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薬草採取とタニア姫の指名手配

 村をでるとしばらくは草原が広がっており、その先に森がある。


 薬草の採取は主に草原でおこなうため、見晴らしもよく危険な魔物がでても対処がしやすい感じだった。

 

 もちろん対処といっても、戦うとかではなく村へ逃げ帰るだけなんだけど。


 しかし、異世界へ連れてこられてやっているのが薬草採取の依頼だけというのはなんだか寂しいものだ。こうかっこよく無双とかしてみたいが、そう簡単にはいかないようだ。

 

 ついでにちょっと森の中に入って猪でも狩るか。


 いや、でも他の冒険者とかもいるって話だからな。

 勝手に罠をはって猪ではなく冒険者を捕獲してしまったら、あとでクレームになりかねない。


 もう少し色々なものに慣れてからだな。

 

 俺は薬草を1本ずつ丁寧に採取していく。


 こういう細かいところに気を使ってできるのも何でも屋のときの癖だろう。

 小さなところで手を抜くと後で大きなズレになって問題に発展してしまうものだ。


 そのあと、特に危険もないまま夕方まで薬草を採取し続けた。薬草は採取しても不思議なものでまた1週間くらいすると同じ場所に生えてくるらしい。


 そのため、慣れてくれば同じ場所をルーティンで回るだけで採取できるので稼げる金額も増えていくということであった。


 それからは、ほぼ毎日薬草採取の依頼をこなしていった。労働って素晴らしい。


 初日は1日3000ペトくらいだったが、徐々にもらえる金額も増えていった。

 あまり多い金額とは言えないが、まずは慣れるという意味では達成できた。


 近所のニコバアの雑貨屋にもかなりお世話になり、お酒を飲むほどの余裕がないため酒場での情報収集ができなかったが、色々と話を聞くことができた。


 ニコバアは雑貨屋を長年やっているだけあって、色々な種類の薬草の見分け方も具体的に教えてくれた。本で見るよりもかなりわかりやすい。


 それ以外にもニコバアの店には下級ポーションの作り方なんていう本も置いてあり、本当は商品だからタダで読ませることはできないけど言いつつも無料で読ませてくれた。


 下級ポーション作りには才能が必要とのことだが、地道にやっていればいずれできるようになるらしい。


 それから1週間くらいは薬草採取が終わってからニコバアにところへ行き、色々なことを教わる。


 ただ、下級ポーションができても入れる空瓶がないとダメだろうと言われ、埃がかぶっていたポーションの空き瓶50本を買わされたのは情報料としておく。


 薬草採取の依頼は若手の冒険者にとって不人気依頼だったようで薬草採り放題だった。

 薬草の採取はかがんだ状態でずっと採り続けるため、みんな足腰が辛いとやりたくないらしい。


 俺の場合、草抜きの仕事などやる時には1日8時間ずっと草抜きをしていた時もあるので、全然平気だった。


 あの時は炎天下で40度を超える夏日だったので終わってから生死をさ迷ったが今ではいい思い出になっている。


 薬草採取にも慣れ、そろそろ他の依頼でも受けて見ようかと思いだした頃その依頼は貼られた。


『指名手配 元ボルテガルド姫 タニア 罪状 国への反逆罪 生死を問わず王都へ連れてきた者に100万ペト』


「姫様指名手配だってよ」

「なんだこの国への叛逆って」

「なんかよくわからないけど、大臣が今は王様のかわりになったらしいぞ」

「なんであの大臣が?」

「姫が王様を暗殺しようとして意識不明らしいぞ」

「なんでまた、あの優しい姫が」


 ギルド内ではざわざわと色々な噂が流れている。あのタニア姫にかぎって王様の暗殺未遂なんてありえない。まさか。でも本当に?


 その日夜、俺はベッドの中で色々と考えていた。


 もし大臣がおこしたクーデターだとするなら姫は今少数で逃げている最中だろう。

 捕まっていればわざわざ冒険者ギルドに指名手配の依頼を貼る必要はないのだから。


 一日中薬草採取をして小銭を稼いで満足している俺にできることは何かあるだろうか。


 きっと行っても無駄だな。


 仕方がないよ。だって国が絡んでいるような大きな事件に首を突っ込んでいいわけはない。


 それに、俺には何も力がないんだから。


 剣や弓とかの勇者はいいよな。


 それだけの力があるんだから。


 ふと、部屋の端に無造作に投げられた傘が目にはいる。俺の傘を大臣にへし折られたのが随分前のような気がする。


 あの時、この世界にきて一番最初に優しくしてくれたのがタニア姫だった。


 今使っている短刀もナイフも姫が準備してくれたもので、今ではこの素材の素晴らしさがよくわかる。


 もしかしたら、本当に姫は謀反をおこしたのかもしれない。


 だけど、それには何か理由があるはずだ。


 俺を呼んだのはこの国だから、姫が俺にしてくれたのは当たり前と言う人もいるかもしれない。だけど、受けた恩は返さなければいけない。


 胸の中にモヤモヤしたものが渦巻いていく。


 心の中の悪魔が

『お前は安全に生きるって決めたんだから一生薬草採取して平凡に生活していけばいいんだよ』

 そう囁き続ける。


 だけど……会えるかどうかはわからない。それに国が探していて見つからない姫はもう上手く逃げているだろう。


 それでも……はぁこのまま探しに行かなければ一生後悔しそうだ。

 何ができるかなんてわからない。もしかしたら無駄足になるかもしれない。


 それでも、何もやらずに後悔するのは嫌だった。

 翌日俺は姫を探すために王都へと向かうことにした。

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