はじまりのはじまり
今回はいつもより増して説明口調な気がします。
地理の授業で習ったことを吐き出しているだけですから、自分的には復習になるから嬉しいんですが……
皆さんにとって面白くなかったらごめんなさい。
院長から届いた嘆願書にはこうあった。
「我らが親愛なるロサ王妃様へ
数ある嘆願書の内から私のものをお読みになっていただき、大変ありがたく存じます。
私がお願い申し上げますのは、孤児院への支援金の増額です。
ただいま、王国にある全ての孤児院の財政は逼迫しております。
孤児院の数は変わらないにもかかわらず、農村から送り出される子供の数は毎年のように増えているからです。
今年新たに入った子供は私のところだけで約五十人です。
私の経営しているところも含め、多くの孤児院で食糧、水、寝床、衣服など、あらゆる生活必需品が不足しております。
毎月の孤児院への支援金を二万ミンほど増額していただきたく思います。
王国の子供たちのために、前向きな検討をお願い致します。
ミュンヒ王国第八孤児院院長モノー」
これを読んで真っ先に思い出したのは、私の政治理念だった。
私は我が国を夜警国家にするつもりはない。
"No one will be left behind"
(全ての人に救済を!)
というモットーを掲げる積極国家にするつもりだ。
なのでモノー院長の嘆願を見過ごすわけにはいかなかった。
これを読んだ後すぐさま王城勤めの官僚から孤児院の現状を確認すると(我が国は前世で言えば中国くらいの領土があるにもかかわらず)、孤児院は計十五しかないらしかった。
しかもどこも子供で飽和しており、生活必需品も先生の数も足りていないというのだ。
何とかしたいなぁ、と思っていくつか政策理念を打ち出した。
一つ目に、子供が正規の仕事を得られるようにすること。
二つ目に、子供が高等教育を受けられるようにすること。
三つ目に、孤児院で働く人の給料を上げること。
四つ目に、都市部と農村部の格差を是正すること。
一つ目の政策理念の目的は、子供がある程度の歳になったとき、独り立ちしやすい社会環境をつくるためだ。
ゴミ山での仕事や靴磨きなど、インフォーマルセクターで働いても、低賃金のせいでいつまで経っても貧しいままだ。
何かしらの能力を身に付け、正規の職業に就くことで国からの保護も受けられるようになるし、より人間らしい生活を営めるようになるのだ。
二つ目の政策の目的は、正規の職業に就くための能力を身に付けるためだ。
知識産業や研究部門では学歴は必須条件だし、論理的思考ができることはその人の世界を広げることに直結する。
三つ目の政策の目的は、特にない。
「心の余裕は気遣いを生む」と私は信じているから、まずはスタッフが精神的余裕をつくって欲しいと思う。
四つ目の政策は、最も難易度が高いものだ。
中国の西部大開発を参考にしたいが、その成功例の重慶はサンシャダムのおかげで発展したようなものだ。
企業の誘致は生産品を運べる水運など、交通網を整えることが前提になる。
まぁ今できるのは上三つの政策だから、四つ目は追々やっていきましょう。
こういう嘆願書は大体ロサに届きます。
ハウゼンの国民からの好感度はたいして高くないからです。
(しかしロサに関してとても同情はされています。)