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第10話 得るためには与えよ

翌日も、私はイモケンピと共にカリドゥスの研究室に向かった。


道中、私は不安を隠せずに口を開いた。


「カリドゥスは本当に協力してくれるかな?」


「心配するな。」


イモケンピは平然とした口調で言った。


「あいつは純粋な男だ。私は心を読むのが得意だからな。」


「そう?でも、何かをたくらんでいる気がするんだけど。」


「協力関係なんだ。お互いにメリットがあるのは当然だろう。」


イモケンピはそう言ったが、その声には微妙な含みがあった。


やがて私たちはカリドゥスの研究室に到着した。


「カリドゥス、今日はプレゼントを持ってきました。」


「プレゼント?」彼は手を止め、こちらを振り返る。


「これです。」


私はバッグから小さなケースを取り出し、彼に差し出した。


カリドゥスは目を見開き、息をのんだ。


「これは……!」


「ヤマネです。絶滅危惧種で天然記念物。この国の固有種ですよ。」


彼の目がさらに輝きを増した。


「美しい……」



カリドゥスはケースの中のヤマネを食い入るように見つめた後、感激したように笑った。


「素晴らしい!地球人の協力を得ることができたぞ。これで、この星の動物がさらに手に入りやすくなった。もっと、もっと持ってくるのだ、地球人よ!」



私は冷ややかな視線を彼に向ける。


「……心の声、漏れてますよ。」


カリドゥスはハッと我に返った。


「あ、すみません。動物のことになるとつい夢中になってしまって。」


イモケンピが耳元で囁いた。


「これがあいつの本性だ。動物のことしか頭にない。それがあいつの欲望というわけだ。」


私は、欲にもこんなに美しい形があるものだと感じながら、ヤマネに夢中になっているカリドゥスを静かに見つめていた。


「今朝、偶然見つけたんです。」


そう言いながら、私は朝の出来事を思い出していた。




早朝、庭の片隅でヤマネが走り抜けるのを見つけ、急いで近くにあった網を掴み、捕まえようと駆け寄った。


「そっちに行ったぞ!」


イモケンピが冷静に指示を飛ばす。その声に従って、私はヤマネを追い詰めようと網を振り回した。


「おりゃおりゃおりゃおりゃーーーー!」


全力で網を振り回す私と、それを面白そうに見守るイモケンピ。ヤマネは小さな体で懸命に庭を駆け回る。


時間はかかったが、なんとか捕獲に成功したのだった。





「素晴らしい!気に入りました!」


カリドゥスは目を輝かせながら声を上げ、手際よく研究の準備を始めた。


信頼関係とは、こうして築くものだ――そう思った。


―― 得るためには与えよ ――


この言葉は、ここへ来る途中でイモケンピが私に教えてくれたものだ。軽い冗談のように聞こえたその一言が、今になって妙に胸の奥に染み入ってくる。


イモケンピは一歩後ろで静かに笑みを浮かべている。その目は、全てを見透かしているかのようだった。

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