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無着色戦隊イロナイン

作者: 塩ペンギン

 その日は突然やって来た。

 宇宙の彼方から悪の軍団『ワルイドン』が地球侵攻を開始したのだ。

 郵便ポストを青く塗ったり、お店の商品に勝手に値引きシールを貼ったり、行列に横入りして怒られたりと悪行三昧。

 しかし、そんな連中を黙って見ている者達ばかりでは無かった。

 心に正義の炎を燃やし、些細な悪にも容赦が無い若きヒーロー達がいた。その名は⋯⋯⋯。


『無着色戦隊イロナイン!』


 イロナインとは、世界マッドサイエンティスト図鑑に名を連ねる科学者、古殻ふるから)博士が設立した組織である。

 ちなみに博士は28歳と、認定マッドサイエンティストの中でもかなり若い方だ。

 町の片隅に怪しげな研究所を構え、「あー、いつか悪の組織とか来ねーかなー」とか思いながら戦闘用強化スーツや武器を開発し、町の住人達からは何をやらかすか分からない危険人物扱いされていた⋯⋯。

 しかし、ついに博士の努力が実を結ぶ時が来てしまったのだ。


「諸君! 準備はいいか?」


 古殻博士のはつらつとした声が研究所内に響いた。

『諸君』と呼ばれた3人の男女は助手という名目で雇われた臨時アルバイト。

 だが、その実態は正義を愛し過ぎ極端に悪を許さないイロナインのメンバーである。


「準備完了です博士!」

 コードネーム《イロレッド》こと赤堀烈堂あかほりれつどう)が吠えるように答えた。


「訓練の成果を奴等に見せてあげましょう!」

 《イロイエロー》こと家路いえみち)ナナは拳を振り上げ既にやる気だ。


「⋯⋯ふっ、腕が鳴るぜ」

 《イロブルー》こと上尾蒼司かみおそうじ)は言葉少なめにクールを演出。腕組みをして佇んでいる。


 全員すでにスーツを着用し、いつでも出撃出来るように待機していた。

 古殻博士は全員を見回してウンウンと首を振り、「ついにここまで来たな⋯⋯」

 と万感の思いに駆られ、涙するのだった。


「しかし、博士」


 レッドがひとつの疑問を口にした。


「何故、俺達のスーツには色が無いんですか? デザインも同じだし、これではコードネームで色分けしている意味が無いのでは⋯⋯」

「え?」


 古殻博士は一瞬動揺したが、軽く咳払いして答えた。


「スーツの色もデザインも統一する事で敵を攪乱する狙いがあるな。あとは⋯⋯そうだな、外見の色など問題ではない。大事なのは心。そう、これは君達の内に秘めた色なのだ!」


 本当はスーツの開発は外注に出していたのだが、色指定を失念していたために無色というか、薄いグレーになってしまったのだ。

 博士は自分でもわけが分からない苦し紛れの言い訳に(何を言ってるんだ僕は⋯⋯)と、思わず俯いてしまった。


「⋯⋯なるほど。」と、レッド。

「確かにそこはどうでもいいよね」と、イエロー。

「ふっ⋯⋯、いいさ何でも」と、ブルー。

「き、君たち⋯⋯」


 古殻博士は感動で震えた。

(ありがとう! 何も考えずに誤魔化されてくれてありがとう、君たち!)


「それじゃあ行くぜみんな!」


 レッドの掛け声とともに専用マシンで出撃するイロナイン。

 マシンには各々の武器が格納されている。

 レッドはオーラブレードとハイパーライフルが。

 イエローはビームガンとスゴクツヨイアローが。

 そしてブルーは⋯⋯⋯⋯素手。


 頑張れイロナイン!

 たとえ悪の軍団ワルイドンが世間的にはどうでもいい連中だと思われていても。

 戦えイロナイン!

 たとえ数日後には銃刀法違反でレッドとイエローが活動自粛に追い込まれても。


 いつかブルーがワルイドンを倒してくれるかも知れないその日まで!


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