初めての戦闘で…
今日は記念すべき、俺のチート無双伝説の始まりの日だ。
2本の剣を、背中にクロスさせて背負い。
漆黒のコートをひるがえし、俺は颯爽と街を歩く。
あふれ出る俺の圧倒的な実力を感じてか。
集団を作るしか能の無いザコどもが、なれなれしく声をかけてきた。
「やあ、君は1人かい?
良かったら、僕たちとパーティを組まないか?」
ふっ…
ソロプレイの方が経験値効率が高いのが常識だろ。
それも理解できない情弱では、俺の脚を引っ張るだけだな。
俺はザコプレイヤーを無視して、颯爽と街を後にした。
「あれ、完璧に勘違いしたヤツだったな」
「死ぬなアイツ」
「まあ、それも経験って事で良いんじゃね?」
街の外は、どこまでも続く大草原だった。
遠くの方に、森や山が見える。
風が吹く方に、俺は歩き出した。
初めの村は、どっちの方だ?
まあ歩いてりゃ、看板とかがあるだろ。
《敵と遭遇しました!
お!
さっそくザコモンスターのお出ましか!
こいつで、俺のチート能力の肩慣らしだ!
《知識判定……技能がありません
俺の前に、変なモヤの様なモンスターが立ちふさがった!
何だこいつらは?
この世界では、こんなモンスターがザコ敵なのか?
《ターン開始オプション……ありません
通常体勢でターン開始します
俺は、背中の剣を抜き放つ!
さあ、この剣でアイツらをブッた斬ってやるぜ!
《行動順判定
????の攻撃
はぁ?
あのザコの方が先に仕掛けてきた?
まあいい!
この剣で華麗に受け止めて、カウンターで…
《ヒット!
20のダメージ
ウソだ!
身体が反応せずに、モンスターの攻撃を喰らっただと?
《????の攻撃
クソが!
今度こそ弾き返して…
《ヒット!
21のダメージ(瀕死
何なんだよクソが!
《リョウガの攻撃
今、俺を殴ったヤツ!
一撃でぶっ殺してやる!!!!
右手の剣を、クソ野郎に叩きつけた!
《ミス!
はぁぁぁぁぁぁぁぁ?????
ざけてんじゃねぇぞクソがぁぁぁぁぁぁぁ!!!
左!
《ミス!
なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!
《????の攻撃
ヒット!
13のダメージ
リョウガ・無限才死亡
ざけんなこら!
なんでチート能力者の俺が死ぬんだよ!
ざけんなクソが!ざけんなクソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!
《パーティが全滅しました
ゲームオーバー
気が付くと、俺は白い部屋にいた。
そしてそこには、あのクソ爺いがいやがった!
「ざけんなよオイ!なんなんだよこのクソゲーはよ!
オイこのクソ爺いが!聞いてんのかコラ!!」
「あのな…
どこからツッコんでいいものやら分からんが。
とりあえずお前さん、ちゃんとルールブック読んだか?」
はあ?
読む訳ねーだろ、何言ってんだこのクソ爺い。
第一、今そんな事言ってるんじゃねーだろ!
素直に謝りゃ、許してやったかもしんねーのに。
自分のミスを俺のせいにするとか、何様のつもりだよ!
「てめえ、なめてんのかよ!
訳わかんねー事言ってんじゃねえ!
だいたい、何なんだよあのモヤっとした敵はよ!」
「そりゃお前さんがファイターで、知識判定の技能を持って無いから識別できんのだ。
言っとくが、あれ一番のザコだぞ」
「はあ?
ザコに三発喰らっただけで死ぬとか、なめてんのよ!
剣で叩き落とそうとしてんのに動かねえしよ!」
「だから、ブロッキングの技能も取って無いだろ!
あと、防具の詳細確認をしろ!
外套は防御力が皆無だが、特殊効果を付加する装備カテゴリで。
お前さんの着てるブラック・サーコートは、敵の攻撃を自分に向ける効果を高めるの」
「何なんだよそのクソ能力はよ!」
「全身鎧と大盾で防御固めた壁役が、自分に攻撃集中させるのに使うんだよ普通は」
「そんな事聞いてんじゃ無えよ!
何で俺の攻撃が外れんだよ!
こっちは二刀流なんだぞ!!」
「何べんも言わすな!
それも、お前さんが二刀流の技能持って無いからだろ!
技能も持たずに左右に武器装備すると、命中率とダメージに-補正が入るの!
二刀流使いたければ、ファイター上位職のニンジャになって、二刀流技能取れ」
はい、こいつ頭オカシイのケッテー!
忍者がファイターの上位職とか、おかしいだろが。
フツー、シーフとかの上位ですー!
「そんな訳の分かんねえ補正付けてんじゃねえよ!
二刀流にしたら、最強になんのが常識だろ!」
「それこそ知らんよ。
お前さんの好きなゲームがそういうルールでも、それは別に良いがな。
それは、そのゲームでの話であって、このゲームのルールでは無いだろ」
「良いって言ったな!
じゃあ、俺の能力をそうしろよ!!」
「はぁ????」
「ルールの間違いを教えてやってんだぞ!
だったら、こんなクソルールつくった責任とれよ!」
「お前さんは、いったい何を言ってるんだ?」
「脳みそ無えのかテメーはよ!
いいから俺に、チート能力付けりゃいいんだよ!!」
「いや、お前さん、ホントに何言ってんだ?
だいたい、チート能力って???」
「チートもわかんねぇのかよ情弱が!
さっさと俺を最強にしろって言ってんだよ!」
転生させたら、チート能力付けんのが常識だろ!
そんな常識もわかんねえのか、このクソ爺いはよ!
「あー、わかった、もういい」
クソ爺いが、ようやく自分の否を認めたようだ。
「お前さんとは、まともな話なんか出来んようだ…
お前さんがどうなろうと、もう知らん。勝手にやっとれ」
は?
今、なんつった?
その瞬間、俺はその部屋からはじき出された。