いきなり長編を書くのは無謀ですよね
なろうはエターが多い。完結した作品は、それだけで評価が上がる。
この話は、読み専時代の私でも知っていた情報だ。なので、書き始める前に「必ず完結させよう」と心に決めていた。
2019年8月、私が一番最初に書こうと思ったのは竜と聖女のお話だ。竜の背に乗る白い服を着た黒髪の女の子。そのイメージを元に話を考えた。この話を、『聖女』とする。
「聖女」なのだから、世界を救うのは当然である。もちろん、主人公は死んで異世界に転生してきた、と言う設定だ。この話はわりとすらすら書く事ができ、順調に書き溜めが増えて行った。
「しかし、この話100万字くらいになりそうだな……」
自分の性格的に即興で書いて、後から辻褄を合わせるのは不可能と思われた。その方式を取ると、執筆に詰まった瞬間にエタってしまう。本来は9月から投稿しようと考えていたが、さらに書き溜めを増やすべく、そして自分自身の力を試す為、私はある試みをした。
「ひとつ、行き当たりばったりで書いてみようじゃないの」
そう、生贄作戦である。
実験用として生み出されたのは、現在も連載中の(断じてエターではない)『傾国のシンデレラ』だ。
この作品は、貧乏なヒロインの元に自分そっくりな従姉妹が現れて、ここは乙女ゲームの世界で自分はバッドエンドを繰り返している。ループを抜ける為に、ヒロインの座を貴女に変わって欲しい、と持ちかけて来る。従姉妹になりすましたヒロインが、攻略対象の男たちと接触していく事で話は展開する。
お察しの通り「令嬢」「乙女ゲー」「異世界転生」「逆ハーレム」「溺愛」的な要素をふんだんに盛り込んだ作品……のはずである。今はまだ9話で、キャラが全然出揃っていない。
しかしながらテンプレ的要素が功を奏したのか、自分的にはまあまあのブックマーク、と言っても数十件を手に入れる事ができた。
しかし、この作品には決定的な欠陥があった。そう、誰とくっつくか決まっていないのである。男キャラの設定はある。しかし、メンバーが出そろった後の展開がさっぱりわからない。毎日更新を目標に掲げたが、筆はピタリと止まった。
「やっぱり最終回の展開を決めておかないとダメだな」
私はそう考え、次は読み切り作品を書くことにした。『素足のリズ』と言う。
これは、足が悪くて引きこもりがちな令嬢の元に、話相手として異国の男性が雇われて屋敷にやって来たところから始まる。不思議な青年に見守られながら主人公のエリザベスは成長し、最後は身を引き故郷に帰ると言い残したヒーローを追いかけて二人は旅に出る。
この作品は自分でも気に入っていて、120ポイント前後の評価を貰えた。
私はこの時、こう思った。思ってしまった。
「なーんだ、100ポイントの壁って言っても、ちゃんと書けばすぐじゃん。シンデレラも書いていけばもっとポイント増えるだろうし……」
それが大きな誤りだったと気がついたのは、もうしばらく後だった。