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第3話 めぐりあい異世界

 目を覚ますと頭上には見覚えのない天井が広がっていた。昨日は加盟した勢いで基地内に泊めてもらっていたのだ。


「知らない天井だ」


「お兄、一人でアニメのパロディやってるのはちょっと痛いよ・・・」


 妹に見られていた。しかし、自宅以外で目を覚ましておいてこれをやらないというのは逆に失礼であろう。こういう遊び心は男に生まれた宿命なんだ。だから、逃げちゃ駄目だ。


「あら、もう起きてたの?朝ご飯もう少しでできるからちょっと待っててね」


 昨日の少女は優しい笑顔で俺たちの部屋を覗いてた。寝床を確保して貰った上にご飯まで用意してくれるなんて、本当に優しい人だ。10分くらい待つとご飯が食卓に運ばれてきた。


「「「いただきます」」」


 俺たちは少女の作った朝食を食べながら雑談に興じる。


「そういえば名前を聞いてなかったな。何て呼べばいい?」


 一宿一飯の恩人の名前を知らないというのはいささか失礼な話だ。早めに聞いておこう。そもそも、同じ組織に所属するというのに名前を聞いていなかったのがおかしなくらいだ。


「あ、そういえば名乗ってなかったわね。私はアイカよ。よろしくね!」


 彼女の名前を聞き、俺達兄妹も慌てて自分の名を名乗る。ニコッと笑った彼女の顔は俺たちに友好を示していた。


「なあアイカ、俺たちはここで何をすればいいんだ?学校とかの入学手続きもしてないし・・・」


「そうねえ、まずは朝礼に出ないといけないわね。そのあとは既定の仕事に取り掛かるって感じだけど・・・とりあえず早めに食べて準備しちゃいましょっか!」


「朝礼?まあいいや案内任せるよ」


 俺たちは食事を済ませると、服に着替え(この世界での制服をシロガネが用意してくれた)朝礼に向かう。毎日行われるという朝礼に朝の弱い俺たちは少し心配になった。


「それでは体操を始めます。同士の皆様は既定の位置にお並びください。新入りのお二人は男女に別れて列の最後尾を既定の位置とします。」


 朝礼台の上で女がゆっくりとアナウンスをする。艶のある黒い長髪をたなびかせて話すその姿はさながら女王のようであった。


 俺たちが既定の位置に着くと体操の音楽が流れ出した。


「1!2!3!4!」


 体操は主に眠気覚まし用のものであり、軽くこなすことができた。問題はその後の「二分間称賛」だ。体操が終わった俺達は男女に別れて大きな部屋に連れていかれる。その後、室内の大画面にホモビデオ(女性はレズビデオが映されているらしい)の濡れ場が映され、2分間ひたすら同性愛を称賛し続けなければならない。周囲からは本気で同性愛を崇拝していると思われるような熱い称賛の言葉が聞こえてきて気がどうにかしてしまいそうだった。


「俺もこんな肉体になりたいぜ!」


「こんな男に掘られてー!!」


「や、やべえ、思わず手が良からぬ位置を扱いているぜ・・・」


 こいつら正気か?絶対狂ってるだろ・・・むしろ俺が狂ってしまいたいよ・・・


「それでは皆さん。仕事にとりかかってください。本日の朝礼は第二階級セカンドクラス総合監督者のサヤカでした」


 女性のアナウンスとともに密室に閉じ込められた男達は解放され仕事へ向かう。俺は自分の仕事を張り紙で確認し、記されていた位置へと向かう。どうやら俺の仕事は街の清掃のようだ。


「それじゃあ皆そろったことだし始めるかー」


 リーダー格の男が呼びかけるとみんなは素早く仕事にとりかかった。俺は清掃の経験などなかったが、普段筋トレに励んでいるおかげで負担はあまり大きくない。やっぱり筋肉は正義だな!


「お、新入り!いい身体してんじゃーん」


 黙々と仕事をこなす俺の臀部を突然リーダー格の男が優しく愛撫する。


「え!?ちょっ!?はあ!??」


 突然の出来事に困惑してしまう。こういうセクハラがあることはドラマなどで知っていたが実際に自分がされるとは思っていなかった。同性愛を推奨している世界だから自分がされる確率は低くないはずなのに油断していた!


「ちょっとせんぱーい!新人可愛がるのもいいっすけど俺のことも忘れないでくださいよー!」


 茶髪の男が茶化すようにリーダー格の男に抱きつく。BLか!?まあ、事実そうなんだろうけど。気が付くと他の男たちもいちゃついている。男だけの空間で行われる密度の高いBL行為に頭がクラクラしてくる。最悪だ・・・今すぐにでも逃げ出したい。しかし、仕事のサボタージュには重い罪が課せられるとのことなので俺は仕方なく清掃をこなし、家路についた。


「ただいま」


「ぜえ、ぜえ、お帰りお兄!」


 咲良ちゃんが息を切らせて俺を出迎えてくれた。シロガネの手引きで家は用意されていたがかなり小さい。少なくともラノベの異世界転生者が住むような家ではない。


「そっちはどうだった?」


「百合通り越してレズってるやつらいて疲れた・・・体力的には問題ないはずなのになんかもう無理寝たい添い寝しろ」


 咲良ちゃんは早口でまくし立てる。俺はそうだなと小さくうなずき寝巻に着替えようとした瞬間、インターホンが鳴る。扉を開けるとそこに立っていたのはアイカだった。


「アンタたち!シスター同盟の皆で歓迎会をやるから来なさいな」


 歓迎会か・・・確かに異性愛者が生き辛そうなこの世界では志を同じくする仲間との交流は大切そうだ。ここは行っておくべきだろう。


「咲良ちゃん、疲れてるところ悪いが歓迎会に参加しよう。この世界の異常さはお前も今日味わったはずだ」


「そうだねお兄。仲間も作らずにこの世界で生きていくなんて不可能みたいだね。もちろん私にはお兄さえいればいいけど仲間が多いに越したことはないよ・・・」


 物わかりのいい妹を持ったなあと素直に感動する。俺たちはアイカの案内に従い昨日の基地までたどり着いた。これからは道を覚えておくようにと言われたので慌ててメモを取ったが、道は簡単だったのですぐに覚えられた。


「みんなただいまー!昨日言ってた新人を連れてきたわよー」


 昨晩俺たちが寝泊まりしていた基地の中央には3人の男女が座っていた。


「あ、えと俺は桐ケ谷 和希です。信じられないかと思いますが妹の咲良ちゃんと一緒に別の世界からやってきてて、その・・・」


「色々事情あるらしいけど私たちと志は同じだから安心して」


 うまく説明できず口ごもっているとアイカが代わりに事情を説明してくれた。


「俺はブライアン、シスター同盟では主に情報処理を担当してる。ちなみに両刀だから同性愛に目覚めたら頼ってくれてもいいぜ?よろしくな!」


 浅黒い肌の男、ブライアンの態度は気さくそのものだった。彼の両刀発言に少し面食らったが気のいい人な様子だから警戒は必要なさそうだ。


「私はカオリ。ここでは基地の維持を担当しているわ。私もレズビアンなんだけど人の愛を制限するこの世界の法律には納得できないからここにいるのよ。よろしくね!」


ブロンドのふわりとした長髪で大人び様相の女性、カオリさんはおっとりとした口調で自己紹介をした。かなりマイペースな性格であることが喋り方から伺える。 


「私の名はレナ。逃走経路の作成とやむを得ない戦闘は私の役目だ。よろしく」


 顔のほとんどを黒い包帯で覆っている女性?レナは無機質な棒読みで自己紹介をした。


「改めて、私はアイカ。ここでは一応リーダーをやっているわ。改めてよろしくね」


 ここにいる皆は信用していいのだと自己紹介を聞いただけなのになぜだか分かった。


「俺達、この世界でも何とかやっていけそうだな咲良ちゃん!」


「そうだねお兄。すべて終わらせて堂々といちゃつこうね!」




***




アイカ

異性愛者組織シスター同盟を立ち上げた張本人でありリーダー。この世界では所謂反社会的な娯楽とされる少女漫画や恋愛映画などが好き。髪はミルクティー色。戦闘力は一般の白服警官と同じくらい。


ブライアン

シスター同盟の中で唯一白服隊員としても働いている。彼自身は男も女も両方愛せる両刀で、白服同士での恋愛なども楽しんでいる。その気さくな性格からか白服内ではアイドルのような扱いをされている。射撃の能力が高い。髪型は坊主。


レナ

シスター同盟最強の戦力。顔をほとんど黒い包帯で包んでおり見える部位は片目だけ。淡々とした喋り方で中性的な声をしている。白馬の王子様に憧れているが、本人はそのことを恥ずかしがっている。髪は黒髪。


カオリ

本人はレズビアンだが、幼いころから可愛がっていたアイカがいることや、人の好みを規制する社会に不満を抱いているためシスター同盟に加盟している。戦闘で使うオリジナルの武器は彼女が製作している。

今話から本格的に物語が動き出します。

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