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雑貨屋のおばあさんと仲良くなりました。

「テルありがとうな。御者をやっていてこんなに楽しい旅は初めてだったよ。また機会があればぜひ声をかけてくれ」


「俺の方こそ楽しかったよ。元気でなロニア」


 御者の名前はロニアといい、10日間も一緒にいたおかげですっかり仲良くなった。

 一緒に乗っていたみんなは途中で降り、ロミスタまできたのは俺だけだった。

 

 それぞれ、降りて行く時に次にあった時には肉のお礼をするからと言われたが、この広い世界でそう会うこともないだろう。


 最後まで一緒だった商人のモンテロンドはまだ見習いだが、今回の得た肉で独立にかなり近づくと言っていた。

 人の役に立てたなら嬉しい限りだ。


 他にも酒の席でブヒブヒ特徴的な話し方のおっさんに絡まれたりしたが、なかなか楽しい旅だった。


 袖振り合うのも多少の縁っていう言葉もある。


 いずれどこかで再会できてまた楽しくご飯でも食べられたらいいとは思う。

 

 ロミスタの村は漁港がある村で王都から見ると規模はかなり小さい。

 海沿いなので塩の香りがする。俺は大きく息を吸い込み背伸びをする。

 

 馬車での移動が長かったので身体の節々が痛くなっている。

 少し身体を動かさないと。

 

 村には魔物避けなのか、村を囲むように堀ができており、簡易の門はあるが、特に兵士が守っている感じはなく出入りは自由だった。


 最初に向かったのは冒険者ギルドだった。


 冒険者ギルドに行けば宿や家の紹介をしてくれるらしい。

 まずは住むところが決まればあとはゆっくりと薬草でも採取して生活の基盤を作っていけばいい。

 

 えっ? 魔王の討伐?

 少なくとも剣と弓の勇者がいるから、そっちは任せて大丈夫だろう。

 俺は不合格だから今ここにいるわけだし。


 それに、俺以前にも勇者が野に放たれているようだし。

 俺のような野良勇者には世界の危機を救うとか、そんな難しい話はわからない。

 

 おっさんにはおっさんの生活があるのだ。

 ん? いいんだよ。お兄さんとおっさんは上手く使い分けないと。


 村の中を散歩気分で歩いていると、道の先で腰を手で押さえて四つん這いになっているおばあさんがいる。


 おばあさんの前には木箱が転がっており、どうやら荷物を運んでいる最中に転倒してしまったようだ。


「大丈夫ですか? 立ち上がれます?」 


「イテテ、悪いね。年はとりたくないものだよ。あれ? 見たことない顔だけどこんな辺鄙な村に観光かい?」


「いえ、冒険者をここから始めようかと思いまして」


「なるほどね。私の名前はニコって言うんだ。この村の奥で雑貨屋をやっている。みんなからはニコバアって呼ばれているから、あんたもそう呼んでいいよ。ところで悪いんだけど、そこの箱を店まで運んでくれないかね?」


「喜んで。ニコバアさんよろしくお願いします。俺の名前はテルっていいます」


「いいよ。さん付けせずに呼び捨てで。みんな呼び捨てなんだからあんたもそうしな」


「わかりました。この荷物はどこまで?」


「こっちだよ」


 ニコバァは腰をかがめゆっくりと立ち上がる。

 

「悪い。ちょっと手を貸してくれるか」


「もちろんです。ゆっくりいきましょう」


 俺は木箱を持ち、ニコバアは俺を支えにゆっくりと歩いていく。

 そうとう腰痛がひどいようだ。


 ニコバアの雑貨屋は村の外れにあった。お店の前では猫が『くかぁー』と大きなあくびをしながら日向ぼっこしている。


「悪いね。どうも慢性的な腰痛に悩まされていてね。動かさないとダメなのはわかっているんだけど、少し動くとすぐにこうなっちまってね。どこか行く予定だったんじゃないのかい?」


「大丈夫ですよ。さっきついたばかりで今から家とかを探すだけなので」


「そうかい。この村も空き家があるからいい家が見つかるといいね。もし、何か必要な物があれば買いにきな。田舎だからそこまで安くはできないけど、今日のお礼に少しはおまけしてやるから」


「ありがとうございます。皮のなめす薬剤とかってありますか?」


「皮のなめすのか。ちょっと待ってなよ。確かじいさんのお古があったはずだから。イテテッ」


 ニコバアはゆっくりと店の奥へ消えていくとなにやらゴソゴソと何かを探す音が聞こえ、やがて手に透明な瓶を持ってやってきた。


「これ、じいさんが昔使っていたお古だけど使うといいよ」


「ありがとうございます。値段はいくらですか?」


「これは売り物じゃないからいいよ。これからひいきにしてもらうお客さんに特別サービスだ」


 ニコバアは素敵な笑顔で俺に瓶を渡してくる。ありがたくもらうことにしてまたお店にくる約束をして冒険者ギルドへ行くことにした。


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