幕間 オーディン
彼の名は、オーディン。
彼の趣味は、戦士の魂を集め、戦わせる事である。
ところが、近代兵器の発達に伴い。
彼好みの剣や斧での肉弾戦が、めっきり減ってしまった。
そこで考えたのが、TRPGである。
剣と魔法のファンタジー世界を作り。
その世界で、スキルを習得させたプレイヤーたちを競わせるのだ。
これが思った以上におもしろかった。
自分が仕掛けたダンジョンを、思いもよらない方法で突破されたり。
成長したプレイヤーたちを振り分け、擬似的な戦争をしたり。
運悪くゲームオーバーになった者たちと話し合い、アドバイスをしてみたりと。
今までに無かった、新しい楽しみがあった。
そう、この男に会うまでは。
突如として目的も無く一人で街を出るという、全くもって意味不明な行動。
技能も取らず、装備もチグハグ。
あまりの事に、ルール確認をしたかと訊ねれば。
筋道の通って無い謎の理論と、聴くに耐えない罵声の数々である。
だいたい、彼の主張する『ズルい能力』とは何だろう?
「それは何だ?」と問えば、また罵声の嵐。
わめき立てれば、自分の意見が通ると思っているのだろうか?
意思疎通の出来ない者など、相手にするだけ時間の無駄である。
そう結論付けるとオーディンは、この男を部屋から叩き出した。