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9月10日のEdinburgh  作者: edinburgh0910
灰燼のケルン編——融かされた『氷』

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第十三話 余燼の渦中

 リンが戦場を離れた直後、エノキウスと名乗る男とレーの戦いが激化していた。


「なァ、レー先生よぉ。この技に見覚えはあるかァ?」


 エノキウスの左腕———手の甲にドクロが彫られたそれが、一瞬濃い紫色に発光した。何かが射出され、風を切ってレーへと飛んでゆく。

 レーは背筋に寒気が走り、直感的に体を(ひね)って回避する。レーが背後を振り返ると、そこにはその『能力』の威力を知らしめるかのように地面が大きく(えぐ)られており、(ちり)すら残ってはいなかった。


「オイ。余所見(よそみ)は厳禁だぜ、レー先生?」


「……っ!」


 レーが再び正面に目を向けたときには、エノキウスの姿は黒い壁に覆われ視界になく———否。視界を大量のバッタが瞬時に()()くしていた。レーは鬱陶(うっとう)しいバッタの集団に対処するべく、『冷寒』の力を発動させる。


「"ゲフリーア”!」


 瞬時に広範囲のバッタが凍りつく。


「おお、さっすがはレー先生だァ。そのバッタ、俺様の祖国にいっぱいいるんだけどさ。実はなァ……"爆ぜる”んだよ。―――俺様の『能力』でなァ!」


 そう、エノキウスが叫んだ瞬間、氷を砕くような音とともに、凍りついた大量のバッタが一斉に爆発する。融けた氷が水となり、二者の足元を水浸(みずびた)しにした。

 しかし、爆発の威力はその程度の範疇(はんちゅう)には収まらず、この戦場から離れている、リンへも衝撃波が到達するほどであった。加えて、灰となっていた建物が粉塵(ふんじん)と化して、他の戦場に、はるか上空にへと吹き飛んでゆく。

 レーは『冷寒』の力により、辛うじて氷壁を間に合わせて爆発から逃れる。


「んー。まさか、バッタが爆発するとは、こちらも反撃させて頂くんですね。」


 レーはエノキウスの足へと狙いを定め、『冷寒』の力によりエノキウスの足を凍りつかせる算段だ。しかし、足元の水が凍る寸前、エノキウスの足は地を離れ、宙に浮きあがる。レーが見上げると、エノキウスは凍てついた大地から30メートル程も飛び上がっていた。


(これを(かわ)すとは……一筋縄ではいかないのか。でも、着地の瞬間の隙を狙えるんですね……)


 レーは空を見上げて機をうかがっていたが、エノキウスの高度は下がらない。

 よく目を()らさなければ視認できない、空の色に溶け込んでいる透き通る(はね)―――それが彼の肉体を支えていた。


「飛んで……いるのか……?」


 その呟きと同時に氷柱(つらら)を飛ばし、レーは上空のエノキウスを攻撃する。

 しかし、エノキウスは笑みを崩さないままそれを正面から受ける。顔面に氷柱が命中し、エノキウスの体が少し()()った。しかし、その顔の笑みには傷一つついていなかった。


「レー先生、随分派手に『能力』を使ってるけど全然だァ。威力が(ともな)ってねぇ、『500ダメージ』ってトコだろうかァ?」


 エノキウスはより一層凶悪に(わら)い、地上のレーへと攻撃を繰り出す。


「そろそろぉ、レー先生を、殺そうかなァ!」




 上空を警戒していたレーの足元へと違和感が走る。彼が見下ろしたときには既に手遅れで、岩の腕が彼の足に(から)みついていた。岩の腕をよく見ると表面に紫色に発光する線があり、エノキウスが先程使用した『能力』に酷似していたが、今のレーにはそんなことを気にしている余裕はなかった。


(何だこれは……ひとまず、『能力』で……)


 レーは『冷寒』の力を唱え、『能力』を行使して窮地(きゅうち)(だっ)しようとする。


「"ゲフリー……”―――!?」


 しかし、彼の『能力』はそれに(こた)えなかった。困惑するレーの姿を上から見ているエノキウスは理由を上機嫌に述べてゆく。


「レー先生、その岩の表面―――その紫のヤツ、俺様の『能力』なんでよ。

 ……まァ、使えねーだろぉ?『能力』。」


「くっ……だが、こんな岩の拘束、力ずくで―――」


 岩の腕がミシミシ音を立て、亀裂(きれつ)が走るが、そう簡単には壊されない。エノキウスは『能力』でひび割れた箇所を次々と修復しながら、身動きの取れないレーへと追撃を放つ。


「さァて、レー先生は頑丈(がんじょう)だけど、耐えられるかなァ?

 "メーレ・ハート”  "ジュワーラ”!」


 その詠唱を合図としてエノキウスの魔力が(ほとばし)り、巨大な火炎が球の形に集まり始める。

 最終的に家一個分にまで膨れ上がった『火球』は正午の太陽よりも(まばゆ)く輝き、ケルンを煌々(こうこう)と照らしていた。

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― 新着の感想 ―
紙面の隙間から滲むのはインクではない、灰だ。爆ぜるバッタの灰だ。 レー先生が冷気を放つ、その音は氷結ではなく鐘の音。ゲフリーア――響いた瞬間、街路樹の根までひび割れ、冷えた大地の下から「お前を待って…
エグすぎw ワロタwww えのき薄マジ強敵すぎるやんwwwwwwww えのき薄はバッタでも食べたのカナ?
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