表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/56

異世界に召喚され速攻で折れた心と傘

 目の前には無残に折られた傘がある。


「はぁ? お前何をやってんだよ」


 俺のお気に入りの傘はもう傘の役目をはたしそうもなかった。

 24本の骨により台風でも折れないといわれていたのに。

 簡単にへし折ってるけどこの傘高かったんだからな。


「ふむ。この程度で折れてしまうとは、なんという情けない武器……いやただのゴミか」

 大臣はそういうとすでに興味をなくしているようだった。

 そこへ先ほどの女性がすごい剣幕で大臣につめよってくれる。


「オルガ大臣! いったい何をしているのですか。テル様の大事な私物を壊してしまうだなんて」


「これはこれは、タニア姫、申し訳ありません。我が部下が誤って壊してしまったようで」


 彼はまったく謝る気などない。あきらかにわざと挑発するようにやっている。


「テル様申し訳けありません。なんとお詫びをしたらいいか」

 その女性、タニア姫は本当に心から謝罪をするように俺に頭を下げてくれる。

 人の上に立つ人間がこれだけできているのにこの大臣はなんなんだろう。


「いきなりでビックリしてしまいましたが、つまり俺には勇者の資格がないってことでしょうか?」


「タニア姫、今は魔王が復活したあとの戦力を増やす時期です。そんな戦力にならない者にいつまでもかまっている暇はないのです。それでなくても、勇者の召喚には3ヶ月もかかるのですから」


 そこへ大臣は質問へ答えずにさっさと終わらせようとしてくる。

 この大臣はわざと俺を怒らせたいのか?


「お前ふざけるなよ。勝手に呼んでおいて使えないって、そんな勝手が許されるのかよ」


「テル様申し訳ありません。勇者の資格は今の段階では何とも言えませんが、女神様に寵愛を受けた勇者様たちは何かしらのギフトを得てこの世界へこられます。もしそういうのがないのであれば……」

 

 傘が俺のキーになっているのは間違いない。

 だけど、俺の傘は見るも無残に折れてしまっている。


「まぁ、テル君落ち着きなよ。そんな怒ってもいいことはないから。これで君も自由の身だからね。ほら、異世界に転生されたらとか、君も一度くらいは憧れたことがあるだろ? この国は優しいから君は自由になれるんだよ。異世界を思いっきり楽しんだらいいよ。ほらこれ大事な傘しっかり持っていかないと」


 異世界を楽しむだって。そんなこといきなり言われてもできるわけがない。ノボルはこの光景が楽しくて仕方がないように満面の笑みを浮かべている。


 口では優しいことを言っているが、こいつが一番たちが悪い。ノボルから傘を奪うように受けとる。


「あぁ~怖い、怖い」


 と言いながら俺の顔を覗きこんでくる。惨めな思いをしている俺を見て楽しんでいるようだ。


「それじゃあ、今回の召喚は失敗ということで、傘男君にも時間が必要だろうから城の部屋へ案内してあげなさい。それでは私も暇ではないからね。これで失礼するよ」


 大臣はもう俺のことなど興味がないように部屋からでていく。俺は兵士に案内されて城の中の一室へ連れていかれ、しばらくここで待つようにと言われる。

 

 異世界へ勝手に呼ばれ傘男なんて名前をつけられて放置だなんて最悪だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうで連載中の『テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件』が宝島社様より書籍化しました。2020/3/12 発売予定です。 こちらも応援よろしくお願い致します。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ