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真・異世界転生者 序章(プロローグ)

最初の戦闘描写は時系列がかなり飛んでいるのでご理解ください。

 目の前で一つのコンドームが破裂する。本来は避妊具としての役割を持ち、男性同士の性交渉の際に用いることが推奨される人工物、そのゴムの容器の中にはたっぷりとローションが詰まっていた。


「うわッ!」


 白服戦闘員が地面を濡らすローションに足を取られる。俺はすかさずその頭に鉄パイプを振り下ろした。


「ありがとうアイカ!」


「後でたっぷりとお礼してもらおうかしら!」


 俺たちの組織、シスター同盟のリーダーである少女アイカは得意げに鼻を鳴らす。


「3時方向建物裏から敵接近中!」


 俺はゴーグルの側面についたボタンを押し、建物を透視する。この世界の建物はすべてマジックミラーでできているため光の反射具合をこちらで調節すれば透視は容易だ。敵の監視体制を逆手に取った戦闘器具、名付け<マジックミラー号グル>!


「了解お兄!」


 俺の報告を受け、愛すべき我が妹、咲良ちゃんは伸縮自在のコンドームを銃口につけた銃、<バンジーガン>を建物めがけて発砲する。銃口から勢いよく射出された銃弾は建物を抉る。伸びきったコンドームはその弾性により咲良ちゃんを勢いよく引っ張った。


「喰らえ!」


 咲良ちゃんの木製バットが白服戦闘員の頭を捉えた。


「なんだあの女!?化け物か!?」


 異世界転生の特典としてチート能力を貰った妹を表現する言葉として化け物というのはあながち間違いではない。咲良ちゃんは日ごろから鍛えている俺よりも遥かに高い身体能力で白服戦闘員を圧倒していた。


「ふははははァ!いい気になった逆賊どもめェ、我ら氷狼ひょうろう隊が来たからにはタダではすまぬぞォ?」


 偉そうな能書きをたれながら白髪の少女、シブキが大隊を引き連れこちらにやって来る。目は真っ赤に充血しており、息が荒い。一目で危険だと伝わってきた。


「レナは大隊の一般兵を頼む!隊長は俺が倒す!ブライアン!援護を任せられるか?」


俺はシブキに一度負けている。だからこそ彼女と隊との連携の恐ろしさは身に染みてわかっているつもりだ。ならば、彼女を倒すたったひとつの冴えたやりかたは連携を崩す他にない。


「了解した」


「OK!」


 普段黒い包帯で顔を隠している少女、レナは顔に巻いた包帯をほどき、シラットの要領で氷狼隊構成員を制圧する。


「カズキ君、射線内に入ってるのに気づかないなんてちょっと不用心すぎよ?」


 ふんわりとしたブロンドヘアの女性、カオリさんが俺に向けられた銃の銃口を振動刃の性質を持つ<バイブ型仕込み刀>で切り裂く。


「助かりました!」


 氷狼隊の登場で最初は焦ったが仲間との連携によって何とか数の不利は誤魔化せている。


「ほうゥ、我が氷狼隊とまともに戦えるとは中々やるなァ。だがァ、その程度では私様はれんよォ!」




 隊員が腕でシブキに足場を作り、彼女は高く跳躍した。氷狼隊による連携攻撃、俺たちは何度となくあの連携に苦しめられた。シブキは上空から数発白服式拳銃を発砲する。


「ッ!」


 意識外からの発砲を避けられるほど俺の動体視力は良くない。しかし、拳銃と言っても弾は所詮ゴム弾。直撃を覚悟してさえいればその程度で倒れる様な鍛え方をしていない。逆に、飛び上っての攻撃はブライアンの狙撃を容易にするので好都合だ。


 ズドンッ


 スナイパーライフルから射出されたゴム弾は正確にシブキの右手をとらえる。


「くゥッ!」


 予期せぬ衝撃でシブキは拳銃を取り落とした。俺はその拳銃を後ろへ蹴り飛ばし、彼女と氷狼隊との距離を離れさせる。


「隊長!」


「あなたたちの相手は私たちで努めますわ」


「ああ」


 急いで駆け寄ろうとする氷狼隊をカオリさんとレナが制止した。これで氷狼隊の連携は封じた。俺は拳銃を拾い上げたシブキの元へゆっくりと歩み寄る。


「ご自慢の氷狼隊とやらはもう助けに来ないぜ?ここからは一騎打ちだな隊長さん!」


「ふははァッ!一騎打ちなら勝てるとでもォ!?」


「俺は、俺たちは自らの矜持のために負けてらんないんだよォッ!!!!」


 俺は大きく一歩を踏み出す。さあ、ここからが本番だ。氷狼隊はレナとカオリさんが、白服戦闘員たちはアイカと咲良ちゃんが相手してくれている。後は俺とブライアンでこの女を倒せばひとまずの勝利を収められる。高鳴る胸の鼓動に身を任せ俺は鉄パイプを振りかぶった。




***




 学校が終わり俺は一人家路につく。普段は一緒に帰る友人がいないせいで気まずいのだが今日ばかりは体が羽のように軽かった。妹の咲良ちゃんが夕食にオムライスを作ってくれるのだ!自慢だが、俺の妹は世界で一番かわいい。片目を隠すほどに伸びた前髪も寝不足気味な目元も気怠そうな喋り方もすべてが愛らしい。普段ネット小説を読み漁っているせいで若干現実と虚構の世界の距離感がおかしいがそんなところも可愛く思えるほど魅力的な妹なのだ。そんな妹がフラっと道路に倒れこむのが見えた。道路を走るトラックが妹に吸い込まれるように走っている。ブレーキが踏まれる気配は無い。


「咲良ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


 俺は考えるよりも先に体が動いていた。妹は俺に突き飛ばされ向こう側の歩道まで飛ばされる。普段から鍛えといてよかったぜ!そんな安堵も束の間、トラックは俺に衝突する。鉄の破損音と地面に身体が打ち付けられる衝撃音が鼓膜を強く刺激する。ああ、俺死ぬのか・・・


「お、お兄ぃ!?」


 妹はわけがわからないといった顔でこちらを見つめている。可憐な目には雫のような涙がキラキラと輝いている。


「お兄だけ死んじゃうなんてやだー!私も一緒に死ぬぅぅぅぅ!」


 お、おい馬鹿!俺が身を挺して守った命なんだ大切にしろ!俺は叫ぼうとしたが吐血と痛みのせいでごぼごぼという血の音と言葉にならない呻き声しか出せない。咲良ちゃんはポケットから取り出したシャープペンシルを胸元に突き立てた。心なしか恍惚の表情にも見える。ああ、意識が遠のいて行く。せめて咲良ちゃんの手作りオムライスを食べてから死にたかったなあ・・・


 大きな未練を残し、俺の意識はブラックアウトした・・・

妹キャラが好きな人なら楽しめる作品になっていると思います。ヒロインはたくさんいますが基本的には妹しか勝たん!という内容です。作品全体を通してパロディネタが多くなっていますので元ネタを考えながら読むと面白いかなと思います。

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