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第2話 浮遊艦の出現と人類の絶望

遥か上空に浮かぶ全長20kmにも及ぶ巨大な艦。我々はその艦を浮舟や浮遊艦と呼ぶ。かつて人類はその到来を歓迎した。未知の知的生命体がもたらす科学技術、その恩恵に期待し、未来が輝くものになると信じていた。だが、それは幻想に過ぎなかった。



侵略は突如として始まった。エイリアンの名は「トラプトニアン」。彼らは七隻の巨大な浮遊艦を従え、地球の主要な海域上空に姿を現した。その艦からは無数の機動艦や戦闘機が飛び立ち、地上には機械兵と生体兵器で構成された恐るべき軍勢が降下してきた。



圧倒的な科学力と破壊力に人類は太刀打ちできなかった。地球の人口は、この3年間で既に30%を失った。主要都市は焼き尽くされ、軍事基地も軒並み破壊された。連携を失った軍隊は、小規模なゲリラ戦に追い込まれていたが、それももはや戦争とは呼べない代物だった。



「人類に勝機はない。」



希望が崩れ去る中、各地の指揮官たちの口から次々と漏れる。

残された者たちも、それを否定できない現実を前にして沈黙するしかなかった。





春が訪れ、柔らかな日差しが山肌を照らし、家の前に咲く菜の花が風に揺れている。鳥たちのさえずりが穏やかな時間を運んでくれるが、その静けさがかえって、戦争の影を際立たせている。


今、私は山間の小さな町に住んでいる。祖父が遺した古い一軒家だ。山に囲まれたこの小さな町は、この国で海から最も遠い場所のひとつであり、わずかに戦火を逃れている安全地帯だ。ここに日本統合防衛司令部が設置され、私はその研究機関に所属している。


心理学と語学を専門とする私は、トラプトニアンの意図を解明するため、統合防衛司令部に招集された。しかし、有効な手段を見つけられないまま、無力感に苛まれる日々だ。



人手不足の日本統合防衛司令部で上級職についた私は、トラプトニアンに関するあらゆる情報を手に入れることができた。


ある日、司令部で過去の交渉記録を手に取った。そこにはトラプトニアンが提示した条件と、人類がそれを拒絶した経緯が詳細に記されていた。



「使者の殺害——」



その一文を目にした瞬間、胸がざわついた。彼ら――トラプトニアンは、最初から敵ではなかったのだ。彼らの使者は、母星を救うために、わずかな水と引き換えに高度な技術を提供すると申し出ていた。



だが、人類の代表者たちは、その申し出を拒絶した。いや、欲望と恐怖に駆られた彼らは、それらすべてを力ずくで手に入れようとしたのだ。疑心と傲慢が交錯し、使者は無残にも命を奪われた。交渉は絶たれ、憎悪の連鎖が始まった。



その選択の果てに、私たちが手にしたのは、荒廃した地球と、絶え間なく続く侵略の惨劇だった。


「ほんの一部の人間が、この破滅を招いた……」

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