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帰郷2

 それは少し前に遡る。僕たち勇者パーティが、魔王と対峙したときのことだ。

 僕たち勇者パーティは、勇者である僕と、剣士、射手、盗賊、術師の5人で旅をしていた。

 いや、文句があるとは言っても、彼らはいい奴らだった。仲の良い旅仲間だったと思う。


 旅の途中でルートを間違えて魔物の群れに当たったときも、食料が無駄になって絶体絶命の危機に陥ったときにも、彼らは、いや僕たちは、誰も見捨てることなく失敗を埋めながら助け合ってきた。


 では何が不満なのか?



 ・・・それは・・・



「―――待って!!」

「・・・っ!?」

 緊迫した戦場に響き渡る叫び。それは一番遠くにいた仲間から発せられたものだった。

 激しくぶつかり合う騒音に負けないぐらいの、必死さが彼女から感じられた。

 だがこのときの僕たちは、数分後にほぼ全滅したとは考えられないほどの余裕というものがあった。射手は後方で、盗賊は僕が魔王とうまく対峙できるようそばで支援してくれていたし、術者は傷を負ったその瞬間に癒やしてくれていた。今必死に呼び止めた剣士の彼女も、僕に邪魔が入らないよう、魔王の仲間らしき魔物と対峙してくれていた。


 だが彼女は、なんの希望もないような声で言った。


「これ・・・このままじゃ、負ける!!」


 そこから、戦況は全く違うものへと変化した。いや、もとから変わっていなくて、僕たちがわかっていなかっただけなのかもしれない。手のひらの上で、否、指の先で踊らせれていたのだ。


 そして僕たちは、あっさりと倒された。

 あれだけ苦難を重ねてきた僕達の努力も、家族とまではいかないが確かにそこにあった絆も全て。無意味だったのかというほどに粉微塵に打ち砕かれた。

 仲間達は死んだ。僕を残して。


 僕は勇者だ。勇者パーティのリーダーとして、一番仲間をまとめ上げ、導いていかなければならない。だと言うのに、僕だけが生き残り、この惨状を目の当たりにして、なんの文句も出ないほうがおかしいだろう?



 「・・・と、言うわけで、とにかく旧勇者パーティの仲間達の安否を確認するわけだが・・・」


 丘を下り、住宅がそびえ立つ村の方へと向かう途中。

 はぁ、と後ろを振り向き、先程から後を追ってくる存在に目を向ける。


「?どうしたの、アル」

「・・・、あのさぁ、なんで付いてくんの?」


 半ば面倒くさそうに言い放つと、少女はキョトンとさせていた無垢な表情を一変させ、顔を赤く染め上げながらまくしたてた。


「は・・・!?(一緒に遊んでたのに)アルが勝手に行っちゃうからじゃんっ!」


「あーー・・・、ごめん、ごめん。いいよ一緒に行こう」


 慌てて苦笑いをしつつ彼女の方を振り向いて宥める。少女の顔を見てみると、今にも泣き出しそうである。このまま置いて行けばさらに悪化しそうだと僕は悟った。

 仕方なく僕は、僕の後ろに張り付くようにして付いてきていた彼女の横に並び、これでいいだろ?と言わんばかりの顔で彼女の機嫌が直るのを待つ。

 自分にもこのような時期があったのかもしれないがやはり今となっては子供の考えることは解らない。だから面倒なことを起こさないためにも、こうして自分から従ってあげるしかないのだ。


 まったく、厄介なことになったな。


 そうして僕と少女は共に村へ向かうことにする。だが一つだけ、どうしても確かめておきたいことがあった。

 僕は再度少女の方を向き、最大の謎を解明すべく、悪意なき純粋な心で言ったのだ。



「そういえば、君って誰?」



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