魔王が復活したとかって不吉な噂があるんですが。
ピットは俺たちに妖精王の短剣がどうして生まれてきたのかを話してくれた。
ただ、この剣を持っているからと言ってタニア姫も妖精の村にたどり着くとは思っていなかったのではと思う。
もしかしたら、自分が持っているよりも安全という意味で俺に渡したのかも知れないし。
「どういう意味があってタニア姫がお主にこの短剣を渡したのかはわからない。ただ、お主たちがここに来たというのは必ず意味があるはずじゃ。偶然手に入れたからといってここに入ってこれる者はいない。ほとんどの人間は分かれ道すら発見することができないし、発見できたとしても左を選ぶはずじゃ。右を選べるのは何か特別な力を持ったものたちだけじゃ」
えっ……俺以外全員右を選んでいたんだけど。
ニクスもただの鳥じゃないってこと?
チョロさんはただのチョロイ羊じゃないの?
イブキも……でもイブキは元から奴隷にしては不思議な力があるからな。
「さて、せっかく来たのだから妖精王のところへ案内してやろう。くれぐれも無礼のないようにな」
「妖精王と会えるんですか?」
俺の感覚からすれば妖精に会えただけでも感動だったが、その上の妖精王に会えるなんて普通経験できるものでもない。
何か手土産とか持って来た方が良かっただろうか。
まだ、ブラッドボアの肉が残っているけど。
「妖精王はワシよりも年齢は上で長生きしているが非常に強い武闘派だ。それにとても美しい姿をしているが人間惚れるなよ」
「惚れないって」
俺たちは森のさらに奥に案内される。
先ほどまでの霧が嘘のように晴れ青い空が広がっていた。
妖精王の住んでいるのは大きな教会のような建物だった。
空から光を沢山部屋の中にいれられるような天窓があり、壁には様々な絵が描かれている。
妖精サイズなのかと思ったが、作りは人が入れる大きさで作られておりきっとこの建物も人間が作ったのだろう。
「お主らはここで待っておれ」
豪華な装飾が描かれた扉の前で俺たちは待つことになり、ピットが一人で部屋の中に入っていったがすぐに戻ってきた。
「悪いな。王がどうやらどこかへ外出してしまっているようでいないようなのじゃ。まぁすぐに帰ってくるだろうから、みんなと一緒に酒でも飲んで待っていてくれ」
「そういえばさっき騒いでいたけど何かのお祭りなのか?」
妖精たちがめでたいと騒いでいたのを思い出す。
「あっ……そのめでたいとは騒いでいたが、別に全員にとってめでたいわけでも何でもなくてな。あいつらは酒が飲める理由があればいいだけだ」
「そうか。お祭りかなにかと勘違いしたよ」
「なにちょっと数日前に魔王が復活したという話があるから、それでだな。今のうちに酒を飲んでおこうってことだろう」
「はい?」
魔王が復活⁉ 本来俺がここにいるのは魔王を討伐するためにこの世界へ召喚されたはずだった。でも結局役に立たないと言われ追い出されたわけだが。
異世界をのんびり旅する予定の俺としては魔王の復活なんて話は聞き捨てられない。
「魔王っていつ復活したんだ? どこで? どんな姿?」
矢継ぎ早に質問するとピットは困った顔をしながら
「いつと言われてもワシも困る。どこかも知らん。どんな姿かなんて見たことがあるわけないだろ。魔王なんてワシも伝説でしか聞いたことはない。ただ、噂では魔王が生まれると魔王のまわりには強力な臣下が集まってくるって話だ。すぐに人間と敵対するかは知らんが気を付けることだ。まぁその剣を持っているお前が妖精たちに一緒に戦ってくれというなら力を貸さないわけにはいかないがな」
「そうだよな。ありがとう。ってなにその物騒な話。俺はそんなこと願わないよ」
「なんだ願わないのか。王へ相談する必要はあるが今ワシたちが平和にくらせているのは、お前たちのおかげだからな。その短剣を持つ者は王の代理ってことになる。だから気を付けろよ」
「あっ結構重大ってことを理解した。気を付ける」
絶対に魔王となんて出会いたくない。
俺を捨てた奴らがきっとうまくやってくれるに違いない。
他力本願? 上等です。
この剣も大切にしなければ。
王の代理とか責任が重すぎる。
俺たちはそのまま妖精たちにまじって宴会をすることになった。




