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かくおの短い物語集

「台風の一日」

作者: かくお

朝早く、花びらを一枚ずつちぎり、

来る、来ない、来る、来ない、最後の一枚、来る。


少年は何が来るのか楽しみになった。


「今日はは日曜日だ、誰か遊びに来るのかな?」


雨が降ってきた、昼過ぎには強い風も吹いてきた。


「わー、来たのは台風だったか!」


少年は台風が好きだった。


お父さんが戸に鍵をかけて雨戸を全部閉める。


シーンとした部屋の中はまるで密室のようで、冒険してるみたいな気分になれる。


お母さんはバタバタせわしなく動いてる。


妹はいつも通り人形で遊んでる。


少年は和室に寝転がってみた、特にやる事はないんだけどワクワク気分が止まらない。


土間に降りて外の様子を覗いた。


「コラ、おとなしく中に入ってなさい!」


お母さんに怒られた、忙しそうなのにちゃんと見てるんだ。


仕方がないので子供部屋の勉強机に座って考えた。


家の中は静かだし、きっと外にも誰もいない。

ずっとこのままだったらどうなるんだろ?


なんかワクワクしてる。


「そうだ、食料を集めておこう」


台風がいつまで続くか分からないのだから、一応準備しておく必要がある。

まずは食料だ。


雨戸の外ではサーサー雨の音が聞こえる。


チョコレートや飴、ポテトチップなんかのお菓子とバナナを集めてリュックサックに詰めてみた。


「うーん、まだ足りない」


台所にこっそり、サバの缶詰とミカンの缶詰もゲットした。缶切りだって忘れない。

水筒に麦茶も詰めて準備よし。


「あとは何が必要だろ?道具も必要だな」


この前お父さんが買ってくれた折りたたみナイフ、コンパクト双眼鏡、ハサミやペンチ。

何かの役に立つだろう。


それらを詰めたらリュックサックがパンパンだ。


これで台風が長引いても当分問題ないはずだ。


「さて、次は何をしよう?」


特にやる事も思い付かないので、漫画を読んで過ごす事にした。


リュックサックには食料がウフフフ。

道具も用意したからなんだって出来るはずだ。


リュックサックの中が気になる。


だけど、まだ今は食べちゃいけない。

いざという時の為の食料だ。


それでも少年はリュックサックが気になってしまって漫画が頭に入ってこない。


じっとしてられないので、リュックサックを背負って家の中を歩き回った。


「お兄ちゃんどこいくの?」


「どこにも行かないよ」


いつの間にか妹が後ろに付いてきている。


「あんた達外に出ちゃだめよ!」


お母さんは背中に目でも付いてるのだろうか。

外にだけは出られそうもない。


でもしばらくすると、お父さんが雨戸を開け始めて言った。


「おーい、すっかり台風過ぎたみたいだぞー」


少年と妹もバタバタと窓の外を見ると、太陽が顔を出していた。

もう大丈夫だろう。


「お母さーん、外出てもいいでしょー!」


「あんまり遠くに行っちゃダメよー」


「はーい」


少年は庭に出てリュックサックの中身を広げた。

ニコニコ顔の妹も付いてくる。


「よし、非常食を食べよう、周囲を警戒するんだ!」


そう言って、コンパクト双眼鏡を妹に渡した。


「アイアイサー!」


妹は嬉しそうに双眼鏡に目をあてた。


少年はお菓子の袋をわざわざハサミを使って開けた。


「道具があれば何でも出来るぜ」


やっぱり台風は楽しい。




おしまい。

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