表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DRAGON BREAK  作者: グラニュー糖*
1/10

DRAGON BREAK 1

 あなたは自分の手に負えないと思ったものを持ったことがあるだろうか?


 たとえば、あまりにも高すぎる『地位』。『巨万の富』。片付けるところがない『武器』。


 それを使って、その結果が「お前のせいだ」と言われても、これがやったからと言えないだろう。なぜなら、自分の物のくせに使いこなすことができないからだ。


 世間には『身の丈』という言葉がある。生きる者、全てが『自分は優れたものを持つべきだ』と思うだろう。しかし手に入れたあと、あなたはどうするのか。




 ところで、オレには『竜の呪い』がある。人はそれを『ドラゴンソウル』と呼ぶ。だがそれをただの呪いとしか思っていない。理由は簡単。使わないからだ。

 使わない、過ぎた力。それはただの『重すぎる責任がある呪い』だ。これを言い換えると、『自分の手に負えないもの』だ。


 オレはこの得体の知れない能力の起源や資料について調べることにした。悪魔の人生は長い。その長い人生、ずっと不安で生きていくなんてバカバカしいからだ。


 完全に形が変わってしまった左手を見る。肘より上までドラゴンのような鱗に覆われ、手のひらなんて完全にドラゴンだ。


「…………」


 砂のような色のマントを翻す。まずはどこに行こうか。

 そうだ、図書館なら何かあるかもしれない。図書館は魔王城にあるのだが……あぁ、魔王軍と鉢合わせたくない!あいつらはいつだってそうだ。この能力のせいで力加減ができず、いつも問題を起こす。その問題の中心にいつもオレがいるので、顔見知り状態になっていたからだ。


 そんなオレが魔王城に行くとなれば、『魔王城の何かが破壊されてしまう』と思われても仕方がない。オレだってどうなるか少し不安だからだ。


 ……まずどうしてオレが『ドラゴンソウル』の名前を知っているのかって?それは、誰でも知っているからだ。昔話のように地域で語り継がれ、覚えられ続けている。一時、『ドラゴンソウル』の被害者の数がドンと増えた時期があったそうだ。その数は、その『ドラゴン』と呼べる魔物が狩られた数と一致する。そのあともポツポツと『ドラゴンソウル』の悪魔が誕生しているので、忘れたくても忘れられないのだ。


「……魔王城まで飛ぶか」


 この世界には飛べる者と飛べない者がいる。オレは飛べるのだが、ペンギンのように見かけだけの翼の場合の悪魔もいる。

 魔力で浮き上がる者もいるが、人間ということを捨てたくなくて歩く悪魔もいる。

 オレは純粋な悪魔として生まれたので、問題なく飛ぶのだが。


「いつ見ても森だらけだ……」


 水源と呼ばれるものはこの魔界には少ない。イリスの川と泉くらいだろうか。あとは海だけだ。さすがに『海』などという危険地帯に好き好んで行く奴はどうかしてる。


「………………」


 しばらく飛んで、眼下に魔王城が見えるところまで来た。空中で停止し、背中から生えた赤黒いドラゴンの翼が一度バサッ!と音を立てる。


「『武装乱舞・穿』!!」


 ブン!と風を切る音がした。キラリと光るものがこちらに飛んでくる。槍だ。オレは左へと避けた。


「……『魔王軍副隊長』……『カリビア・プルト』か……」

「止まれ、『ドラゴンソウル保持者』……『バルディ』!」


 そう、オレの名前はバルディ。ただのバルディだ。


「こんなところに何しに来た!」


 彼は飛べないのか、地上から叫ぶ。


「…………」


 オレは地上に降りる。素直なオレを見て、カリビアは驚いた。


「降りてくるんだな」

「別にいざこざをしに来たわけじゃないし」

「………………」

「………………」


 オレとカリビアは互いに睨み合う。カリビアはただ『魔王軍』としてこの城を守るために外に出てきたのだろう。そんな彼からすると、あちこちで面倒ごとを起こしているオレが、城にイタズラをしに来たのだと思うのは当たり前のことだ。


「……何かをしに来たのではなさそうだな。いいだろう、好きにするといい」

「一つ頼みがある」

「なんだ?」


 カリビアは後ろでリボンで束ねた茶髪を揺らした。いつも見てきた人とは違うが、恐らく軍服だ。


「何だ、その目は」

「ああ、いや……。コホン。図書館に入らせてほしい」

「何か調べものか?」

「これはお前ら魔王軍にも利益がある話だと思うんだが」

「…………ほう?」


 不敵な笑みを浮かべて話すが、内心ビクビクだ。何せ、オレは丸腰。それに比べ、カリビア・プルトは……。


 通称、『武器の魔神』。


 魔界のはみ出し者のオレでさえ、魔界で光り輝く魔王軍の情報を知っているくらいだ。


 ヤツは魔法で数多の武器を召喚させることができ、まるで自分の手足のように一度に何本も動かすことができる。さっき飛んできた槍だってそうだ。槍自体には全く魔力を感じられなかったが、きっと本人はとてつもない魔力を秘めているに違いない。


(Not! No, No!! He had no magic power at all. Rather, he was a human being . But now no one thinks he is human at all. Because if he were gone, no one would be able to protect this world. We cannot let him go. That is why we have to keep an eye on him.)


「……わかった。ついてこい。だが…………」


 オレに背を向け、城に向かおうとしたカリビアが振り向く。


「壊すなよ」

「当然だ。感謝する」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ