Part.4
「あああああもうっ、むっっっかつくぅううううう!!!」
葵の突然の叫びに、綾は思わず目を見開く。
「何なのあれ!? いきなりバッって!! あんなとこから風吹くなんて、わかるわけないじゃん!!」
「……葵……?」
「どこ押さえてもめくれるし、全然やめてくれないし、イジメだよあんなの!! 人間は手が二本しかないんだよ!? 押さえられるわけないじゃん!!!」
「うん、うん……だよね。風、やばかったもんね」
「ホントだよ! み~~~んなスカートめくれちゃうじゃん! み~~~んなパンツ見られちゃうじゃんっ! 何あれ、何のためにあるの!? スカートめくるため!? 変態じゃんっ!!」
「……う、うん……」
そう叫びながら、葵はまた目元を拭って、今度はぷぅっと頬を膨らませた。
その顔がなんだかあまりにもいつもの葵で、綾はふっと吹き出した。
葵はぶすっと膨れると、一言だけ言った。
「……もういい」
「えっ…………?」
その言葉に、綾は葵の気を損ねてしまったのかと不安になった。
葵はまたひとつ、鼻をすんと鳴らすと、ぴょんっと立ち上がった。
「……パフェ食べよ!!」
「………………えっ?」
「い~~~っぱい食べてやる!!」
綾は思わず目を丸くする。
「えっ……今から? 時間ヤバいんじゃ……」
「まだ平気っ! 絶対食べるの!!」
綾は腕時計を見る。
そして、意を決したように口を縛った。
「……よし、行くぞ~!」
綾のその言葉と笑顔に、葵はニッと笑う。
「パフェパフェ~~っ!!」
手を繋ぎながら、綾に引っ張られるように葵は駆け出した。
笑いながら、叫びながら、彼女たちは夕陽の中を全力で走る。
途中、赤信号につかまる。
2人はぶつぶつ文句を言いながら足踏みする。
すると、ふわりと風が吹き、葵のスカートがふくらむ。
「……っ!」
葵は、咄嗟にスカートの前を押さえた。
無意識の行動に、自分でも少し驚いて、目を丸くする。
それを隣で見ていた綾は、その光景に目を奪われた。
スカートを押さえる葵の姿が、なんだか新鮮で、綺麗だった。
2人の目が合う。
そして、同時に笑い合った。
葵はスカートの裾をペシッと叩いた。
「……そうはさせるかっ!」
綾はそんな葵を微笑ましく見守る。
「あ、信号変わった!」
「レッツゴーっ!!」
葵と綾は手を繋ぎ、声を合わせながら走り出す。
『パ~フェッ♪ パ~フェッ♪ パ~フェッ♪ パ~フェッ♪』
坂道を駆け抜ける2人の笑い声が、夕陽の中に響いていた。
(おわり)