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第60話 神の手の秘密

その夜、我々はいつものようにスーパーマーケットに集まった。食品の冷凍ケースが静かに唸りを上げる中、EDCを壊滅させるための会議が進められていく。


世界の行方を決める議論が交わされる一方で、日常の音が場違いに響くその場所が、いまや世界の命運を左右する中枢となっていた。


会議が終わると、私たちは自然と酒コーナーに足を向けた。陳列されたボトルが蛍光灯の光を受けてきらめき、緊張感に包まれていた空気が少しだけ和らいだ。


ビールやウイスキーのラベルを眺めながら、軽い雑談が始まる。


そのときだった。瓢六がボトルを一本手に取り、静かに微笑みながら言った。


「全部話そう。」


彼の声は低く、いつも以上に重みを感じさせた。


「私の正体だ……知る必要があるだろう。」


瓢六はグラスに注いだ酒を一口飲むと、ゆっくりと語り始めた。


「私の家系は、占い師や祈祷師の血筋です。」


その声には、過去への敬意と誇りが込められているように感じられた。


「私たちの祖先は、遥か昔から各地の王や支配者に仕えてきました。運命を占い、未来を見通し、祈りによって危機を乗り越える手助けをしてきたのです。その過程で、支配層の秘密に触れることも多々ありました。有力者の秘密を知る者は、次第に力を持つようになるものです。」


私の疑問が1つ解決した。占い師や祈祷師の血筋だから悪魔が見えてもおかしくはない。


「私の家系は、こうして長い年月をかけて独自の情報網を築き上げました。散らばった一族の中で得られた情報を共有することで、有力者たちを陰で操るほどの力を手に入れることができたのです。」


瓢六は静かに笑みを浮かべる。


「やがて、世界中に散らばった私の家系の者たちは情報を共有し、独自のネットワークを構築しました。それが現在の『神の手』の諜報網の基盤となっています。」


この背景を聞いて、私は彼が「神の手」を新興宗教として利用している理由を理解した。宗教という外見を纏うことで、支配層を操るだけでなく、民衆をも動かす力を持つに至ったのだ。


私はその話に耳を傾けながら、彼が何を伝えたいのかを考えていた。そのとき、彼が続けた言葉が核心に触れた。


「最近では、自由を求めるレプリシアンとの連携も進んでいます。彼らはトラプトニアンの支配から逃れた者たちで、戦闘能力に長けた者も多い。彼らと『神の手』の戦闘部隊が、EDCを壊滅させます。」



瓢六がレプリシアンと協力関係にあることを知ったとき、頭の中で何かが弾けたような気がした。その事実は驚きでありながら、どこか腑に落ちる部分もあった。彼の計画の緻密さ、情報の正確さ――そのすべてが、この異質な協力関係によって支えられていたのだろう。


一方で、イモケンピは壁に寄りかかりながら黙々と缶詰を食べていた。牡蠣の缶詰だろうか、フォークを器用に使いながら、まるでこの会話など聞いていないかのような素振りだ。しかし、その赤い瞳は何かを見透かしているようにも感じられる。


足元に視線を落とすと、瓢六の式神がイモケンピの足に噛みついているのが見えた。その小さな姿が繰り返し攻撃を仕掛ける様子は、緊迫した空気の中に奇妙な滑稽さをもたらしていた。




ここでは――いや、この仲間たちの間では、悪魔や式神がいることが日常の一部だ。魔女も、超能力者も、さらには宇宙人までが共にいる。奇妙な組み合わせに見えるが、いまやこの多様性こそが、この荒廃した世界で希望を繋ぐ力となっているのだ。


「仲間とは、こういうものなのかもしれないな……」


そうつぶやきながら、私はこの異様な光景を、少しだけ誇らしく思っていた。

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