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庶民勇者は廃棄されました  作者: ぎあまん


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241/265

241 新米伯爵はやり放題 01

しばらく不定期更新です。


 タラリリカ王国に女王が即位した。

 いままでの慣例を無視した即位だが、これに表立って反対を示す者はいなかった。

 即位前に反対派はすでに倒されたということもある。

 そして女王の戴冠とともにもたらされた隣国ランザーラ王国の降伏申し入れと、新たにダンゲイン伯爵となった冒険者出の青年が一度は死亡したと報じられた雷の勇者アストだということ。彼の持つ勇者としての実力と、戴冠式で献上した財宝から推し量られる財力。

 そして大山脈を越えた先に存在する魔族の首長との友好の宣言。

 新たな女王ルニルアーラ・タラリリカには力を吸い寄せる魅力が存在する……とタラリリカ貴族たちは考える。

 だがそれは激動の時代を告げる魅力でもあると理解していた。

 グルンバルン帝国が突如として始めた戦乱の風は、やがてこのタラリリカ王国にも届き、吹き荒れることだろう。

 その時までにどれだけの力を付けることができるか。

 この地に残ることを選んだ者たちは自然とその覚悟を求められることになる。



†††††



 そんな難しい話はとりあえず置いといて……。


「ふう……」


 俺は満足の息を零し、自分の成果を見下ろす。

 ベッドには陶然と天井を見上げるルニルアーラの裸身がある。

 長い男装時代に戦士として鍛えていたから全体的に引き締まっている。女の姿を公表するようになってからは今度はコルセットで矯正をするようになったが、腰回りの成長はまだまだこれからお楽しみという感じだ。

 重力で潰れた二つの丘は程よく育っている。あれを今まで隠していたというのはまったくもったいない話だ。

 そんなルニルアーラ新女王の体を今夜初めて堪能した。

 戴冠してから一週間後のことだ。

 彼女の即位に協力する報酬として手に入れた愛人としての地位を使った。

 寝室に入ろうとしても止められなかった。新たに編成された女性騎士のみの親衛隊には好奇心と軽蔑の視線を向けられたがまったくかまわない。

 これが権力ってものだな。恐ろしいなとニヤニヤしながら寝室に入り、覚悟を決めた感じのルニルアーラを抱いた。


「…………」

「うん?」

「…………す」

「す?」

「すごかった」

「はっ!」


 初めてを終えた感想に俺は笑った。


「色々と聞いて、その……初めては痛いと聞いていたので覚悟していたんだが…………」


 ルニルアーラは開いたままだった足を恥ずかし気に閉じ、だけど起き上がることができずにそのまま転がる。

 俺もその隣に寝転んだ。


「ああ、そこはもちろん、俺の技術だな!」

「そうなのか?」

「ああ!」


 と、自画自賛する。

 もちろん本当だ。

 房中術によってルニルアーラの感度を上げて、破瓜の痛みを誤魔化したのだ。

 痛みが分からなくなるぐらいに気持ちよかったのだから、そりゃ、すごかったって感想になるのも当たり前だ。


「なんだか、恐ろしいな」

「うん?」

「自分の中に、こんな未知のものがあるだなんて」

「なにも怖くなんてないだろ」

「そうかな?」

「楽しめばいいんだよ。全部の感情を」

「全部を?」

「そうだろ? グジグジしてるよりは、よっぽど健康的だ」

「そうかもしれないな」


 まだ男っぽい喋り方が抜けきらないルニルアーラがそっと俺の胸に額を押し付けてきた。


「なら今夜は男の胸で眠るというのを体験させてほしい」

「任せとけ」


 裸のルニルアーラを抱き寄せ、眠るまでだらだらと会話をした。

 安心して眠る彼女を見るというのは、なかなか新鮮だった。

 人生は未知のものだらけだ。



†††††



 翌朝、ルニルアーラと一緒に朝食を摂ってから飛行型監視迷宮【雷天眼】を通して自領であるダンゲイン伯爵領に戻ると、怒り顔のラナンシェがいた。


「どこにいたんですか?」

「愛人としての職務を遂行していた」

「…………はぁ」


 素直に報告すると盛大にため息を吐かれた。


「心配するな。ちゃんとお前のことも面倒見るからな」

「それはそれです」


 おっ。嫌がられなかった。


「そんなことよりランザーラ領から来る難民の件ですが」

「おお」

「どうするつもりですか?」

「ふむ」

「向こうはもう希望者を募って順次こちらに送ると言っていますけど?」

「問題は場所か?」

「そうです」


 ランザーラよりは豊かとはいえ、タラリリカ王国とて食糧事情がそこまで豊かだったり土地が余ったりしているわけではない。

 主要都市の民がほぼ死滅したとはいえ、辺境の村人たちは無事だったりして、そしてゾンビ禍に襲われたような土地にはいられないとタラリリカ王国への移民を希望する者は多い。

 他の貴族たちはその面倒を俺に押し付けようとし、そして俺はそれを受け入れた。


「場所の件は任せとけ」

「……なにか非常識なことをするつもりですか?」

「ああ」


 俺は素直にうなずいた。


「この国には植物公園っていう地下迷宮があるのは知ってるな?」

「ええ。開放型と呼ばれているものね」

「あれを再現する」

「……再現?」

「できれば農耕向きの土地にしたいんだよな。ほら、この国って酪農が多くて麦畑って少ないだろ?」

「…………」

「ランザーラから来るのも寒冷地の農業ばっかやってたような連中だからな。普通に農業の知識を持ってるやつが欲しいよな。……どっかで人材を用立ててくれる奴はいないものか。……ああ、あのおっさんとかどうかな」

「おっさん?」

「ええと、なんだったけな……そうそうセルビアーノ商会の偉いさんだよ」


 名前はなんだったかな?

 そうそう。


「アーゲンティル・ランダルスだったか?」

「……その名前は?」


 なんだかラナンシェの声が震えているような気がする。

 そういえば、あの件の最中に彼女と再会したんだよな。


「覚えてないか、二度目の牢屋の時の件」


 シビリスっていうイケメン詐欺師に騙されてやり返したら牢屋入りして、そこからさらにやり返してたら辿り着いたセルビアーノ商会の会長。

 それがファランツ王国のアーゲンティル・ランダルス公爵だ。

 なんか俺ってやり返してばっかりだな。

 だけど、あのじいさんは俺が呆れるぐらいに損得計算で感情を制御でき、逆に俺を利用して孫娘の窮地を救った。

 そしてまた、その利用され方も嫌な気分にならないんだよな。

 人をうまく操るっていうのはああいうことを言うんだろう。


「……で、その公爵が、なに?」

「ああ、だからそのじいさんがセルビアー……」

「待って! やっぱりいい‼」


 ラナンシェは俺に向けて手を突き出して無理やり止めさせた。


「その話は知らない。聞かないことにする」

「気の良いじいさんだぞ?」

「あなたの前では極悪人だってちょっと生意気な小動物になるんでしょうけど、一般人にとってはそうではないの」

「ふうむ」


 なるほど。

 たしかにそういうものかもしれない。


6月25日に発売されました書籍版「庶民勇者は廃棄されました1」ですが、無事に続刊決定となりました。

とはいえ、長期続刊を期待するにはまだまだ販売部数が弱いとのこと。ですので、よろしければ購入による応援をよろしくお願いします。

下にあるリンクを辿っていけば各種通販サイトに辿り着きます。


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