第四話 『能力』
ケンブリッジからエジンバラに移動する道中、今回の作戦の目標について警備隊長のパトリックから説明があった。
「レー殿、リン様、今回の最低勝利条件は、もちろん至聖教徒軍の全滅です。
しかし、我が立案にはもう2つ目標を加えております。」
「んー。パトリック、くだらない目標ではなぁいですよね。」
「ねぇパトリック、どんな目標?」
「はっ。1つ目は、まだ生存の可能性があるラムラコフスキー殿の救出・捜索であります。
2つ目は、ドイツ帝国に駐在しているとの噂のある『12使徒』の1人オダストロの正確な居場所を聞き出すことです。」
新たな『12使徒』の存在をパトリックから聞き、リンは少し身構えたが、彼女はむしろライトブルーの瞳に野心的な光を宿し、質問を投げた。
「レー先生、あんたは『12使徒』オダストロにはどのくらいの勝算があると思う?」
「んー。100%なんですね。居場所さえわかれば、三人でタコ殴りにするんですよ。」
———そして、一行はその後の計画を話し合った後、エジンバラに到着した。
神学校は少し丘の上にあり、麓の工場には大量の教徒軍が潜んでいると考えられた。
一行はまず、神学校へ向かい、ラムラコフスキーの捜索を行ったが、あたり一面には血の跡と、焼けただれ原型を留めていない複数の亡骸のみがあった。神学校の校舎は完全に焼け落ち、聖堂は崩れた校舎によって半壊していた。
———その晩、新月の夜、パトリックは完全に教徒軍の潜伏する工場付近を包囲し、住民に通行不可を言い渡していた。
その暗闇では、すべてが安らかに寝静まっていた。——レーとリンを除いては。
「一つ訊いておきたいんだけど、あんたは何の『能力』なの?」
レーはそう聞かれると困惑した表情を浮かべた。
「『能力』……私は生憎持ち合わせていないようなんですね。しかし、リンはお持ちで?」
レーが『能力』を持たないことによほど驚いたのかリンは数回目を瞬いたが、すぐに返答した。
「私は、竹を操ることができる。操るっていうのはその場にあるものを動かしたりするだけでなく、魔力量に応じてその場に生成することだってできるんだ。今から見せたほうが早いかな。」
「んー。私は殴ったほうが断然楽だと思うんですね。」
その会話の直後、二人は同時に工場の窓を破壊し突入を開始した。
何人かの教徒はその音で目を覚ましたが、もう遅かった。
彼らの胸部には既にリンの『能力』による竹が貫通しており、彼らは声を上げる間もなく絶命した。その時のリンの赤髪は、血を吸い紅に染まった花のように映った。
武器を取った教徒がリンに襲いかかろうとするが、闇に溶け込んだ黒瞳はそれを見逃さない。今度はレーの拳により阻まれる。鈍い音が瞬きの間に5,6発響いたと思うと、工場内に立ち上がっている教徒はもう居なくなっていた。
リンがまだ寝ている愚かな教徒を竹の檻で収監し、攻撃以外にもこの『能力』は便利なのだと得意になっている間、レーは檻をパトリックのもとに運び、彼らとの「お話」はパトリックに任せた。
戦闘が終わり、血の匂いが立ち込める工場から離れた後、リンはレーに話を切り出した。
「それにしても、レー先生は『能力』に選ばれた者だと思っていたのだけれど、そうでないのは意外だったかな。『12使徒』のような選ばれた中でもごく一部の人間は、『能力』を2つ所持し、それを使用できるだけの頭脳と魔力を持つこともあるらしいのに。」
「んー。私も『能力』については初耳では無いような気がしますが……そういえば『12使徒』オダストロの『能力』次第では勝算がぐっと下がりそうなんですね。」
リンはレーのその発言に対して呆れたような口調で釘を差した。
「あまり『能力』を舐めないほうがいいかもね。どんな『能力』でも使い手次第では化けるから、私の竹のようにね。」
『能力』についての会話をしていると、教徒との「お話」を終えたらしいパトリックが現れた。
「残念ながら、ラムラコフスキー殿に関する情報、痕跡は発見できませんでした。
しかし、『12使徒』オダストロの所在はこちらで掴ませていただきました。
奴は今、概ねこのパトリックの予想通りでしたが、西欧の至聖教布教の拠点、ドイツのケルン大聖堂にいます。」
彼らは工場の上からこちらを見下ろす『フクロウ』に気づくことはなく、その晩は眠りにつき、翌日の作戦会議に臨むのだった……
リンの『能力』は竹に関するものでした。
レーは本当に『能力』を持たないのか。
次話、第一章・第五話「戻ることは許されない」 近日公開予定!
次で第二章へと物語は動きます。
余談ですが、『能力』についての話は少し分かりづらいと思うので、まとめておきたいと思います。
・『能力』は選ばれしもの(一部のもの)しか所持していない
・『能力』の発動には大抵、脳と魔力を使用する。
・『能力』を2つ持つ人間は非常に稀で、『能力』使用者の中でもほんのごくわずか。
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