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帰郷

 目を開けると、そこは懐かしい場所だった。何がなんだか分からずに錯乱していると、あの魔王の顔が頭に浮かぶ。そして言われたことも。

 ⸺⸺ほんとうに過去に?

 自分の体を確かめてみる。顔などは見ることはできないが、全体的に小さくなっている気がする。鎧を身にまとっていないからかもしれないが。代わりに、どこにでもいる村の子供服を身にまとっている。


 もっと全体を確かめてみたいが、周りに姿見のようなものも、水たまりのようなものも見当たらない。辺りは少しの木と草が生い茂っているばかりだ。

 

 そうだ・・・、ここは・・・。


 懐かしい。昔、ここでよく遊んだっけ。

 村から少し離れたところにある丘の上。村には子供がたくさんいたから、友達もいっぱいいて、たくさん追いかけ回ったりしたものだ。

 そしてそれはいつのことだったっけ、と何年も前のことを思い出そうと、

 「ねえ!」

 「うわあっ!!」


 突然の声。気づかなかった。すぐそばに、小さな女の子がいた。

 

「・・・、はぁ、やめてくれよ、それでなんなんだい?」

 とりあえずまだ混乱したままの頭を回転させ、人がいることに安心しつつもこの状況を打開しようと少女に視線を向ける。


 少女は本当に小さかった。いや、自分もこれくらいだと思うのだが、10歳いってるかいってないかくらいの子供だった。

 まじまじと自分のことを見る僕を不快に思ったのか、少女は顔をしかめる。

 

 「ねえ、なんなんだじゃないよ、起きてたなら言ってよ、もう!」

 

 「起きて・・・?寝てたの?僕」


 そうだよ!と少女はぷりぷりしながら言う。しかし、なぜそんなにもぷりぷりしているのかが僕には分からない。

 そう思ってると少女は続ける。

 「勇者修行のために薬草探しをしようって言ったのに、途中で寝ちゃうんだもん!」

 

 勇者修行?何年も前のことだからか、そんなこともしたっけか、としか思うことができない。

 

 「こんなところに薬草なんてあるの?」

 「あるもん!ねえ、急にどうしたの??なまいき!」

 !?・・・ガァーーーン・・・。

 可愛らしい女の子に辛辣なことを言われることほど、胸に来るものはない。


 はあ。懐かしい故郷に帰ってきてもいいことがないなんて、どんな人生を歩んでも僕は僕のままだなとつくづく思うよ。

 まあ、あの恐ろしい魔王から逃れ(逃され)、いろいろ考えるべきことはあるが、結果的に見れば、今こうして生きていることが何よりの幸福に違いないが。


 そのとき、はっと僕の頭に一つの考えがよぎった。


 そうだ、ここが過去なら、もう死んでしまった仲間たちも生きているはずだ。


 「会いに行かないと」


 会いに行かないと。僕はすぐそのことに夢中になり、無意識に声に出していたことにも気づかぬまま、自分の幼い身体を短い足で起き上がらせる。

「?どうしたの?」

 すぐそばの少女が不思議そうに話しかける。だが、僕には聞こえなかった。それほど興奮していた。


 だって言いたいことがいっぱいあった。あんな最期で、あいつらと別れるなんて信じられなかったから。

 あんな、あんな終わり方で・・・



 ⸺⸺文句の一つくらい言わないと気が済まないんだよ!!



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