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これはフィクションです

作者: 千織 燈花

これはフィクションです


やさしいひとになりたいこれが僕の幼いころの夢だった

だが僕はやさしいを勘違いしていたのかもしれない・・・  


人間関係は全て合わせ鏡だと考えて

そう無理やり思い込み周りにやさしくしてきたつもりだったがもう僕は限界だった

人にやさしくするたびに利用され、拒絶され、裏切られそして僕に残ったものは虚像だけ

これはぼくが壊れてしまうまでのはなしだ


僕の考えたやさしい人とは、自分にとっての理解者自分を肯定してくれる人だった

相手が何を言ってほしいかを考え会話し、その相手が望む通りに動く

少しそこに相手の期待を裏切るというスパイスを入れることにより人間味をもたせる。

相手が望むキャラクターを作り演じる、そこに僕の意思はいらない

そうすれば、ばれることはない相手からはやさしい人に見える


しかしその結果が

「君といると楽だけどつまらない」

「君はそれでたのしいの?」

「君のすべてが嘘みたい」

「君は利用しやすいからね」

という言葉だった

だがぼくは演じることをやめなかった

違うな、やめられなかったという方が正しい


僕がこんな自分の意思を殺してまで相手にとってやさしい(都合のよい)

僕を演じてきたのには、理由がもちろんある。

もしも、自分の意思を殺してまでなにも求めずに他人にやさしくできる

物語の主人公みたいな人がいるのだとしたら

もうその人はとっくのとうに壊れてしまったのだと思う

僕がやさしくしていた他人に求めていた見返りはやさしさだった

それも、僕は我儘だから僕のようにいびつでゆがんでしまったやさしさではなく

ちゃんとした僕そのものを見てくれる愛とも呼べるような温かく心地の良いやさしさを

僕は求めていた・・・

求めていたという言葉では、弱すぎる、渇望していたこれでも弱い

狂い壊れていくのにも気がつかないほどに求めていた


しかし、手に入れることはできなかった

今にして思えばあたりまえのことである

僕は、気付けてなかった、

合わせ鏡の人間関係で僕が他人に与えているのはゆがんだやさしさ

ゆがんだやさしさに対して帰ってくるのは当然ゆがんだものしかないことにも

しかも

僕の考えるやさしさとは理解者

僕が求めたやさしさとは愛とも呼べるような温かく心地の良いもの

矛盾している

そう僕はやさしい人にすらなれてなかった


このことに気がついたとき僕のなかですべてがくずれた

ぼくが我慢してきたのはなんだったんだ

そして僕はその時同時に気持ちが軽くなった

そしてその時初めて自分に違和感を感じた違和感といっても本当に少しだけ何かが違うと感じただけだった


それから僕は自分を殺すのをやめた

自分の思うままに笑い、表情を作るのをやめ、言葉を偽り、飾るのをやめた

そして僕は偽りの自分から解放された・・・

それから僕はとても自由で楽になった

僕らしく生き、僕らしく自分の道を切り開きあるいていく

希望に満ち溢れた未来に向けて一歩を踏み出した






はずだった

しかし待っていたのは地獄だった

自分の意思を殺し相手に合わせていた

そう僕の中では自分の意思はもうとっくのとうに死んでいたのだ

いや正確には違う

相手に合わせるこれが自分の意思になってしまっていたのだ

最初は「長い間他人に合わせていたからな癖なんだろう仕方がないそのうち治るだろう」

と言い訳することもできた

しかし、

日常的に相手の言ってほしい事を考え

相手にとって一番を考え

相手にとって一番の表情を考える

常に相手、相手相手相手相相手相手相手相手相手相手相手相手相手相手相手相手相手相手

もう笑うのも泣くのも怒るのもすべて相手のためになっていた

これを読んだ人はきっと

何をこいつは言っている?そんなものはこじつけだと思うかもしれない

しかし自分のためには笑えないし泣けないのだ


そしてだんだんと表情が気持ち悪くなり感情がわからなくなる

今悲しいのか、うれしいのか、泣きたいのか、笑いたいのか、全く分からなくなる

そして相手の表情、言葉すべてが作りものに見えてくる

どんなに甘い言葉をかけられようとどうせそのうち関係を切られる

だから自分を見せてはいけない

だから経験も性格も経歴でさえ嘘で塗り固めてしまえそうすればたとえ切られたとしても

切られたのは自分じゃないそういう風に逃げるようになった

それに本当の自分は空っぽだ、きっとこんな自分を見られたら捨てられる


こうして自分の中に完璧な疑似的な人格ができていった

そして弱い自分を囲い込み傷がつかないようにして生きていく

そう僕はそうしなければ人間社会で生きていけないくらい壊れてしまったのだ


人は嘘をつく、人は他人に対して理想や期待を押し付ける

人は簡単に傷つき、他人に傷をつけることができる

それを知り、耐えられなくなり

自分でさえも他人に感じてしまい

なにも感じなくなった

これがやさしい人になりたかった僕の末路だ

小さくて、とてもよわかった僕の末路だ


ああどこで間違ってしまったのか


やさしいということは同時に強くなくてはいけない

やさしいということはとても残酷だ

そして何よりやさしいということは自分を壊す

やさしい人が大人になると少なくなるこれはあたりまえのことだと思う

やさしい人はいつか壊れてしまうからだ


どうか自分を殺してしまうのはやめてくれ

他人にやさし人をもとめないでくれ

やさしさを求めていいのはやさしい人だけなのだから

人間関係は合わせ鏡なのだ



壊れてしまった僕にやさしさはあるのだろうか

壊れてしまった僕はやさしさを求めてもいいのだろうか・・・







これは物語であり・フィクションです。

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