男子高生って、理解不能。これってウチの弟限定?
マジで理解出来ない。
4歳年下の弟とその友人。
去年、今年と同じクラスで、今、高校2年。
『机で寝てたら、いきなり手、舐められたッ!ありえへんって、キショイし』
そのセリフ、私が初めて聞いたの、去年の6月。
大雑把な母が笑い飛ばし、
『他の子も、手、舐められたん?』と面白そうに聞いていたのを覚えている。
その時、ちらりと弟のその友人が【アーッ!】な人かも、と疑問を抱いたけれど、弟の容姿を見直して興味は失せた。
ゴメン、平凡な容姿の男って判断して。
今年の6月。
高校の体育祭が近づき、また弟が叫んだ。
「ホンマ、キショイって。なんでオレの小指噛むねん!」
「前に言ってたのと同じ子?」
「そうやで。どう思う?オカン、姉ちゃん」
「あんた友達、面白いなぁ」
お母さん、それで流すんだ、スゴいよ。
それに弟よ、私に言われても。
私は友人に指を噛まれた経験はない。
ついでにこの先、噛むような友人が出来る可能性も少ないと思う。
私は取り合わずスルーしていたら、中学生の下の弟が兄に聞いていた。
「それってバスケ部の○○?いっつも一緒にゲームしてる?」
「そうやで」
仲、良いんだ。
手を舐められ、指を噛まれても、深夜にPS4を一緒にして、テレビ画面に話し掛けてる君。
その画面の先に居るのは○○君なんだ。
祇園祭、マジで最悪。
大学、休みたい。
もう、倒れろと言わんばかりの暑さ。
やっとの思いで帰宅し、リビングで涼んでいたら弟も帰ってきた。
白のカッターシャツにグレーのスラックス。
見目はそんなに暑苦しくないのに、何故か部屋の温度が一気に上がった気がして苛つく。
「オカン、夏の補講に塾、行くからお金ちょうだい」
「行かへんって、言うてたんちゃうの?」
「△△、あんた塾行くより、私がやれって言った問題集解いた方がいいんちゃう?
英語、あと10は偏差値上げらな関関同立、無理やで」
「判ってるって。やるし」
「じゃぁ、なんで塾に行くん?」
「姉ちゃんに関係ないんちゃうん?」
「いや、関係あるとかより、意味ないんちゃう?
夏休み入ったらすぐ、あんたの高校、勉強合宿やろ。実質3週間位の夏休みなんやから構文、文法、長文読解の基礎問題集でいっぱいやろ」
関係無いのに、思わず口を挟んだ。
弟が英語を苦手にしているのを判っていて、嫌味な言い方をした。
ゴメン、弟よ。
でも、なんか君の存在にイラッとするんだ、今日の私。
「あんたら、ケンカになるから止めとき。
△△、ホンマに塾、行くん?」
「友達に誘われたねん」
はい?
何言ってるんだ、弟よ。
友達と一緒に夏期講習って、アホだろ。
「友達?何であんたの友達が塾に誘うん?」
うん。
お母さん、私もそう思う。
「そいつバスケ部でポイントガードやってて、夏練キツいからサボれるし、英語悪いから丁度いいって。ほんで誘われた」
「お金は出すけど、手続きとかは自分でしいや」
「ありがとう、オカン」
君の言い分、私には理解出来ない。
バスケ部、君には一切関係無いよね、弟よ。
英語の成績が悪いのは君だけ?
それとも友人も?
弟よ。君の国語の平均偏差値72って疑うよ、本当。
それよりも、友人って過去に君が『キショイ』って叫んでた彼の事だろうか?
何だか私、君の友人が凄く気になる。
弟が今日、勉強合宿から帰ってきた。
一週間、ホテルで缶詰め。
ひたすら勉強。
鬱になった、って去年は愚痴ってたけれど。
今年はどんなクレームが飛び出すのか?
「お帰り~どうやった?
台風の雨、何ともなかった?」
「聞いてやオカン、最悪やったで。夜、寝られへんかったし」
「何で?」
「寝てたら指噛まれるし、ほっぺた舐められるしっ!」
「はぁ?」
私は口に含んだらアイスを吹き出しかけた。
スプーンを置き、母と弟の方を向く。
「あんた、何人部屋?去年は人数多かったよな」
「今年は6人部屋やってん」
「寝てて指、噛まれたんって部屋の子みんなも?」
「オレだけやで、どう思う?」
「他の子、寝てたん?」
「何か毎日、2時過ぎに【△△、起きてるか、生きてるか】って起こしてきて、ぼーってしてたら小指、噛んできたねん」
「他の子にはせえへんの?あんただけ、起こすん?」
お母さん、もしかして腐海の住人?
弟の友人を疑ってる?
笑いながら弟に根掘り葉掘り聞くのね、私も色んな意味で気になるから、口は挟まない。
「もう、最悪やで。毎日寝不足やし。
指、痛いし。親指も噛まれたし、ほっぺた舐められるし」
「前に指、噛んだ子?」
「うん」
「ホテルの部屋割、自由やった?」
「そうやけど」
「あんたの友達ってホンマに面白いな。指噛んで、手を舐めて、ほっぺた舐めて。修学旅行のホテル、楽しみやわ」
「修学旅行は一緒の部屋にならへんしっ!」
わお、バスケ部の彼だったんだ、やっぱり。
それでも、友人と言い、夏期講習も二人で通う予定に変更はなく。
今もPS4をしている。
弟よ、姉ちゃんには君の友人が【アーッ!】な人のように感じるんだ。
でも、何も言えない。
だって、私は標準的な男子高校生を知らないから。
女子高だったのが悔やまれるよ、ホント。
もし、秋の修学旅行で。
ほっぺたから別の場所に移動したら、ゴメン。
でも。
忠告一つしなかった、姉ちゃんを恨まないで。