう驚愕(きょうがく)していた。

 朝日のように輝くオダストロの両眼がレーの顔をしげしげと眺め、口が言葉を(つむ)ぐ―――その寸前、レーは動いた。反動で路面の石畳(いしだたみ)をめくりあげる程の、剛力の膝蹴(ひざげ)りがオダストロの腹部を急襲(きゅうしゅう)、体勢を崩したオダストロの白いローブを(つか)み、大聖堂まで力の限りぶん投げた。


「んー。(なぞ)ですが、気持ち悪い視線なんですね。」


 一拍を置き、リンも戦闘に参加した。


「……っ!今のが『12使徒』オダストロ……。」


 まだ土煙(つちけむり)も晴れないうちに竹の連撃を大聖堂に叩き込み、風圧で煙が晴れる。

 しかし、既にオダストロの姿はなかった。刹那(せつな)、大聖堂からは音楽が流れ始め、その一音一音が周辺の空気を軋ませる。


物騒(ぶっそう)だな……貴様ら。俺はそちらの男の方と、もう少し話をしたいんだが。」


 ケルンに吹き荒れる風よりも速く移動し、再びレーとリンの眼前に現れるオダストロ。

 穏やかな声を崩さずレーに話しかけた一方で、リンには完全に冷たい声をかけながら、彼女に接近した。


「そして、貴様は何者だ?」


 オダストロがさらに一歩踏み込み、拳がリンを襲う。リンは辛うじて『能力』を行使。竹を創り出して防御を間に合わせるが、強い衝撃(しょうげき)と痛みが防御越しにリンの腕へと響いた。

 しかし、リンの顔を驚愕に染め上げたのはその威力ではなかった———竹の盾が『灰』となり、崩れ落ちたのだ。

 レーもその様子を見ていたが、彼は臆することなくオダストロへ飛びかかる。


「やめてくれたまえ。レー、俺は君と話がしたいんだ。」


 初対面のオダストロに名前を呼ばれ、違和感によってレーの動きが遅くなる。

 隙を作ったレーは、オダストロに放った飛び蹴りをいとも容易(たやす)くいなされ、足を掴まれ頭から地面に叩きつけられる。鈍い音とともに石畳に亀裂(きれつ)が走った。しかし、レーは腹筋の力だけで上半身を起こし、拳をオダストロの顔面に打ち付けた。

 口の端から軽く血を垂らしながらもオダストロはレーを突き飛ばして、ついに怒りをあらわにした口調で言った。


「貴様……体術だけしか使ってこないとは……!!芸が無い。まさかここまで、このオダストロが舐められていたとはな……!」


「んー。貴方も"彼女”のことを舐めすぎかもしれなぁいんですね。」


「なっ……!」


 オダストロがさっきリンがいた場所を振り返ると、無数の竹がもう眼前まで飛来していた。


「……"トルネスシンザス”」


 ざらざらという音とともに、竹が無慈悲(むじひ)にも『灰』となって落ちてゆく。


「ふん。貴様相手に俺が『能力』の威力を披露することになるとはな。」


 オダストロはそのまま上機嫌そうに話を続けた。


「俺のこの『能力』は俺の魔力で塗り替えた物体を灰に変える……それだけだ。

 ……おい、赤髪の小娘、お前もなかなか腕が立つようだ。貴様、名前は?」


「私はリンだ。オダストロ、今度はもっと魔力を込めて『灰』にされる前にてめぇに竹をぶっ放してやるよ。」


 リンの全身を魔力が迸り、最大火力で眼の前の『12使徒』を穿(うが)とうとしたその瞬間。オダストロが口を開いた。


「そうか。ではリンよ、もう一つ『能力』を披露してやろう……"ラフン アルハラーク”」


 オダストロは笑みを浮かべて魔力を込め、空気を軋ませていた大聖堂の『音楽』がより一層響き始める。

 その旋律はケルンの街中を駆け巡り、オダストロを除く、ありとあらゆる物体・生命の魔力を『狂わせる』。狂わせられた魔力は次第に塗り替えられ、すべてが『灰』へと終着する。


(う……頭が(きし)むし、何だこれ……『能力』が制御できない……!?)


 リンは魔力を乱されて悶絶(もんぜつ)し、さらに彼女の赤く伸ばした髪は先端から灰となって地面に(こぼ)れていった。




 ―――『灰』と『滅びの旋律』が支配するこの戦場には、逃げ場も立ち上がれる者も存在しない



 ……はずだった。


「んー。なんだか付近の空気感が不気味になったんですね。オダストロ、あなたの仕業なんですか?」


(んー。まずいな……リンは動けそうにないか。それにこの『能力』の効果範囲!パトリックも今安全とは言い切れない。仮に無事でも、支援部隊の砲撃は届く前に灰になりそうなんですね。

 ……この男を弱らせ、『能力』を解除しなくては……!)


 刹那(せつな)の思考を経て、レーは眼の前の『12使徒』の撃退が最優先だと判断した。

 灰と化す石畳を蹴り散らし、加速したレーはオダストロへと迫る。


「ロケット・レー!やはり貴様は動けるのだな!!」


 こうして、旋律により灰と化して崩れ行くケルンの一角にて、命運を賭けた戦いは本格化していくのだった。

2つの『能力』を発動したオダストロ。

そして白熱するレーvsオダストロ!


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― 新着の感想 ―
レーの強さは能力から来るものでないと推測できるんですね、んー
12使徒は強すぎる、能力が2つなのもずるいよな。本格的な戦闘、楽しみなんですね、んー
レーがなぜ影響を受けないのか、オダストロがレーを知っていた理由が気になる。レーは誰かに記憶を消されたのかな?ストーリが進むのが楽しみです。
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