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DRAGON BREAK  作者: グラニュー糖*
4/10

DRAGON BREAK 4

 オレは食べ終わったあと、また図書館に来ていた。やっぱり一人の方が落ち着く……。

 ミーティング内容からしてシリアスな感じだったから時間がかかりそうだし、しばらくは落ち着いて調べものをすることができそうだ。


「……『倒されたダンジョンボスの恨みを今後生まれる命に埋め込み、上手くいけば『ドラゴン』の称号を得た『ダンジョンボス』に体を乗っ取られる。ダンジョンボスもただ強くなっただけなのに狩られてしまった怒りをどこにぶつけようかと怒り狂っていると思われるので、Win-Winの能力だ』……」


 乗っ取られる……。

 怖い。どうしてこんな力がオレになんか宿ってしまっているの?もし乗っ取られたとすれば、カリビアやグドー、シャレットにミゲル、アスターたちを攻撃してしまうかもしれない。


 だってオルテナによれば、『ドラゴンソウル』は『悪意』そのものなんだろう?嫌だ。嫌だ……嫌だ!みんなを傷つけたくない!

 ダンジョンのボスだったら、半端な力を持った人なら軽くひねり潰すんだろう?だってそう書いてあったじゃないか。


 でも逆に考えろ。ダンジョンボスを上からひねり潰したのは『強い者』だ。なら……鍛えれば、『悪意』に耐えられるのでは?


「こうしちゃいられない……!」


 オレは手に持った本を受け付けで貸し出し許可を得て、図書館を飛び出す。

 この考えを実行するには、カリビアに協力してもらわなければならない。これから大変だって話は聞いていたけど……。話だけなら!


「あ!カリビア!」


 ちょうどミーティングが終わったのか、カリビアが出てきていた。周りを見てみるが、4人の姿はない。先に出てしまったのだろうか。


「バルディ!どこ行ってたんだ?あいつらずっと探してて、ミゲルが魔法を使おうかって話になってたんだぞ!」

「ごめん……。あとでみんなに謝っておくよ。……でさ、カリビア!」

「なんだ?」


 カリビアは持っていた書類を部下に渡してこちらに向き直った。


「もしかすると、ドラゴンソウルが暴走するのを抑えられるかもしれないんだ!」

「え?!……詳しく教えてくれないか」

「その前に、あの4人を集めてほしいんだ」

「いいけど。何のために?」

「実行のために」


 __________


 _____


「訓練用の服で来いって……補習か?」


 めんどくさそうに唸るグドーの後ろにカリビアに呼んでもらった3人の姿もあった。みんな訓練用の薄着になっている。ミゲルは少し寒そうだ。

 ここは魔王城の1階。入るときに見かけた、雨天時の訓練所だ。夜で寒いのでここなのだという。


「補習に見えるか?」

「いや……。バルディ関連なのはわかった」

「なら早速始めよう。これから4人は1人ずつバルディと手合わせしてもらう。これは模擬戦だ」

「ええ!?」


 4人が同じ反応をする。……当然の反応だ。


「副隊長はやらないんですか?」

「やらない」

「なんで!?」

「これはバルディのリクエストだ。バルディはお前たちをご所望のようだ」


 少し残念そうに言う。

 今までの仕事の恨みを全部ぶつけられそうで怖いからカリビアの名前を入れなかったって言ったら殺されそう……。


「まずはアスターからだ。言っちゃ悪いが、異形系だからな」

「はい。手は抜かないぞ、バルディ」


 アスターは大きな四角い線が書かれた地面の真ん中に立つ。バトルフィールドとかいうやつなのだろうか。オレはマントを床に置き、アスターの前に立った。


「両者、構え!」


 カリビアが声を張り上げる。頑張っているのか、怒っているような顔になっている。からかっているのか、シャレットがその頭をポンポンとしている……。

 ミゲルの目が「また怒られるのか……」みたいな感じになっていた。


「はじめ!!」

「ア、アア……!」


 アスターの手が大きくなり、爪が凶悪なものに変化する。大きくてフサフサの尻尾も逆立っていた。体が小さいのが救いだ。もしもっと大きかったら、森で魔獣に会った時みたいに腰が抜けていただろう。


 一方オレはドラゴンソウルで鱗まみれの異形と化した左手に魔力を集める。アスターは軍人だし、明日も早いだろうから大怪我を負わせたくない。それでも魔力はアスターに叩きつけられる。

 果たして、アスターは『ダンジョンボス』の力を受け止めることができるのだろうか?


「アスターの能力は『獣神帰依』……。他の獣人よりも強力な力を持っていたから魔王軍にスカウトされたと聞いた」

「詳しいな、グドー」

「背中を預けるために聞いただけだ。よくわかってこそ、最大の力を発揮する。これがチームワークってのにも繋がるんだろ?」

「………………」

「あぁ、そうだ。魔王軍は基本はツーマンセル。……お前たちくらいだぞ、戦場で集合してそのまま4人で行動するのは」

「あ、あははは…………」

「そのせいでいつも僕のパートナーに怒られるんだけどね……」

「ミゲルの部屋及び班の変更、ずっと申請してるんだがなぁ……」

「僕は大丈夫です。いつも副隊長が気にかけてくださってるじゃないですか。それだけで十分です」

「はは!それに、そうじゃないとあのちょっと広い部屋でトランプできねーしな!」

「結局それが目当てか!」


 オレとアスターが戦っている最中も彼らは話し込んでいる。うぅ、カリビアは判断係として呼んできたのに……。


「どこ見てるんだ!戦えって言ってきたのはそっちだろ!」

「ごめん!」


 アスターの鋭い爪が、硬いはずのドラゴンの鱗に包まれた翼に傷をつける。少し中を抉ったのか、飛んだら痛みを感じた。


「ううっ!!」

「バルディ!?止めるか?」

「だい……じょうぶ……」


 ポタ、と血が滴り落ちる。それを見て外野の3人がザワついた。

 大丈夫。大丈夫だから、心配しないで。相手はアスターだもん。アスターもビックリしてる。話を持ちかけてきたのはオレだ。オレが止めてどうする!


「手加減したほうがいいか?」

「いや、大丈夫。そのまま続けて。ドラゴンソウルのせいで中で燻る『ダンジョンボス』のイキってる魂を力でねじ伏せるためだ!」

「それが目的か!」


 我が意を得たりとアスターがさっきまでと同じ速度で迫る。ドラゴンソウルの力がそれぞれ個人で違うなら、アスターという獣人より弱いということが発覚する。どうかそれで解決してくれたらいいのだが……。


「………………!!」


 少しピンチになって、中の魂も本気を出そうとしているのだろうか。集中力が桁違いだ。アスターの動きがゆっくりに見える。


「ヴゥ……アアアッ!!!」

「……!ダメだ、やめさせろ!!」


 グドーの声が飛んできた。でも、それは耳の外の意識が受け取った情報。オレの頭は、『攻撃する』こと一択だった。


「ヤベ……!」


 アスターも危険を察知したのか、大きな目が見開かれる。が、オレの動きは止まらなかった。このまま行ってしまうと……アスターが……!!


 ガキィィイン!!


 金属音がした!

 魔力で強化されて強くなったオレの爪を受け止めたその鉄の塊は、どうやらカリビアが召喚した盾だったようだ。


「……間に合ったか」

「アスター!おい、大丈夫か!?」


 グドーやシャレット、ミゲルがアスターに駆け寄る。アスターは盾のおかげで無傷だったようだ。


「なんとか……」

「バルディ」


 カリビアが歩いてきた。オレはアスターを殺しそうになったことで手だけではなく体全体が震えていたが、頑張ってカリビアの方を見た。


「それが、お前が言っていた『ドラゴンソウルの暴走』か?」

「……だと思う」

「これは……重い問題だな」


 カリビアは腕を組んで考え込んでしまった。


「また暴走したら盾を飛ばしてやる。次はミゲルだ。いけるか?」

「はい。できるだけ遠距離攻撃を選びます」

「ふ、それが最善だ。オレは問題について考えている。好きなタイミングで始めるといい」

「わかりました。……いける?バルディ」

「…………うん……」


 ミゲルはオレと同じくらいの身長で、おそらく年齢も近いだろう。髪の色は一緒で親近感湧くし、妹という家族もいて、いわば『優等生』という感じだ。……でも、なぜ軍を選んだのかな……。


「バルディ?」

「…………ミゲルはさ、怖くないの?」

「え?」

「戦ったら、死ぬかもしれないんだよ?」

「…………それは、とても怖いことだね」

「じゃあなんで……!」

「……。妹の苦しみと比べたら、全然怖くないし、痛くない。いつか神様が『頑張ったね』って幸せをくれるかもしれないから」

「……『神様』……?」


 ミゲルは悪魔らしくない。人間じゃないのはわかるけど……なんというか、賢者みたいだ。


「いくよ」


 ミゲルは皆が線の外からさらにもう少し離れたところに行ったのを確認して、オレに話しかけた。


「うん」

「風は傷が痛むと思うから……氷と炎でいくね!」

「傷の痛みが火傷で無くなってくれたらいいんだけど……」

「それは僕にもわからないかな」


 ミゲルは困った顔をしながら炎と氷を飛ばした。手のひらサイズの火の玉と、同じくらいのつららだ。さすが軍にいるだけあって、とんでもないスピードだ。気を抜いたら直撃しそうだ。


「さっき、不利になったときに暴走したかのように見えたから、耐久テストみたいな感じにするね。頑張って耐えてね!」

「う、うん」


 優しいかと思ったらこの男、かなり鬼畜なのがわかった。

 ジワジワとオレの体力を削っていく。細かいのがまるで吹雪のように絶え間なく飛んでくる。腕を顔の前でクロスして防御するので精一杯だ。しかもどんどん速くなってきて、大きなものを避けるのはまだ楽なのだが、砂利みたいなサイズのものを大量に飛ばしてくるのだ。無理。


「う、ううう……!」

「張り切ってんなー、ミゲルのやつ」

「ミゲルはこういうとこがあるからなぁ……。アイツはアイツでちゃんと『悪魔』だ。知識欲が前に出て、さらには相手にも承諾を得ている。……これは、また暴走するか止めたりしないと止まらないぞ……!」


 シャレットとグドーの会話をアスターは聞き流しながらこちらを見ている。


「…………。ん?」

「何かわかったのか?」

「副隊長……。バルディの顔、見てください」

「顔?……なんだ?あの黒いのは……」


 二人の目には、黒色の紋様のようなものがオレの頬に現れているのが見えている。もちろんオレは自分のことなのでわからない。だが、また耳の中がボーッとしてきて、みんなの声がボヤけてきた。


 バチバチバチッ!

 ジリジリ……!


 冷たいのと熱いのが同時に来たり交互に来たりしている。オレは今後もし誰かと戦うときが来ても、こんなに上手に複数の魔法を撃つことができる悪魔に出会うことはないだろうと思った。


 ……でも……ああ、やめて。やめて……!


 息が浅くなる。体が熱くなる。

 さっきのが………………来るッ!!


「ヴ、ア……アアアアア!!」

「出た!?」

「そこまでだ!」


 また盾が飛んできた。が、オレのドラゴンソウルはさっきのを学習したのか、盾の上に飛び乗った!


「ええっ!?」

「……………………囲め…………」


 突然オレの周りを囲むように、魔力の結界のようなものが現れた。

 ドラゴンソウルは『術』から生まれたものだ。『術』についてはオレも少しは知っている。術と術は仲が悪く、磁石の同じマークようだ。絶対にくっつかない。なので……。


「ヴガアアアアアアア!?」

「バルディ!?」


 グドーが駆け寄ってきた。その時に指をパチンと鳴らし、オレの周りの結界を解除したのを見逃さなかった。


「あ……ぁ……」


 糸が切れたかのようにオレは倒れそうになる。しかし心配して魔法を止めたミゲルと、真っ先にやってきたグドーによって地面に叩きつけられることはなかった。


「バルディ……!おい、バルディ!」


 ブスブスと黒煙を上げるオレの全身。ミゲルが回復の魔法をかけてくれたおかげでオレはすぐに目を覚ました。……煤は取れないが。


「……は、は……。これで……傷口は、焼けて治ったかな……?」

「……。軽口を言えるくらいなら大丈夫そうだな」

「えへへ……グドー、ありがと……」

「いや……。俺の勉強不足だった。まさかお前にこんな余計な傷を負わせちまうとは……」

「……じゃあおあいこだね」


 にこっと笑ったオレにつられてグドーも笑う。ミゲルは何も言わずにもう一度回復魔法をかけてからカリビアの元へと向かった。


「副隊長」

「何かわかったか?」

「はい。やはり、ダメージの蓄積によるものだと思います。おそらく、中の『ドラゴンソウルのもう一つの魂』が『死の危険』を感じて、敵対する者を殺しにかかる……というものだと思います」

「……そうか。ありがとう、ミゲル」

「いえ。たまには魔力を発散したかったですし」

「……ふふ。ミゲルにもこんな一面があったとはな。次は……」


 カリビアはグドーの方を見る。……が。


「俺はパス」

「なぜだ?」

「やりすぎるからだ」

「ふむ……。確かにこの中では一番強いからな。それに、さっきのを見て相性が悪いのがわかった。いいだろう。なら次は……」

「オレっすね〜!手加減しないぞ〜この〜」


 上機嫌なシャレットがこちらに近づく。オレは彼らが話していたときにマントで煤を拭き取っていたので少し綺麗になっていた。


「あー……終わったら洗わねーとな、それ」

「……そうだね」

「何度もごめんな、バルディ。これで最後だ」

「いいよ。試したいって言ったのはオレだもん」

「そうか。……オレは多分知ってると思うが、剣で戦わせてもらう。近接だ。手加減はいらないからな」


 そう言ってシャレットは腰に装着していた鞘からスラリと長い剣を抜いた。


「シャレットの剣術は目を見張るものがある。素早さと火力を兼ね備えた優秀なバランス型だな」

「あは、いつもふざけてるのに強いから扱いに困るってやつですか?」

「そうだな」

「あら、反応が適当になってる……。眠いのかな」

「お前たちの相手をしてると、疲れて毎日眠くなる」

「あはは……もう少し静かにすることを検討しておきまーす……」


 青緑色に輝く剣……。その光に目を奪われる。

 肉を切るときの鋭くて耐え難い痛み。記憶にないはずの苦しみがオレを襲った。


「う……あ……!」

「ちょ、バルディ!?何もしてないって!」


 シャレットが構えるのをやめて手を伸ばして近づく。

 シャレットの顔がボヤけて、剣の鋭い光だけが強くなっていった。


 気持ち悪い。吐きそうだ。頭がクラクラして、足がガクガクと震える。過呼吸になって、今はシャレットに近づいてほしくないという気持ちでいっぱいだった。それでも優しい彼は近づいてくる。


「いや、だ……こないで!いたい、いたいよぉ……!きらきらしてる、の……いやああああ!!!」


 オレは頭を抱えて叫ぶ。

 痛い、痛い、痛い!頭が張り裂けそうだ!シャレットは何もしてないだろ!さっきミゲルが回復してくれただろ!なのになんで!!


「下がれ、シャレット!」

「戻れ!それ以上はダメだ!」


 シャレットは何が起こっているのかわからないようで、グドーとカリビアの声が聞こえないのか、止まってはくれたがおぞましいものを見るかのような絶望したような顔をしていた。


「なんだよ、これ……。なんでだよ……」


 いつまでも動かないシャレットを強制的に動かそうと全員がこっちに来る。他のみんなは大丈夫なのに、なんでシャレットだけ……?


「シャレット!目を覚ませ!」

「い、意味わかんねぇよ……!なんで暴走したんだよ……!」


 アスターがシャレットに話しかける。しかしシャレットは混乱しているのか、アスターの言葉に答えてるようには思えなかった。


「う、ぐ……!頭が、痛ぇ……!ううう、ああ……!」


 シャレットは頭を抱えて仰け反った。

 オレはまだしも、シャレットを苦しませるのは許さない……!


「アスター、グドー!シャレットを医務室へ!バルディはオレとミゲルが何とかする!」

「俺も!?」

「アスターだけでは心許ないからな!きっと重いだろう!」

「くそ……!……背負うのは少しキツいな……。ちょっと辛抱してくれよ、っと!」


 グドーはシャレットを……お姫様だっこした。


「それで行くの……?」

「ぐあああ!?痛いっ、痛い……!」

「暴れんな!アスター、剣持ってこい!鞘はほら、外せ!」

「わかった!」


 アスターはシャレットの運動用の服に付属されているバックルループにねじ込まれた鞘を取り外し、シャレットを引き剥がしたときに落としていた剣を取りに行った。


 アスターが剣を手に取ってグドーの方に走っていく。アスターの手に剣が渡っても剣が光り続けていた。しかし、アスターが階段の踊り場を回って姿が見えなくなると、頭痛は嘘のように無くなった。


「……う、うぅ……」

「急に大人しくなった!」

「シャレットに問題があるのか……?でも今日はずっと彼と居たはず……。なぜ急にドラゴンソウルが暴走したんだ……?」

「…………剣…………」

「ん?」

「剣が……ダメなのかも」

「……だが、オレも剣を使うぞ?」

「カリビアが最初に飛ばしてきたのは槍じゃん」

「そうだったか?……そう、だったな」

「剣が……すごく光って……シャレットの顔がボヤけて見えて………………。シャレット!シャレットは大丈夫なの!?」


 カリビアとミゲルが顔を見合わせた。


「今は何とも言えない。彼はおそらく今日はもちろん、明日も経過観察で医務室で眠らされるだろう」

「そんな…………オレのせいで…………」

「とりあえず、模擬戦は終了だ。今日はもう休め。……っと。そういえばバルディの部屋を用意していなかったな」


 ミゲルにまた回復の魔法をかけてもらい、カリビアの肩を借りて立ち上がる。ミゲルがマントを持ってきた。


「はい、どうぞ。このまま持ってようと思ったけど、心が不安定ならこういうのは持っていた方がいいよ」

「ありがとう……」


 カリビアが案内してくれるということでついていく。

 ミゲルは「夜、魔王城外に出ることは許されていない。ミゲル、お前は先に部屋に戻っていなさい。シャレットの様子を見に行ってもいいが、外には出ないように」とのことで、階段に向かっていった。


「オレはどこにいたらいい?」

「魔王城の裏には生活施設があるのは知っているよな?」

「あのデカイやつ……。そこに行くのか?」

「ああ。ごめんな、軍の方はカツカツなんだ」

「魔界を守るためなんだろ」


 カリビアは目を細め、魔王城の扉に手をかけた。扉の左右にいた兵士はカリビアだからという理由で何も言わなかった。


「橋を渡り、塀を出て、後ろに回る。少し遠いが我慢してくれ」

「なんで門と城の間に橋があるんだ?」

「さぁな。堀……ってやつだと思うぞ。……オレは飛べないけど、バルディ、お前は飛べる。どうする?ついていったほうがいいか?向こうに話は通しているが」

「カリビアも疲れてると思うから、先に戻ってて。大丈夫、オレは帰らないよ」


 カリビアはオレから離れた瞬間に飛んで帰ってしまうと不安なのだろう。だが、オレはみんなが、シャレットが心配だ。帰るなら、シャレットの目が覚めてからだ……。


「ふ……それなら安心だな」

「……じゃあ、また明日」

「明日な」

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