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第1話 妹異世界に立つ!!

 周囲は真っ黒い闇に包まれている。ここはどこだ?俺は確か、妹を助けて・・・


「咲良ちゃん!!無事か!?」


 俺は隣で横たわる咲良ちゃんの肩を強く揺する。咲良ちゃんは確か俺の後を追って自殺を試みていたはずだ。シャープペンシルごときで人が死ぬとは思えないが痛みによるショック死という線もある。俺はなぜか助かったから良かったが、これで咲良ちゃんが助かっていなかったら大変なことだ。


「んー?むにゃむにゃ・・・あと5分・・・」


「言ってる場合か!!!」


 咲良ちゃんは俺の怒鳴り声にビクッと体を跳ねさせて飛び起きる。


「うわー!急に大声出さないでよ!ってお兄!?」


 咲良ちゃんは目を丸くして驚いている。目が覚めてようやく状況人気づけたようだ。涙をぼろぼろ零しながら俺に抱き着いてくる。


「お兄ー!!生ぎででよがっだよおおおおおおおお!」


「俺もお前が生きててくれてうれしいよ」


 本当は泣いて喜びたいところだが、目の前でこうも泣かれてしまうと気持ちが冷静になってしまう。ああ、このぬくもり・・・永遠に触れていたいぜ・・・


「あー、えと感動の再開をしてるところ悪いんですが状況を説明しますねー」


 背後から呆れたような女性の声がした。


「えっとーどなた?」


「私は天使のシロガネと申します。あなたたちは私の手違いで死んじゃいました☆」


 シロガネと名乗る天使は軽いノリで驚愕の事実を告げてくる。手違いで死んだ?どういうことだろう・・・


「まあ、アレですよ所謂転生ってやつ。手違いで殺しちゃったけど異世界チート生活させてあげるんで許してー的な?」


 異世界転生、咲良ちゃんの好きなネット小説によく出てくるジャンルだ。神の手違いによって死んだ主人公がチート能力を持って第二の人生を歩むというあれ。魅力的じゃないと言えば嘘になるがこんなに軽いノリで言われて素直に喜べる人間なんているわけがない。


「え!?チート転生できるの!?最高じゃん!!お兄のことめっちゃ強くして!それで異世界ではお兄のハーレムができてそれからそれから・・・」


 喜んでいる奴が隣にいた。まあそうだよな・・・元の世界での俺たちはパチンカスの両親やらいじめやらのせいで本当に辛い思いをしてきた。ここにきてこんな話が舞い込んできたら手放しに喜んでしまう奴の気持ちもわからないでもない。


「そうですね、じゃあせめて咲良ちゃんを最強にしてやってください」


 俺はシロガネに頼む。これが折衷案といったところだな。何もなしに許すわけにもいかないが俺達二人共をチートにするというのは天使としても大変だろう。欲張りすぎてへそを曲げられたらそれこそ目も当てられない。


「はーいわかりましたー。じゃあ、妹さんを強化しちゃいますねー。それと、転生先でも何かあったら来てあげますんでご心配なさらず~」


「えっ!?ちょっ!待て!強化するのはお兄だから!私じゃなくてお兄を強化しt」


 シロガネは何か急いだ様子で説明を終えると咲良ちゃんの叫びを聞く前に俺たちを光の輪で包みこんだ。




***




 光のトンネルを抜けるとそこは異世界であった。と言っても、近未来都市のような見たこともない施設の存在や魔法ファンタジーのような中世の街並みが広がっているわけではく、現代で言う下町のような街並みが広がっているに過ぎない。状況証拠的にここを異世界だと判断したが、実際に元の世界に戻しただけだと言われても信じてしまうほどの街並みだ。しかし、街並みなど関係ない。知らない世界に来たのならまず最初にやらなければいけないことがある。


「ここが学園都市か」


「いや、見た目全然違うだろ」


 即座に妹のツッコミが入ってしまった。


「お兄ちょっと痛いよ・・・」


 そんな反応をされると心に闇を宿すからやめてくれ・・・


「まあ、異世界に来たんだしひとまずは街の散策でもするか?」


「そうだね。チート無双するのに舞台は大事だしね・・・」


 咲良ちゃんはしゅんと落ち込んだ様子だ。どうしたのだろう?ネット小説のように強い力を手に入れたというのにあまりうれしそうではない。


「はあ、お兄がチートで強化されて俺TUEEEしてハーレム作って夢のイチャラブ生活を送っている中唐突に妹の大切さに気付き私とどちゃくそエッチな兄妹水入らずの生活をするのが夢だったのになあ」


 それハーレムの行程いらなくない?でもそうか、妹は俺のチート無双が見たかったのか・・・少し悪いことをしたと思う反面、俺も妹が異世界でちやほやされる姿を見たかったのでこれは仕方ない犠牲だなと割り切る。


「なあ、咲良ちゃん。この街なんかおかしくないか?」


「?そんなことないと思うけど・・・」


 いや、確かにおかしい。周囲の人間は俺たちが近づくとサッと距離をとるし、目線も心なしか冷ややかな様に感じる。一体なんだっていうのだろう?


「私たちは嗜好警察だ!止まれそこの異性交遊者!」


 違和感の正体について考えつつ歩いていると後ろから怒鳴り声が聞こえた。その声は俺たちに向けられたものだということが一聴にしてわかった。


「オレなんかやっちゃいました?」


「異性交遊は重罪だ!署まで来てもらう!」


「いい男なのにもったいないぜまったく・・・」


 白い服を着た男たちはすごい剣幕で俺たちに迫る。なんだかよくわからないが状況が悪いことだけはわかる。


「咲良ちゃん逃げるぞ!」


 俺は咲良ちゃんの手を引き、走りだした。


「!?咲良ちゃん早すぎない?」


 走り出して違和感に気づくまでの時間はそうかからなかった。咲良ちゃんは運動不足で走ったりするのが苦手なはずなのだが、現在俺の手を引くようにして走っている。本来だったら俺のペースのついてくることさえ難しいというのに・・・


「これがチート能力ってやつなんじゃない?」


 そうか・・・今の咲良ちゃんはチート能力手に入れている。一体どんな能力なのか見当もつかないが役に立っていることは確かだ。


「なるほどな!よし、じゃあ僕を連れて進め!」


 一人称が崩れた気がするが気にしてはいけない。咲良ちゃんは俺を半分引きずるような形で高速移動している。


「馬鹿め!そっちは行き止まりだ!」


 回り込んできた白服の警官が勝ち誇ったように叫ぶ。まずいな・・・と思ったのも束の間、咲良ちゃんは小さくジャンプし壁を蹴る。その反動でさらに高く飛び上がり再び反対側の壁を蹴って飛ぶ。所謂壁ジャンという奴だ。


「す、すっげえ」


「本当はお兄にやってほしかったけど仕方ない・・・しっかりつかまっててね!」


 咲良ちゃんは惜しそうな顔を一瞬みせたがすぐにキリっとした笑顔に戻りビルを飛び越えた。


 しばらく移動を続けてから、俺たちは路地裏で腰を下ろす。白服警官たちは俺達を見失ったらしく追ってこない。はあ、これからどうなっちゃうんだ・・・




***




桐ケ谷 和希

筋トレやアニメ視聴が趣味の少年。とある理由から友達がいない。妹を溺愛している。顔はそこそこ整っており、シロガネによって魅力を急激に強化されたためこの世界ではモテている。料理が得意。髪は黒髪。好きな色は白。


桐ケ谷 咲良

ネット小説を読むことが趣味の少女。中学・高校では常にいじめられていた。顔はそこそこ整っているが髪の毛は伸びきっており片目が隠れている。朝に弱く常に眠そうだが、早寝はしない主義。シロガネによって身体能力や分析力などを強化されている。頭は悪い。髪は兄と同じく黒髪。好きな色は赤。

今回からキャラや世界観紹介を話末に書こうと思います。

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