学校を作りたい②
学校づくりは簡単ではないでしょう。
やみくもに校舎を建ててそれで学校が完成するなんてありえません。
夜になってようやく感謝する人々から解放された私は、孤児院で考えていた、学校建設についての具体的な検討を始めた。
「無償で通えるようにしましょう。さもなくば、貴族とか、お金持ちしか進学しないでしょうし……」
今でもミュンヒ王国に私が考える高等部に該当する施設は在るにはある。
ただ、その施設は主に貴族の子息あるいは令嬢同士の交流を目的としており、私の目指すような、実生活や専門研究で役に立つような知識や考え方を教える場所ではない。
私も五年前まで通っていたけれど、授業の内容についての話よりもお世辞を多くの聞いた気がする。
特に印象的だったのは、アセチレン侯爵子息とその婚約者のフルオロ侯爵令嬢と平民育ちのブロモ男爵令嬢の三角関係だ。
私も少し介入したけれど、この話は別の機会で。
さて。
私は、作った学校の門戸をできるだけ開放したい。
貴族だけでなく全国民に通ってほしいのだ。
理由はいくつかある。
一つ目。
孤児院でも話した通り、子供たちの食料事情を改善したい。
つまり、給食制度を導入して子供の貧困率を下げたい。
二つ目。
識字率の向上。
字を書けること、読めることは自身の世界を広げる。
三つ目。
この国の産業発展のため。
学校で一生懸命勉強してもらい、自分の本当に進みたい進路を選択してほしい。
以上、三つの目的に沿って学校を作ろうと思う。
場所はどうしよう。
中国ほどの国土があれば、学校はそれを網羅しようとすると、数百は必要だ。
しかしそうすると教員の数が足りない。
…………!!
今気づいたが、そうだ、教員がいない!
今の貴族学校のお飾り教員ではダメだ。
私の考えに近い人を集めなければ。
公務員制度を作ろう。
人を集めてちゃんとした教員を私が育てよう。
あるいは私は教員を育てる人を育てて、その人たちに教員を養成してもらおうか。
まぁいい。
細かいことは後だ。
早速公務員を募集することを告知して、私は公務員試験でも作りましょう。
「母上。いいですか?」
扉の向こうから男の子のかわいい声が聞こえた。
「いいわよ、ネロ。入っておいで」
そう返事すると、私の侍女が扉を内側に開き、息子がてとてとと入ってきた。
私は今の私の顔が王妃としてふさわしくないことを知っていたが、無理に表情を引き締めなかった。
「母上……」
と君が言った。
「何かな?」
「………今夜も一緒に寝ていいですか?」
「……」
心臓がきゅうっとなってしまって咄嗟には答えられなかったが、息子のうるうるしている目を見て、声を絞り出した。
「ええ!当然いいわよ。今日は昨日の続きを読んであげましょう」
「やったー!三匹のヤギのがらがらどん!!」
その声を聞き、ササッと侍女たちが動くと、すぐに目当ての絵本がベッドの上に用意された。
その様子を見て、私は一応侍女たちに釘を刺しておいた。
『あーーあーー、聞こえてる?
今あなたたちの心に直接話しかけているのだけれど』
書いていて
『もしかして教員がいないのでは?』
ということに気が付いてしまいました。
ミュンヒ王国の人口はおよそ三千万人です。
平均年齢が六十歳のとき、同い年の人は全土で五十万人。
そのうち学校に行くのは一万人いると仮定して、1人の先生が40人を担当できるとすれば、250人は先生がいないと成り立たちません。
また、六年制であれば250×6人の教員数を確保したいところです。
ということで、学校づくりは一旦置いておいて、次から教員の養成です。