不機嫌
続きです
あれから寮に戻った僕は、司書さんに言われたことを反芻していた。「夢を壊さない為」だとか、「知らないほうがいい」とか「無駄な努力」だとか、僕の何を見てそう言ったのか、本当にわからない。この国の人たちは皆、魔法が使えて当然なのだから、僕は当たり前のことを言っているはず。それなのに何故司書さんはあんなことを…頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。
そう考えているうちに時は経ち、いつの間にか朝日が昇っていた。
モヤモヤしながら学校に向かう準備をして寮から出ると、そこには彼女の姿が。僕は挨拶だけして、彼女に見向きもせず学校に向かう。彼女は何も言わなかったが、僕の横を俯きながら歩いていた。
これほど重い空気は初めてだった。今にも走り出したいくらいには。でもそんな重い空気を切ったのは彼女だった。
「昨日司書さんから言われたことについて悩んでいるの?」
と声をかけられ、僕は返事はしなかったが、首を縦に振った。
「私もあれから色々考えたんだけど、まるで意味がわからなかったわ」
と笑いながら伝えてきた。僕は不機嫌になり
「こっちの気も知らないで、何言ってるの?」
と怒気をはらんだ声で言い返した。そして
「当事者じゃないから、そんな気楽にいられるんだろ」
「それは…」
「だったら話しかけないで、先に行く」
とイライラしながら、先向かった。その途中で
「君の力になろうと思っていたのに…」
と言った彼女の声は、僕には届かなかったが少し悲しそうな声だったことだけは気がかりのまま、彼女を置いて向かうのだった。