あとがき
この物語に最後までお付き合いくださった皆さまへ。作者の蒼井凌です。
スカートがめくれてしまう――その出来事は、いつの時代も「恥ずかしいけれど、ちょっと笑える話」として消費されがちです。けれど、その「見られる側の怖さ」や「心に残る傷」に、もっと真剣に向き合いたいと思い、この物語を書きました。
スカートがめくれることの“恐怖”を、正面から描いた物語は、少なくとも私自身の中にはあまり記憶がありませんでした。社会の中でも、“触れてはいけない話題”として避けられてきた印象があります。
当初は、このようなテーマを真正面から書いていいのか、とても迷いました。けれど今の時代だからこそ、こういった物語が必要だと思い、勇気を出して書くことにしました。恥ずかしさの奥にある「声にならない感情」や「知られたくない脆さ」が、少しでも伝わる作品になっていれば幸いです。
本作は、先に公開した『葵と綾、そして風 -First Edition- 』を、葵と綾の感情の描写を深めるべく、リライトしたものになります。
First Editionは、私にとって「初めて書いた小説」とも言えるものでした。そのため、よく言えば“綺麗に”、悪く言えば“お高く”まとまっていた気がしました。そこで、もっと葵と綾に自由に、素のままで動いてもらい、より素直な感情を描きたいと思い、リライトに取りかかりました。
当初はほんの「手直し」のつもりだったのですが──気づけば、だいぶ様子が変わってきてしまいまして……。
声を出さず泣きながら両手を振り回していた葵
→ 座り込んで大泣きする
静かに涙を拭い、笑顔が戻る葵と微笑む綾
→ 怒りの叫びをぶちまける葵と、固まる綾
門限もあるのでパフェはおあずけ
→ 大急ぎで食べに行く(多分、門限オーバーして家で叱られてる)
……といった具合に、あまりに展開が変わりすぎて、書き終えてみて「……これ、どうするよ?」と途方に暮れてしまいました。(笑)
ですが、葵と綾の率直な思いに、改めて寄り添うことができたのではないかと思います。予想していたものとはずいぶん違う作品に仕上がりましたが、リライトしてよかったと、今なら胸を張って言えます。
「葵と綾」のシリーズは、もう少し続く予定です。「葵と綾、そして風 -First Edition- 」との違いも含めて、お楽しみいただければ幸いです。
また次の物語でお会いできることを願っています。
蒼井 凌