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公務員試験②

ハウゼン視点です。


冒頭の部分は市川拓司さんの表現の仕方を真似させてもらいました。

似ているでしょうか?



ロサの部屋に入ったとき、真っ先に飛び込んできたのは彼女の鎖骨だった。

くっきりと浮き出た顎のラインと鎖骨が、完璧な調和を生み出していた。

ツンと尖った鼻は彼女の気の強さよりも、ただ美しさを強調させるものでしかない。

起きてから紐でくくったのだろう、後ろで長い髪を一つくくりにしていた。

艶のある黒髪がベッドからこぼれ落ち、白い羽毛布団とのコントラストが美しい。


「神々しいな」


と思わず言ってしまった俺は、多分悪くない。

彼女の容姿を見て見とれない人はいないし、彼女の心に触れて感動しない人はいない。

絶対的なものに対して嫉妬だったり憎悪だったり、負の感情を抱くことは難しい。

ただただ言葉を失うほかない。


そして今、彼女の笑顔は俺に向けられている。


彼女はどうやら俺がネロのことを言っているのだと勘違いしているが、そんなところもかわいい。


もうかわいいしか言えない。




お願いをされてしまった。

『公務員制度を作りたい』ひいては『試験を作らせて欲しい』のだそうだ。


ロサは多忙だ。


国の財政の健全化が為されたことで(ロサがやった)、金やモノの出入りは逐一記録されるようになったが、なにぶん数字に強い人がいないため、ロサ自身が財政管理を全て請け負っているような状態だ。

他にも王妃としての式典出席、同盟国などとの外交、国家主導の事業の進捗管理なども彼女が担当している。


でも彼女は『大丈夫です、全て手を抜かずに頑張りますから』と言うのだ。


逆なのに。

仕事を増やせばもっと忙しくなるのだから、誰かに代わりにやってもらって休めばいい。

なんなら俺を使って欲しい。

だが俺が拒否しようが命令しようが、彼女は一度決めたことはやり通す。

渋々、


「いいよ。

でも試験問題の監査はさせてもらうよ。

数学界の重鎮とも言われるエテン殿にもしてもらうから、もしエテン殿がもの申せば外部に問題作成を委託する。

それでいいかな?」


と言って承諾してしまった。

するとロサはぱぁっと顔を輝かせて


「ええ!もちろんです!

明後日には問題の原稿を提出しますね」


と言った。

まるで、ロサが本当に俺のことが好きなのでは?と勘違いしそうな笑みを向けられ動揺したが、やんわりと休むよう伝えた。


「…………急がなくてもいいんだよ?

エテン殿にも監査の旨をお伝えし、来ていただかねばいけないし」



そう会話してからおよそ36時間後。

既に自室に問題の原稿が届いている。

俺はロサの本気に再び、舌を巻いていた。


エテン殿が到着してから監査を始めようと思っている。


「ほっほっ、エテンじゃ。失礼しますぞ」


老年の人に特有の、しゃがれたような、でもよく通る声が聞こえ、返事をするまもなくエテン殿が部屋に入ってきた。


「エテン殿、お越しいただき感謝する。

しかしここは王の寝室だ。返事があるまで入らぬよう気を付けてくれ」


仮にも王の部屋だから、ズカズカと入ってきていいはずがない。


「ほぅ?

この儂が二十歳の青二才に敬意を払わねばならないとでも?

おぬしが偉業でも成したなら別だが、王として何もしていないやつに言われたくないわ!」


俺が王にふさわしくないという主張は理解できるが、エテンが威張れる理由にはならないだろう、と思ったが口には出さず、ロサの手書きの原稿を渡した。


エテンは無造作に読み始めた。


ロサが忙しくしている間、ハウゼンは暇していることが多いです。

ロサの精神年齢は実年齢よりも十歳以上上だから、ある意味当然です。

ハウゼンが経験を積んで「絶対記憶」の能力を使えば、あと十年もすればロサに追い付くかもしれません。

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