道端の奴隷商
村を出てから2日後、俺は街道を走り続けていた。
ポーションのおかげか睡眠時間を削っても意外となんとかなる。
まだまだ先は長いので無理はできないが、それでも心ばかり焦ってしまう。
王都にむかい走っていると道の途中で脱輪をしている1台の馬車を見つけた。
俺の方が先に見つけたのでまわりを警戒しながら近づく。
どうしてもこんなところに脱輪をしていると盗賊の罠なのではないかと疑ってしまうのは、前の世界で異世界ものの本を読みすぎたせいかも知れない。
だが、注意をしすぎるということはない。
脱輪をしている場所は見通しが悪いわけではないが、警戒をせずに近づいて背中から襲われたなんてことがあったら笑えない。
遠目から商人のような男たち2人が一生懸命馬車を道に戻そうとしているのが見える。
俺は少し離れたところから声をかけた
「大丈夫ですか?」
「いやー旅のお方、申し訳ないが手を貸してもらえると助かります。脱輪して動かなくなってしまって」
もう一度まわりを警戒するがとくに異変はないようだ。
にこやかなその親父の顔が余計に怪しく思えてしまう。
「わかりました。今そっちへいきますね」
「ありがとうございます。いやーこんなところで人が通りがかるなんてお兄さんは神様みたいな人ですね」
そんなお世辞を言ってくるが俺はまわりの警戒を緩めることはしなかった。
ただ、結果的にみれば、ただ普通に脱輪していただけだった。
盗賊に襲撃されてなんてことはまったくなかった。
脱輪していた馬車は雨でぬかるんでいた中を急いでいたためにおこったらしい。
2人では戻せなかった馬車もなんとか3人で押すと戻すことができた。
「いやー、本当に助かりました。私は奴隷商をしているハバキといいます。こっちが御者のイヌイです。本当に助かりました」
ハバキとイヌイと紹介された男も俺に頭をさげる。
「たまたま通りかかっただけなので、無事に脱出できてよかったです。では、俺の方は急いでいるのでこれで」
「ちょっとお兄さん今からどこへいくつもりですか?」
「えっ王都ですが」
「悪いことは言わない。今は辞めた方がいいですよ。私の馬車の荷台を見てください」
俺はハバキに言われるがまま馬車の荷台を覗きこむとそこには空の檻が沢山あり、1人だけ檻の中で鎖に繋がれ横になっている奴隷がいるが、かなり弱っているように見える。
「そこの檻の中に入るだけ沢山の奴隷がいたんですが、王都で安い値段で買いたたかれました。ほぼ没収みたいなものです。今王都は大臣がしきるようになってから、おかしな方向へ進んでいっています。もう少し情勢が落ち着くまではやめた方がいい」
「指名手配になっている元姫の行方とかはどうなっていますか?」
「一攫千金狙いですか? 元姫ですが……私がでる直前に聞いた話だと姫は大けがを負いながらも、逃げ続け、最後には崖から川へ身を投げたって話ですよ。まだ死体はあがっていなかったようですが、逃げきれたとしても助からないだろうって話です。それが今から7日前なので」
崖から身を投げた。
怖かっただろうに。大けがを負いながら逃走する恐怖。
昨日まで味方だと思っていた人間が敵になる。
今から姫を探しに行ったところでもう見つかることはないだろう。
本当に申し訳ない気持ちになってくる。
あの最後に会った時にもしかしたら姫はこうなることがわかっていたのかも知れない。だから何も言わず。
俺にできることは何もない。あとは本当に姫の無事を祈ることくらいしかない。本当に無力だ。俺が一人うなだれていると、
「ところでお兄さん、奴隷を買いませんか?」
そう奴隷商は声をかけてきた。
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